投稿日:2025年9月28日
 
 特定技能外国人を雇用するには、企業が「受入機関」として、出入国在留管理庁(以下、入管)の定める条件を満たす必要があります。その条件は5つありますが(詳しくはこちら)、そのうちの1つに「受入機関適合性を満たす」という条件があります。
 この受入機関適合性を満たしていなければ、特定技能の在留資格が許可されず、特定技能外国人を就労させることはできません。
この記事では、受入機関適合性の要件を詳しく解説します。
それでは、それぞれ細かく見ていきましょう。
受入機関が労働関係法令、社会保険関係法令及び租税関係法令を遵守していることを求めるものです。
受入機関が、現に雇用している国内労働者を非自発的に離職させ、その補填として特定技能外国人を受け入れることは、人手不足に対応するための人材の確保という特定技能制度の趣旨に沿わないことから、特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないことを求めるものです。対象期間は、特定技能外国人との雇用契約を締結する前の1年以内及び締結後も含まれます。
非自発的離職に該当しない場合は次のとおりです。
一方、非自発的離職に該当する場合は次のとおりです。
受入機関が雇用する外国人について、責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させている場合には、当該機関の受け入れ体制が十分であるとは言えないことから、雇用契約を締結する前の1年以内及び締結後に行方不明者を発生させていないことを求めるものです。
 外国人とは、特定技能外国人だけでなく技能実習生も含まれます。また、責めに帰すべき事由とは、受入機関が雇用条件どおりに賃金を払っていない場合や支援計画を適正に実施していない場合等を指し、法令違反や基準に適合しない行為が行われていた期間内に外国人が行方不明となった場合が欠格事由の対象となります(1人でも発生させればアウトです)。
次のいずれかに該当する場合は、欠格事由に該当します。また、いずれも刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることが無くなった日から5年を経過しない者がその対象となります。
なお、受入機関となる予定の企業の事業主等が検察庁から起訴され、裁判中のため刑が確定していない場合は、在留資格認定証明書交付申請(海外在住の外国人を呼び寄せるための申請)については、刑が確定するまで審査結果は保留となります。
実習実施者として技能実習生を受け入れていた際に、実習認定の取消しを受けた場合、当該取消日から5年を経過しない者(取り消された者の法人の役員であった者を含む)は、受入機関になることはできません。
 なお、欠格事由の対象となる役員は、法人の役員に形式上なっている者のみならず、実態上法人に対して強い支配力を持つと認められる者についても対象となります。
雇用契約の締結の日前の5年以内又はその締結の日以後に、出入国又は労働関係法令に関する不正行為等を行った者は、欠格事由に該当し、受入機関になることはできません。不正又は不当な行為については、個別具体的な事案の重大性に応じて該当性が判断されることとなります。なお、不正行為として主に認定される行為は次のとおりです。
欠格事由該当期間の起算点は、不正行為が終了した日となります。例えば、暴行等の不正行為が発覚した場合、暴行行為の最終日が不正行為が終了した日となり、そこから欠格事由該当期間が始まります。
次に該当する者は、暴力団排除の観点から欠格事由に該当し、受入機関になることはできません。
次のいずれかに該当する者は、行為能力・役員等の適格性の観点から欠格事由に該当し、受入機関になることはできません。
受入機関に対し、特定技能外国人の活動状況に関する文書を作成し、特定技能外国人が業務に従事する事業所に備えて置くことを求めるものです。備えて置かなければならない活動の内容に関する文書は、次のとおりです。
上記文書は、書面だけでなくデータで作成・保存することも可能です。
受入機関は、特定技能外国人及びその親族等が、保証金の徴収や財産の管理又は違約金契約を締結させられている等の場合には、そのことを認識して雇用契約を締結していないことを求めるものです。違約金等を定める不当な契約例は次の通りです。
規制の対象は、受入機関、登録支援機関、職業紹介事業者等、雇用契約に基づく特定技能外国人の日本の活動に関与する仲介事業者のみならず、海外のブローカー等も含み、幅広く規制の対象とするとされています。
