投稿日:2025年10月23日
 
 日本の観光業を支える宿泊業界では、フロント業務をはじめとした宿泊サービスの提供を担う人材の不足が深刻化しています。
そのような中で注目されているのが、「特定技能(宿泊)」制度です。この制度を活用すれば、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れることができ、現場の即戦力として活躍してもらうことができます。
この記事では、宿泊分野で特定技能外国人を雇用したい事業者様向けに、要件・手続きの流れ・注意点をわかりやすく解説します。
宿泊分野が特定技能制度の対象となった背景には、人手不足の深刻化があります。日本では訪日外国人旅行者の増加により、観光産業が地域経済を支える重要な分野となっています。しかし、ホテルや旅館等の宿泊業界では、フロント・接客・レストランサービス等、幅広い業務で深刻な人手不足が続いていました。特に地方では、観光需要が増えても人材を確保できず、稼働率の低下やサービス品質の低下が課題となっていました。また、これまで「技能実習制度」により外国人材を受け入れてきましたが、技能実習はあくまで「技術移転を目的とした制度」であり、労働力確保を主な目的とするものではありません。したがって、現場で経験を積んだ人材が戦力となる頃には帰国してしまうという課題がありました。
こうした状況を踏まえ、政府は人手不足が特に顕著な産業分野として宿泊分野を位置づけ、2019年4月の特定技能制度の創設と同時に「特定産業分野」の1つに指定しました。これにより、技能試験等に合格した外国人はもちろんのこと、宿泊の技能実習2号を修了した外国人についても、試験免除でスムーズに移行できる仕組みが整えられ、現場での即戦力として長期的に働くことが可能となりました。
上記のほか、日本人が通常従事することとなる以下の関連業務に付随的に従事することも認められています。
※関連業務に清掃作業が入っていないことに注意が必要です。ベッドメイキング等の清掃作業に従事してもらいたい場合には、ビルクリーニング分野の特定技能外国人として雇用する必要があります。
また、2号特定技能外国人(1号特定技能外国人として実務経験を2年以上経て、必要な試験に合格した人)については、上記に加えて、「複数の従業員を指導しながら」上記業務に従事することとなります。
外国人が宿泊分野で特定技能ビザを取得して働くためには、以下の要件を満たす必要があります。
3と4について、外国人がどのようなルートで1号特定技能外国人を目指しているかによって、求められる試験が異なります。以下、ご参照ください。
| 対象者 | 技能水準 | 日本語能力 | 
|---|---|---|
| 特定技能試験 | 日本語試験等 | |
| 宿泊の技能実習2号を良好に修了した者 【技能実習2号ビザ】 | 免除 | 免除 | 
| 宿泊以外の技能実習2号を良好に修了した者 【技能実習2号ビザ】 | 宿泊分野特定技能1号評価試験 | 免除 | 
| 上記以外の者 | 宿泊分野特定技能1号評価試験 | ■下記どちらかの試験合格 | 
宿泊分野特定技能評価試験の詳細はこちらをご覧ください。
 日本語能力試験の詳細はこちらをご覧ください。
 国際交流基金日本語基礎テストの詳細はこちらをご覧ください。
特定技能外国人を受け入れるためには、事業者側も満たさなくてはいけない要件があります。
 全分野共通の要件と宿泊分野特有の要件に加えて、雇用形態・契約内容に関する要件や支援計画を作成することも求められていますので、併せて紹介します。
上記の中で、特に注意したいのが、2の非自発的離職者です。これは、会社都合で離職させた人のことを指しますが、退職勧奨や試用期間からの本採用拒否も該当しますので、気を付けてください。詳しくはこちらをご覧ください。
宿泊分野で特定技能外国人を雇用するためには、以下の要件も満たす必要があります。
この支援計画には、必ず行わなければならない義務的支援と行うことが望ましいとされる任意的支援に分けられますが、支援計画書に記載した場合は、任意的支援についても支援義務が生じます。そして、この支援義務を果たさない場合、欠格事由に該当することとなりますので、注意が必要です。
 なお、支援計画の項目は以下のとおりです(各項目に義務的支援と任意的支援が含まれています)。詳細はこちらをご覧ください。
これらの支援計画については、全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、事業所で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。
続いて、宿泊分野の特定技能外国人(日本に在留しており、宿泊の技能実習2号を良好に修了予定の外国人)を雇用するためのおおまかな流れをご紹介します。手続きの数が非常に多く、時間もかかるため、登録支援機関や行政書士のサポートを受けながら、進められることをおすすめします。手続きがすべて完了するまでに4ヶ月程度かかります。
| STEP1 | 技能実習修了予定の外国人と雇用契約を結ぶ ※外国人の労働条件が適法であることが求められます。 | 
|---|---|
| STEP2 | 外国人の支援計画を策定する ※会社は、外国人が特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、この計画に基づいて支援を行わなければなりません。なお、この支援計画の実施について、一部又は全部を登録支援機関に委託することができます。その場合は、登録支援機関と委託契約を結ぶ必要があります。 | 
| STEP3 | 外国人に事前ガイダンスを行う ※労働条件、活動内容等について、対面又はZoom等で説明します。これも支援計画の1つであるため、登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が行います。 | 
| STEP4 | 宿泊分野特定技能協議会へ加入する ※在留資格変更申請前に加入する必要があります。1か月程度で入会通知書が届きます。 | 
| STEP5 | 本国で「特定技能」の活動に関して必要な手続きを行う ※特定技能外国人として日本で働く際に、カンボジア、タイ、ベトナムの外国人については、本国で定める手続きをし、証明書等を受領しておく必要があります。 | 
| STEP6 | 外国人に健康診断を受けてもらう ※健康状態が良好であることも審査基準の1つであるため、必ず受けてもらう必要があります。健康診断個人票に掲げられている項目が網羅されているものであれば、異なる様式の健康診断書を入管に提出しても問題ありません。 | 
| STEP7 | 外国人が宿泊の技能実習2号を修了(在留期間満了3ヶ月前) ※技能実習期間を2年10ヶ月修了していることが必須条件です。 | 
| STEP8 | 特定技能1号ビザの在留資格変更許可申請をする ※審査に2ヶ月程度かかります。 | 
| STEP9 | 許可後に、就労開始! | 
ここまで、特定技能外国人を雇うまでの要件や流れ等について紹介してきましたが、雇った後も特定技能特有の手続きが必要となります。以下、主要なものをご紹介します。
1と2については、登録支援機関に相談しながら、手続きを行ってください。3については、行政書士に依頼されることをおすすめします。
宿泊分野での特定技能外国人の受け入れは、人材不足の解消だけでなく、国際的なサービス力の向上にもつながります。ただし、雇用契約や支援体制の整備等、制度に沿った準備が欠かせません。スムーズな受け入れのためにも、制度に詳しい専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
当事務所では、特定技能制度の活用を検討する事業者様に対し、受入れ要件の確認から申請書類の作成及び申請までをトータルでサポートしています。外国人雇用を安心して進めたい事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。
 
 かざはな行政書士事務所
代表行政書士 
 佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
 前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
 その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
 2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
 ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。
 
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