投稿日:2025年9月19日
 
 特定技能1号の在留資格を持つ外国人を雇用する際、受入れ企業には1号特定技能外国人の支援計画の作成と実施が義務付けられています。
支援計画は、特定技能外国人が安心して日本で働き、生活できるようにするためのものです。特定技能外国人の支援計画を作成しなければ、特定技能1号の在留資格の許可が下りないため、必ず準備する必要があります。
この記事では、特定技能の支援計画の内容について詳しく解説します。
支援計画とは、1号特定技能外国人を受け入れる企業が入管に提出しなければならない計画書です。入管法に基づき、外国人が日本で安心して就労・生活できるようにすることを目的としています。受入れ企業が1号特定技能外国人を同時に複数に雇用する場合は、まとめて作成することができます。
 また、支援計画を作成するのは受入れ企業ですが、必要に応じて、登録支援機関に作成の補助をしてもらうことも可能とされています。ただし、あくまでも作成の補助ですので、行政書士又は弁護士でない登録支援機関が、業として支援計画を作成することは行政書士法違反となりますので、注意してください。
 一方、支援計画の実施を登録支援機関に委託することは可能です。多くの受入れ企業が登録支援機関に支援計画実施の全部委託をしています。委託する場合は、月額支援委託料がかかります。1人当たり2~3万円程度で、登録支援機関によって金額は異なります。なお、この支援計画の実施(義務的支援)に係る費用を外国人本人に負担させてはいけません。すべて受入れ企業が負担することとなります。
特定技能の支援計画の内容は特定技能基準省令で定められており、次の9つの内容を必ず盛り込む必要があります。なお、入管に提出する支援計画書の様式は日本語のほか、英語、タガログ語、ベトナム語等10言語用意されており、当該外国人が理解できる言語で作成し、外国人がその内容を理解したうえで、署名する必要があります(様式はこちらのページからダウンロードできます)。
受入れ企業又は支援の全部委託を受けた登録支援機関は、特定技能雇用契約締結後、特定技能1号ビザの申請をするまでに、当該外国人に対して、その外国人が理解できる言語で次の内容の情報の提供を実施しなければなりません(義務的支援)。また、実施時間が1時間に満たないような場合は、事前ガイダンスを適切に行ったとは評価されない可能性があります。なお、実施方法は対面でもZOOM等のオンラインでも可能です。
ちなみにこの項目の任意的支援としては、①入国時の日本の気候、服装、②本国から持参すべき物、持参した方がよい物、持参してはならない物、③入国後、当面必要となる金額及びその用途、④受入れ企業から支給される物(作業着等)等に関する情報の提供があります。事前ガイダンス実施後、就労開始前でも当該外国人からの質問や相談に適切に応じることが望まれます。
1号特定技能外国人が入国する際は、日本に上陸する手続きをする空港等から受入れ企業の事業所又は当該外国人の住居まで送迎することが求められます。入国する際の送迎が過度な負担にならないよう、事前ガイダンスの際に、受入れ企業の事業所又は住居の最寄りの空港を案内する等、出迎えに適した入国経路を決めておくとよいでしょう。ちなみに、既に日本に在留している外国人については、支援対象外です。
 また、出国する際は、当該外国人が出国の手続きをする空港等まで送迎を行うことが求められます。さらに、出国の際は単に送迎するだけでなく、保安検査場の前まで同行し、入場することを確認する必要があります。既に特定技能外国人が就業中に住んでいた住居を退去している場合は、当該外国人の滞在先を把握し、確実に連絡を取る手段を確保しておかなければなりません。
送迎方法としては、車両以外にも鉄道やバス等の公共交通機関の利用も可能です。登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が送迎を行うこととなりますが、注意すべき点があります。登録支援機関が車両で送迎する場合、道路運送法上の必要な許可を受けている必要がありますので、その許可を受けていなければ、公共交通機関を利用するようにしましょう。なお、一時帰国の際の出入国は、この支援対象に含まれません。
この項目の任意的支援としては、技能実習2号等から特定技能1号へ在留資格を変更する等、既に日本に在留している外国人を特定技能外国人として雇用する場合の日本国内の移動について、送迎を実施することや移動費用を受入れ企業が負担すること等が挙げられます。送迎を実施しない場合でも、事業所までスムーズに移動できるよう、当該外国人に交通手段や緊急時の連絡先を伝えておくことが望まれます。