 また、特定技能外国人及びその親族が、上記のような不当な契約を締結させられていること等を認識した状態で雇用契約を締結し、特定技能外国人を受け入れた場合、6の出入国又は労働関係法令に関する不正行為に該当するとして、欠格事由に該当し、そこから5年間特定技能外国人を受け入れることができなくなります。よって、雇用契約を締結する時に十分に確認してください。加えて、1号特定技能外国人を雇用する受入機関は、事前ガイダンスでも保証金・違約金契約は違法であり、禁止されていることについて説明するとともに、保証金の徴収等が無いことを確認してください。
特定技能外国人を派遣労働者として受け入れ可能な産業分野は、2025年9月時点で農業と漁業のみですが、この産業分野において、派遣元は受入機関適合性を満たすとともに、当該外国人が従事する予定の特定産業分野に関する業務を行っていることが求められます。また、派遣先も1~4の基準を満たしていることが求められます。
特定技能外国人への労働者災害補償保険の適用を確保するため、受入機関が労災保険の適用事業所である場合、労災保険に係る保険関係の成立の届出を適切に履行していることが求められます。
特定技能外国人の安定した就労活動を確保するために、受入機関に雇用契約を継続して履行する体制を持っていることを求めるものです。つまり、受入機関が雇用契約を確実に履行できる財政的基盤を持っていることを求められているということです。財政的基盤の有無については、直近年度末における欠損金の有無や債務超過の有無等から総合的に判断されることになります。
特定技能外国人に対する報酬の支払をより確実かつ適正なものとするため、当該外国人に対して、報酬の支払方法として口座振込があることを説明した上で、当該外国人の同意を得た場合に、報酬の口座振込を行うことを求めるものです。
なお、口座振込以外の方法を採った場合は、受入機関が1年に1度提出する「受入れ・活動・支援実施状況に関する届出」の際に、報酬支払証明書を提出し、入管の確認を受けることが求められます。
特定技能外国人に関し、当該外国人が活動する事業所の所在地及び住居地が属する地方公共団体から、共生社会の実現のために実施する施策に対する協力を求められたときは、求めに応じ必要な協力をすることを求めるものです。
 地方公共団体が実施する共生施策とは、例えば各種行政サービス、交通・ゴミ出しのルール、医療・公衆衛生や防災訓練・災害対応、地域イベント、日本語教室等に関する施策等が想定されます。
受入機関は、①初めて特定技能外国人を受け入れる場合は、当該外国人と雇用契約締結後、在留資格諸申請の前に、また②既に特定技能外国人を受け入れている場合は、当該外国人の在留資格諸申請の前に、市区町村に対して、協力確認書を提出する必要があります。
 協力確認書は、当該外国人が活動する事業所の所在地と当該外国人が住む住居地の市区町村にそれぞれ提出する必要がありますが、所在地と住居地が同一の市区町村の場合は、1通の提出で大丈夫です(郵送受付のみかオンライン提出も可能かは市区町村によって異なりますので、必ずHPで確認してください)。また、その提出後に他の特定技能外国人を雇用する場合は、再提出不要です。ただし、協力確認書に記載した事項に変更が生じた場合は、改めて提出する必要があります。なお、特定技能外国人の転職・転出や帰国の際には、受入機関から市区町村に連絡する必要はありません。
特定産業分野ごとの特有の事情に応じて、個別に定める基準に適合していることを求めるものです。例えば、建設分野と介護分野においては、特定技能外国人の受け入れ人数枠が設けられています。それぞれの産業分野の運用要領別冊(分野別)で確認する必要があります。
ご紹介したとおり、要件は多岐にわたりますが、特定技能の雇用にはこの適合性を満たすことが不可欠です。法令遵守や支援体制の整備等、多くの準備が必要ですが、適切に対応すれば外国人材を安定的に受け入れることができます。
「自社が基準を満たしているか不安」「書類整備に手が回らない」といった場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。安心して特定技能外国人を受け入れられる体制づくりを丁寧にサポートいたします。
 
 かざはな行政書士事務所
代表行政書士 
 佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
 前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
 その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
 2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
 ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。
 
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