木材産業分野で特定技能外国人を雇用するには?
~要件・試験・流れを解説~

投稿日:2025年10月28日

日本の木材産業は、製材から加工まで多くの工程を担い、住宅建築や家具製造等、私たちの暮らしを支えています。しかし、近年は作業員の高齢化が進むだけでなく、若手人材の確保も困難となっており、現場の人手不足が課題となっています。
こうした状況を受けて、国は2024年に「木材産業分野」を特定技能制度の対象に追加し、外国人材の受け入れが可能になりました。この制度を活用すれば、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れることができ、現場の即戦力として活躍してもらうことができます。

この記事では、木材産業分野で特定技能外国人を雇用するための要件や基本的な流れ、注意点等を詳しく解説します。

1.特定技能制度とは?木材産業分野が対象になった背景

日本の木材産業は、森林資源を活用し、製材や加工を通じて住宅建築や家具等に欠かせない素材を供給する重要な産業です。しかし、近年は作業現場の高齢化が進み、若年層の就業者が減少する等、人手不足が深刻化しています。特に、製材や合板等の製造工程では体力を要する作業が多く、国内人材の確保が難しくなっていました。

こうした状況を受け、国は産業の持続的な発展と国産材の安定供給を確保するため、一定の技能を持つ外国人材を受け入れる必要があると判断しました。その結果、2024に「木材産業分野」が新たに特定技能制度の対象分野として追加され、製材業や合板製造業等の現場で、技能を持つ外国人が就労できるようになりました。

特定技能制度では、技能試験等に合格した外国人はもちろんのこと、木材加工の技能実習2号を修了した外国人については、試験免除で移行できる仕組みが整えられ、現場での即戦力として長期的に働くことが可能です。

2.木材産業分野で特定技能外国人が従事できる業務範囲

基本となる業務は、「木材・木製品の製造・加工(家具や建具等の装備品を除く)」です。具体的には、次の業務に従事することができます。

  • 製材
  • 単板(ベニヤ)製造
  • 木材チップ製造
  • 合板製造
  • 集成材製造
  • プレカット加工
  • 銘木製造
  • 床板製造

上記のほか、日本人が通常従事することとなる以下の関連業務に付随的に従事することも認められています。

  • 原材料(原木・資材)の調達・受入れ作業
  • 製品の検査
  • 製品の出荷作業(運搬・梱包・積込み)
  • 作業場所の整理整頓や清掃

なお、木材産業分野については、2号特定技能外国人(1号特定技能外国人として実務経験を経て、必要な試験に合格した熟練者)の受け入れはできません(2025年10月時点)。

3.特定技能外国人(候補者)に必要な要件

外国人が木材産業分野で特定技能ビザを取得して働くためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 18歳以上であること
  2. 健康状態が良好であること
  3. 従事する業務に必要な知識又は経験を必要とする技能を有していることが試験等により証明されていること
  4. 日本での生活に必要な日本語能力及び従事しようとする業務に必要な日本語能力を有していることが証明されていること

3と4について、外国人がどのようなルートで1号特定技能外国人を目指しているかによって、求められる試験が異なります。以下、ご参照ください。

対象者 技能水準 日本語能力
特定技能試験 日本語試験等
木材加工の技能実習2号を良好に修了した者
【技能実習2号ビザ】
免除 免除
木材加工以外の技能実習2号を良好に修了した者
【技能実習2号ビザ】

木材産業特定技能1号測定試験

免除
上記以外の者 木材産業特定技能1号測定試験

■下記どちらかの試験合格
①日本語能力試験N4以上
②国際交流基金日本語基礎テスト

木材産業特定技能1号測定試験の詳細はこちらをご覧ください。
日本語能力試験の詳細はこちらをご覧ください。
国際交流基金日本語基礎テストの詳細はこちらをご覧ください。

【注意事項】

  • 木材加工の技能実習2号を良好に修了したとして技能試験の合格等の免除を受けたい場合には、技能実習2号修了時の木材加工技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の写しの提出が必要です。合格していない場合は、木材産業特定技能1号測定試験を受験し合格するか、実習実施者が作成した技能等の修得状況を評価した文書の提出が必要です。

4.特定技能外国人を雇用したい事業者が満たすべき要件

特定技能外国人を受け入れるためには、事業者側も満たさなくてはいけない要件があります。
全分野共通の要件と木材産業分野特有の要件に加えて、雇用形態・契約内容に関する要件や支援計画を作成することも求められていますので、併せて紹介します。

