登録支援機関とは?役割や自社支援の条件を詳しく解説

投稿日:2025年10月30日

特定技能制度という言葉を耳にする機会が増えましたが、その制度を支える重要な存在が「登録支援機関」です。
登録支援機関は、受入れ企業の委託を受けて、1号特定技能外国人が安心して日本で働き、地域社会の一員として生活できるよう支援を行う機関です。しかし、どんな業務をするのか、どんな時に依頼すべきなのか、まだ十分に知られていません。

この記事では、行政書士の立場から、登録支援機関の目的や役割、そして自社支援をする場合の条件について、わかりやすく解説します。

1.登録支援機関が生まれた背景

日本では、少子高齢化の進行により、製造業、介護、外食業等、さまざまな分野で人手不足が深刻化しています。こうした状況を受け、日本政府は2019年に、即戦力となる外国人材を受け入れるための「特定技能制度」を創設しました。

特定技能制度の目的は、外国人の力を現場の即戦力として活用し、人手不足を補うことにあります。しかし、企業がこの制度を活用して外国人を受け入れるためには、いくつもの条件を満たす必要があります(詳しくはこちら)。

その中の一つが「支援計画適合性」です。
これは、1号特定技能外国人が日本で安定して働き、生活できるようにするため、受入れ企業が職業生活・日常生活・社会生活に関する支援を適切に実施できるよう計画を立てることを求めるものです。
支援計画の内容は多岐にわたり、作成だけでなく、実際の実施まで求められます。しかし、企業が自社だけでこれらすべての支援を行うのは、大きな負担となる場合が少なくありません。

そこで、この支援の実施を専門的に担う存在として設けられたのが「登録支援機関」です。
登録支援機関は、今では全国に1万件以上が登録されており、外国人を受け入れる企業にとって、特定技能制度の運用を支える心強いパートナーとなっています(登録支援機関登録簿はこちら)。
なお、登録支援機関により、対応できる言語や委託料(相場は1人あたり2~3万円)等が異なりますので、しっかり確認して選ばれることをおすすめします。

2.登録支援機関の主な役割

登録支援機関の役割は、受入れ企業から委託を受け、1号特定技能外国人に対して「支援計画」に基づいた支援を行うことです
支援内容は、入管が定める次の項目です(支援内容の詳細はこちら)。なお、2号特定技能外国人については支援計画の作成も実施も不要です。

  1. 事前ガイダンスの提供
  2. 出入国する際の送迎
  3. 適切な住居の確保に係る支援や生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 日本語学習の機会の提供
  6. 相談又は苦情への対応
  7. 日本人との交流促進に係る支援
  8. 非自発的離職時の転職支援
  9. 定期的な面談の実施、行政機関への通報

これらの支援計画については、一部又は全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、会社で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。

3.自社で特定技能外国人を支援する場合の条件

登録支援機関に委託せず、受入れ企業が自ら支援を行うことも可能ですが、その場合は、入管庁が定める以下の条件(支援計画適正実施確保基準)をすべて満たす必要があります。

  1. 中長期在留者の受入れ実績等があること
  2. 外国人が十分に理解できる言語での支援体制があること
  3. 支援の実施状況に係る文書を事業所に備えておくこと
  4. 支援責任者及び支援担当者が中立的な立場であること
  5. 特定技能雇用契約締結前の5年以内及び締結後に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
  6. 3ヶ月に1回以上、定期的な面談を実施すること
  7. 特定産業分野ごとの特有の事情に応じて定められた個別の基準に適合していること

1と4について、詳しく解説します。

(1)中長期在留者の受け入れ実績等があること

次のいずれかに該当する必要があります。

①過去2年間に、就労資格を持つ外国人の受入れ又は管理を行っており、入管法、労働関係法令等を遵守していること、及び役員又は職員の中から、支援責任者と支援担当者を選任していること
☝賃金の不払いや雇用契約の不履行等があれば認められません。

  • 支援責任者:支援担当者を監督する人(常勤である必要はありませんが、外部委託不可。)
  • 支援担当者:支援計画に基づく支援を担当する人(常勤であることが求められ、外部委託はもちろんできません。1号特定技能外国人が働く事業所ごとに1名以上選任される必要があります。)

②役員又は職員で、過去2年間に就労資格を持つ外国人の生活相談業務に従事した経験がある者の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること
☝支援責任者も支援担当者も、どちらも生活相談業務の経験が必要です。なお、生活相談業務は、個人的な人間関係に基づくボランティアの相談は含まれません。

③①及び②に該当する者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として入管庁長官が認めること、及び役員又は職員の中から、支援責任者と支援担当者を選任していること
☝支援業務を適正に実施できるかどうかは、提出資料に基づき、個別で判断されます。

(2)支援責任者及び支援担当者が中立的な立場にあること

支援の適正性や中立性の確保の観点から、支援責任者及び支援担当者が、1号特定技能外国人を監督する立場に無いこと、受入れ企業と当該外国人の間に争いが生じた場合に中立的な立場であることが求められます。

 

具体的には、現場の業務に関わることがない、人事・労務・総務・会計担当の職員が想定されます

一方、社長や副社長、当該外国人が所属する部署を監督する長(部長等)は、組織図を作成した場合に縦のラインにいるため、支援責任者や支援担当者になることはできません。

4.どんな時に登録支援機関に委託すればいい?

まだ外国人の受入れ実績がなく、支援体制が十分に整っていない場合は、登録支援機関に支援の実施をすべて委託するのが安心です全部委託することで、「支援計画を適正に実施できる」とみなされ、受入れ企業が支援計画適正実施確保基準を個別に満たす必要が無くなります。

一方、一部の支援だけを登録支援機関に委託する場合は、企業側も支援計画適正実施確保基準をすべて満たしていなければならないため、注意が必要です。

最初のうちは登録支援機関に全部委託し、支援の流れを把握して支援体制を整えたら、徐々に自社支援へ移行していくのが現実的な進め方です。

5.まとめ

この記事では、登録支援機関の目的や役割、自社支援の条件について解説しました。
特定技能制度を活用して外国人を受け入れる場合、受入れ企業は多くの条件を満たさなければなりません。制度を遵守しながら日々の業務をこなすことは、企業にとって大きな負担となるのが実情です。

特に、支援計画適正実施確保基準をクリアし、支援計画に定められた9つの支援項目を初めからすべて自社で実施するのは非常に難しいケースが多いでしょう。そのため、初期段階では登録支援機関にすべての支援業務を委託し、運用に慣れてきた段階で一部を自社実施に移行する方法も有効です。

なお、特定技能ビザの取得には、支援計画以外にも多数の書類作成が必要です。
当事務所では、特定技能ビザに関する申請書類の作成代行をはじめ、登録支援機関の登録申請のご相談にも対応しております。外国人雇用をスムーズに進めたい企業様は、どうぞお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で入管業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆様を支援しています。

お気軽にお問合せ・ご相談ください

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
082-495-5550
受付時間
10:00~18:00
定休日
土曜・日曜・祝日(予約対応可)

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

082-495-5550

<受付時間>
10:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

かざはな行政書士事務所

住所

〒739-0041 広島県東広島市西条町寺家

受付時間

10:00~18:00

定休日

土曜・日曜・祝日(予約対応可)

対応地域

広島県を中心に、岡山県、山口県、島根県、鳥取県および全国オンライン対応可能