1号特定技能外国人が住居を確保していない場合、次のいずれかの方法(外国人が希望する方法)で支援を行うことが求められます。また、この支援は、当該外国人が転居する場合も求められます。さらに、この住居の確保に係る支援は、当該外国人の離職が決まった後も、雇用契約が有効である間は行うことが求められますので注意してください。
1の場合、敷金・礼金等は、基本的には1号特定技能外国人本人が負担するものですが、受入れ企業が任意に全額負担してもよいとされています。また、家賃債務保証業者を利用した場合は、保証料は受入れ企業が負担する必要があります。
 2又は3の場合で、受入れ企業が賃借人となる場合は、1号特定技能外国人に社宅等を貸与することで経済的な利益を得てはいけません。借り上げ物件であれば、借り上げに要する費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料等は含まない)を入居する外国人の人数で割った額以内の額でなければなりません。自己所有物件であれば、実際に建設・改築等に要した費用、物件の耐用年数、入居する外国人の人数等を勘案して算出した合理的な額でなければなりません。また、社宅等を提供する場合には、他の入居者の家賃と同等であることが求められます。
 なお、技能実習2号等から特定技能1号へ在留資格を変更する外国人について、既に住居を確保しており、その住居に引き続き住む場合は、この支援を実施する必要はありません。ただし、その住居から退去せざるを得なくなった場合等には、新たな住居の確保に係る支援が必要です。
 住居の確保に係る支援については、居室の広さや衛生面等、適切な住居を確保できるよう支援を行う必要があります。居室の広さは、1人当たり7.5㎡以上を満たす必要があります。ルームシェアをする場合は、居室全体の面積を居住人数で割った場合の面積が7.5㎡以上でなければなりません。ただし、技能実習2号等から特定技能1号へ在留資格を変更する場合等で、受入れ企業が在留資格変更許可申請(又は在留資格認定証明書交付申請)の時点で既に確保している社宅等の住居に居住することを希望する場合は、1人当たり4.5㎡以上を満たせば足ります。
 ちなみに住居の確保に関する任意的支援としては、特定技能外国人との雇用契約の解除・終了後でも、次の受入れ先が決まるまでの間に住居の確保が必要な場合は、上記支援を行うことが望まれます。
次に、1号特定技能外国人に対する生活に必要な契約に係る支援内容は次のとおりです。
すでに口座開設等を行っている場合等、明らかに不要である場合は、支援対象外です。
ちなみに生活に必要な契約に関する任意的支援としては、契約の途中で契約内容の変更や解約を行う場合に、手続きが円滑に行われるように必要な書類の提供や窓口の案内を行い、必要に応じで当該外国人に同行する等が望まれます。
1号特定技能外国人が日本に入国した後(在留資格変更後)、当該外国人が日本における職業生活、日常生活及び社会生活を安定的かつ円滑に行えるようにするため、入国後(在留資格変更後)、速やかに生活オリエンテーションを行う必要があります。生活オリエンテーションでは、次の内容を網羅する必要がありますが、実施方法は対面でもZOOM等のオンラインでも可能です。
なお、入管HP内にある外国人生活支援ポータルサイトや生活・就労ガイドブックに掲載されている情報が、生活オリエンテーションで提供する情報の参考となりますので、ぜひこちらもご覧ください。
1号特定技能外国人に対して、次のうち当該外国人の希望する方法で、日本語を学習する機会を提供する必要があります。たとえ当該外国人に相当程度の日本語能力があっても、継続した日本語学習の機会を提供する必要があるとされています。そして、この支援を行うにあたり発生する費用は受入れ企業の負担ですが、学習費用は基本的に当該外国人の負担となりますので、過度な負担にならないように留意しなければなりません。日本語学習教材の一例として、文部科学省が提供している日本語学習サイトがありますので、ぜひご参照ください。
ちなみにこの項目の任意的支援としては、受入れ企業の職員による当該外国人への日本語指導・講習の積極的な企画・運営、日本語能力試験の受験支援や資格取得者への優遇措置、受入れ企業が学習費用の全部又は一部を負担する等です。
1号特定技能外国人から職業生活、日常生活又は社会生活に関する相談又は苦情の申し出を受けた時は、遅滞なく適切に応じるとともに相談等の内容に応じて当該外国人への必要な助言、指導を行う必要があります。加えて、受入れ企業等は、必要に応じ、相談内容に対応する適切な機関を案内し、当該外国人に同行して必要な手続きの補助を行わなければなりません。なお、相談又は苦情への対応は、1号特定技能外国人の離職が決まった後も、雇用契約が有効である間は行う必要があります。