(1)全分野共通の要件

この中で1つでも満たさないものがあれば(欠格事由に該当すれば)、その日から5年間、特定技能外国人を受け入れることができません

  1. 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守すること
  2. 非自発的離職者を発生させないこと(特定技能雇用契約締結の前1年及び締結後)
  3. 行方不明者を発生させないこと(特定技能雇用契約締結の前1年及び締結後)
  4. 関係法律による刑罰を受けていないこと(刑に処せられ、その執行後又は執行を受けることが無くなった日から5年を経過していること)
  5. 実習認定の取り消しを受けた場合は、取り消しを受けてから5年が経過していること
  6. 出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行っていないこと(特定技能雇用契約締結の前5年及び締結後)
  7. 暴力団員ではないこと
  8. 行為能力・役員等の適格性があること
  9. 特定技能外国人の活動状況に係る文書を作成し、雇用契約終了の日から1年以上保管すること
  10. 特定技能外国人とその親族が、保証金の徴収・違約金契約等を締結させられていないこと
  11. 特定技能外国人に対する義務的支援の費用を外国人に負担させないこと
  12. 特定技能外国人を派遣労働者として受け入れる場合、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者等で、適当と認められる者であるほか、派遣先も1~4の基準に適合すること
  13. 会社が労災保険の適用事業所である場合、労災保険に係る保険関係の届出を適切に行うこと
  14. 特定技能外国人が継続して働くことができるように、会社が事業を安定的に継続することができる財政的基盤を持っていること
  15. 報酬の支払い方法について、基本的には預金口座への振り込みを行うこと
  16. 地域における共生社会の実現のために寄与する責務を果たしていること
  17. 特定産業分野ごとの特有の事情に応じて個別に定める基準に適合していること

上記の中で、特に注意したいのが、2の非自発的離職者です。これは、会社都合で離職させた人のことを指しますが、退職勧奨や試用期間からの本採用拒否も該当しますので、気を付けてください。詳しくはこちらをご覧ください。

(2)木材産業分野特有の要件

木材産業分野で特定技能外国人を雇用するためには、以下の要件も満たす必要があります。

  1. 受入れ事業者は、農林水産省が設置する木材産業特定技能協議会(以下、協議会)の構成員になること
  2. 受入れ事業者は、協議会において協議が調った措置を講じること
  3. 受入れ事業者は、協議会に対し、必要な協力を行うこと
  4. 受入れ事業者は、農林水産省又はその委託を受けた者が行う調査等に対し、必要な協力を行うこと
  5. 受入れ事業者は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、農林水産省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託すること

木材産業分野の受入れ事業者になるには、次の6つのうちのいずれかの事業を行っている必要があります。

  1. <小分類121>製材業、木製品製造業
  2. <細分類1222>合板製造業
  3. <細分類1223>集成材製造業
  4. <細分類1224>建築用木製組立材料製造業
  5. <細分類1227>銘木製造業
  6. <細分類1228>床板製造業

なお、次の事業は対象外となります。

  • <小分類120>管理、補助的経済活動を行う事業所
  • <細分類1221>造作材製造業(建具を除く)
  • <細分類1226>繊維板製造業
  • <小分類123>木製容器製造業(竹、とうを含む)
  • <小分類129>その他の木製品製造業(竹、とうを含む)
  • <中分類13>家具・装備品製造業

協議会に加入する際に、上記1~6に示した日本標準産業分類に該当する事業所であることが分かる書類(例:定款の写し)を求められることがあります。

(3)雇用形態・契約内容に関する要件

木材産業分野の特定技能ビザを申請する前に、採用予定者と適法な雇用契約を結んでおくことも要件の1つです。適法な契約の条件としては、次のものが挙げられます。雇用条件書の書き方についてはこちらをご参照ください。

  1. 労働関連法令に適合していること
  2. 業務内容が木材・木製品の製造・加工(家具や建具等の装備品を除く)であること
  3. 直接雇用であること ※木材産業分野では、派遣雇用は認められていない
  4. 所定労働時間がフルタイム(週5日以上かつ年間217日以上、かつ労働時間が週30時間以上)であること
  5. 特定技能外国人の所定労働時間が他の労働者の所定労働時間と同等であること
  6. 同等の業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上であること
  7. 特定技能外国人から一時帰国の申し出があった場合は、有給休暇の取得をさせる等の配慮をすること
  8. 特定技能外国人が雇用契約終了後、帰国に要する旅費を負担することができないときは、企業が旅費を負担するとともに、円滑に出国できるよう必要な措置を講ずること
  9. 特定技能外国人の健康状況やその他生活状況を把握するために必要な措置を講ずること
(4)支援計画を作成すること

支援計画とは、1号特定技能外国人と雇用契約を締結しようとする企業が、作成しなければならないものです。この支援計画は、1号特定技能外国人が、活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画です。

この支援計画には、必ず行わなければならない義務的支援行うことが望ましいとされる任意的支援に分けられますが、支援計画書に記載した場合は、任意的支援についても支援義務が生じます。そして、この支援義務を果たさない場合、欠格事由に該当することとなりますので、注意が必要です。
なお、支援計画の項目は以下のとおりです(各項目に義務的支援と任意的支援が含まれています)。詳細はこちらをご覧ください。

  1. 事前ガイダンスの提供
  2. 出入国する際の送迎
  3. 適切な住居の確保に係る支援や生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 日本語学習の機会の提供
  6. 相談又は苦情への対応
  7. 日本人との交流促進に係る支援
  8. 非自発的離職時の転職支援
  9. 定期的な面談の実施、行政機関への通報

これらの支援計画については、全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、事業所で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。

5.特定技能外国人を雇用する流れ(木材産業分野の場合)

続いて、木材産業分野の特定技能外国人(日本に在留しており、木材加工の技能実習2号を良好に修了予定の外国人)を雇用するためのおおまかな流れをご紹介します。手続きの数が非常に多く、時間もかかるため、登録支援機関や行政書士のサポートを受けながら、進められることをおすすめします。手続きがすべて完了するまでに4ヶ月程度かかります。

STEP1

技能実習修了予定の外国人と雇用契約を結ぶ

※外国人の労働条件が適法であることが求められます。

STEP2

外国人の支援計画を策定する

※会社は、外国人が特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、この計画に基づいて支援を行わなければなりません。なお、この支援計画の実施について、一部又は全部を登録支援機関に委託することができます。その場合は、登録支援機関と委託契約を結ぶ必要があります。

STEP3

外国人に事前ガイダンスを行う

※労働条件、活動内容等について、対面又はZoom等で説明します。これも支援計画の1つであるため、登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が行います。

STEP4

木材産業特定技能協議会へ加入する

※在留資格変更申請前に加入する必要があります。(一社)全国木材組合連合会に確認申請書を提出し、確認証を受領してから、加入手続きをすることとなりますので、加入までに1~2か月程度かかることが想定されます。早めに手続きを開始しましょう。

STEP5

本国で「特定技能」の活動に関して必要な手続きを行う

※特定技能外国人として日本で働く際に、カンボジア、タイ、ベトナムの外国人については、本国で定める手続きをし、証明書等を受領しておく必要があります。

STEP6

外国人に健康診断を受けてもらう

※健康状態が良好であることも審査基準の1つであるため、必ず受けてもらう必要があります。健康診断個人票に掲げられている項目が網羅されているものであれば、異なる様式の健康診断書を入管に提出しても問題ありません。

STEP7

外国人が木材加工の技能実習2号を修了(在留期間満了3ヶ月前)

※技能実習期間を2年10ヶ月修了していることが必須条件です。

STEP8

特定技能1号ビザの在留資格変更許可申請をする

※審査に2ヶ月程度かかります。

STEP9 許可後に、就労開始!

6.木材産業分野で特定技能外国人を雇った後の手続き

ここまで、特定技能外国人を雇うまでの要件や流れ等について紹介してきましたが、雇った後も特定技能特有の手続きが必要となります。以下、主要なものをご紹介します。

  1. 定期届出(1年に1回、対象年の翌年4月1日~5月31日までに入管に提出)
  2. 随時届出(雇用条件が変わった、退職した、支援計画が変わった等の際に、事由が発生した時から14日以内に入管に提出)
  3. 在留期間更新許可申請(在留期限が1年で付与される方がほとんどのため、毎年、在留期限の3か月前~当日までに申請)

1と2については、登録支援機関に相談しながら、手続きを行ってください。3については、行政書士に依頼されることをおすすめします。

7.まとめ

木材産業における外国人材の受け入れは、人手不足の解消だけでなく、現場の活性化や新しい技術の導入にもつながります。ただし、制度の理解や書類作成、入管への手続きには専門的な知識が必要です。制度に精通した専門家に相談しながら、安心して受け入れを進めることが成功のポイントです。

当事務所では、特定技能制度の活用を検討する事業者様に対し、受入れ要件の確認から申請書類の作成及び申請までをトータルでサポートしています。外国人雇用を安心して進めたい事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。

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