 相談及び苦情への対応は、当該外国人が十分に理解できる言語により実施する必要があります。通訳の確保が難しい場合は、一時的に同僚の外国人就労者を通訳にしたり、翻訳アプリ等を使用したりすることもできますが、プライバシー保護の観点から、詳細な聞き取りについては、通訳を確保した上で適切に対応する必要があります。また、当該外国人が相談等をしたことで、職場での待遇等において不当な取り扱いがなされないようにする必要もあります。
相談・苦情の対応は、特定技能外国人の勤務形態に合わせて、1週間当たり勤務日に3日以上、休日に1日以上対応し、相談しやすい就業時間外(例:午後7時~8時)等に対応できることが求められます。相談・苦情はいつ寄せられるか分からないことから、専用のメールアドレスを設ける等、可能な限り休日や夜間においても対応可能多態性を整えていること、また事故の発生等緊急時の連絡先を設け、基本的にいつでも連絡が受けられる体制を構築することが望まれます。
相談・苦情の対応を行った場合、相談記録書に記録し、14日以内に入管に提出する必要があります。また、支援の実施に関する管理簿として受入れ企業の事業所(登録支援機関に委託している場合は登録支援機関)に雇用契約終了の日から1年以上備えておく必要があります。
ちなみにこの項目の任意的支援としては、相談窓口の情報を一覧にする等して、あらかじめ1号特定技能外国人に情報を分かりやすい形で提供しておくことが望まれます。さらに、当該外国人が仕事中や通勤中に亡くなった場合、その家族等に対して労災保険制度の周知や必要な手続きの補助を行うことも望まれます。
ちなみにこの項目の任意的支援としては、1号特定技能外国人が各行事に参加できるよう、有給休暇の付与や勤務時間について配慮することが望まれます。また、当該外国人が地域社会で孤立することが無いよう、受入れ企業等が率先して日本人との交流の場を設けていくよう努めることが望まれます。
受入れ企業が人員整理や倒産等により、1号特定技能外国人との雇用契約を解除する場合は、当該外国人が他の日本の企業との雇用契約に基づいて特定技能1号としての活動が行えるように、次の支援を行う必要があります。1~4のいずれかの支援を行う必要があるのに加えて、5と6の支援はどちらも行う必要があります。7については、登録支援機関に委託していない場合(自社支援の場合)に必要な支援となります。
契約機関満了前に、特定技能外国人との雇用契約を終了する場合は、受入れ困難に係る届出書(複数人の場合はこちら)と受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書を14日以内に入管に提出する必要があります。さらに、非自発的離職者に対する転職支援を行った場合は、転職支援実施報告書に記載し、14日以内に入管に提出する必要があります。
なお、非自発的離職者を発生させると、受入れ企業としての要件を満たさなくなるため、その時点で雇用している他の特定技能外国人の雇用を継続できなくなるだけでなく、そこから5年間は新たな特定技能外国人を雇用できなくなります。
定期面談を実施したら、定期面談報告書(1号特定技能外国人用・監督者用)を作成し、翌年度4月1日~5月31日までに定期届出一式とともに入管に提出する必要があります。また、支援の実施に関する管理簿として受入れ企業の事業所(登録支援機関に委託している場合は登録支援機関)に雇用契約終了の日から1年以上備えておく必要があります。
ちなみにこの項目の任意的支援としては、当該外国人が自ら通報を行いやすくするために、関係行政機関の窓口情報の一覧をあらかじめ提供しておくことが望まれます。
 
 かざはな行政書士事務所
代表行政書士 
 佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
 前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
 その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
 2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
 ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。
 
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