特定技能ビザとは

投稿日:2025年7月19日

少子高齢化が進む日本では、様々な産業で人手不足が深刻化しています。生産性向上や人材確保の取り組みを行っても、人材不足が解消されない産業分野において、一定の専門性や技能を持ち、即戦力となる外国人を受け入れようと、2019年4月から特定技能ビザの運用が始まりました。

特定技能制度には、たくさんの条件やルールがあり、会社が特定技能外国人を受け入れるのは、非常に大変な側面もありますが、人材不足を補えるという、大きなメリットもあります。この記事では、特定技能ビザの概要や特定技能外国人を受け入れるための条件について解説します。

1.特定技能ビザの種類

特定技能ビザは、特定の産業分野において、一定の専門性や技能を持ち、日本での生活と業務に求められる日本語能力を持っている外国人に与えられるビザです。特定の産業分野に該当していれば、他の就労ビザでは認められていない単純作業や現場労働も認められているという点が、大きな特徴です。
そして、特定技能ビザには1号と2号の2種類があります。それぞれの特徴について、具体的に見ていきましょう。

(1)特定技能ビザ1号

外国人が特定技能1号ビザを取得するためには、次のどちらかの要件を満たす必要があります。
1つ目は、外国人が技能実習2号を良好に修了しており、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められること(技能実習ルートです。これには、技能実習法施行前の技能実習2号を修了した技能実習生や技能実習ビザが創設される前の特定活動(技能実習)ビザを持って在留していた技能実習生(ただし、その期間が2年10か月以上の者に限る)も含まれます。建設分野の方はこちらのルートから特定技能1号ビザを取得される方が多いようです。
2つ目は、外国人が該当分野の特定技能評価試験と日本語能力試験(N4)又は国際交流基金日本語基礎テストに合格すること(試験ルートです。なお、技能実習2号を修了したけれども、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められない場合は、特定技能評価試験に合格する必要があります(日本語能力に関する試験は免除されます)。製造分野や介護分野はこちらのルートから特定技能1号ビザを取得される方が多いようです。
上記のどちらかを満たすことで、特定技能1号ビザ取得に向けて、スタートラインに立つことができます

また、特定技能1号ビザの在留期間は、通算5年(在留期間(多くは1年)ごとに更新申請が必要)が上限となっており、その通算期間には、特定技能1号ビザを持って在留している期間だけでなく、特定技能制度が導入された当初、特定活動ビザ(既にその分野で活動していた場合や特定技能1号への移行に伴う準備期間等に与えられる場合があった)で在留していた期間も含まれることに注意が必要です。なお、特定技能1号ビザで在留している場合、永住申請の要件となる就労期間には含まれません。

家族の帯同については、特定技能1号ビザでは原則認められていません。ですが、例えば、元留学生で既に配偶者や子どもが家族滞在ビザを取得して日本で暮らしている場合は、その家族に特定活動ビザを認められるようです。

従事できる産業分野は、介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、鉄道、自動車運送業、林業、木材産業の16分野です(2025年7月時点)。

(2)特定技能ビザ2号

特定技能2号ビザを取得するためには、各産業分野で多少異なりますが、その多くは特定技能の指導・管理経験を2年以上有し、特定技能2号評価試験に合格することが条件です。つまり、特定技能1号ビザで実務経験を積み、熟練した技能を身に着けた外国人が、同産業分野の評価試験に合格することで得られるビザということです。

特定技能2号ビザの在留期間は、6か月、1年、3年のいずれかで、更新に制限はありません。また、永住申請の要件となる就労期間に含めることができます。

家族の帯同については、配偶者や子どもを家族滞在ビザで呼び寄せることが可能です。ただし、親や兄弟は認められていません。

従事できる産業分野は、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の11分野です(2025年7月時点)。

2.特定技能ビザの外国人を受け入れるために必要な条件

最初に少し触れましたが、会社が特定技能外国人を受け入れるためには、クリアしないといけない条件がいくつかあります。ここでは、主な条件を4つご紹介します。

(1)特定産業分野及び業務区分に該当していること

最初に確認すべき条件として、特定技能外国人を受け入れたいと考えている会社が、特定産業分野に該当しているか、また該当している場合は、あてはまる業務区分があるかを確認する必要があります。これは、採用を考えている技能実習2号の外国人が、関連性のある業務の技能実習経験を積み、試験無しで特定技能1号に移行できるかどうかにも関わる重要な条件ですので、最初に確認することをおすすめします。確認の際は、日本標準産業分類の「細分類」まで確認してください

各産業分野の確認は、こちらからご覧ください。

(2)受入機関適合性を満たすこと

これも非常に重要な条件です。なぜなら、この中で1つでも満たさないものがあれば(欠格事由に該当すれば)、その日から5年間、特定技能外国人を受け入れることができないからです。

  1. 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守すること
  2. 非自発的離職者を発生させないこと(特定技能雇用契約締結の前1年及び締結後)
  3. 行方不明者を発生させないこと(特定技能雇用契約締結の前1年及び締結後)
  4. 関係法律による刑罰を受けていないこと(刑に処せられ、その執行後又は執行を受けることが無くなった日から5年を経過していること)
  5. 行為能力・役員等の適格性があること
  6. 実習認定の取り消しを受けた場合は、取り消しを受けてから5年が経過していること
  7. 出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行っていないこと(特定技能雇用契約締結の前5年及び締結後)
  8. 暴力団員ではないこと
  9. 特定技能外国人の活動状況に係る文書を作成し、雇用契約終了の日から1年以上保管すること
  10. 特定技能外国人とその親族が、保証金の徴収・違約金契約等を締結させられていないこと
  11. 特定技能外国人に対する義務的支援の費用を外国人に負担させないこと
  12. 特定技能外国人を派遣労働者として受け入れる場合、派遣元も受入機関適合性を満たし、かつ当該外国人が従事する特定産業分野に関する業務を行っていること
  13. 会社が労災保険の適用事業所である場合、労災保険に係る保険関係の届出を適切に行うこと
  14. 特定技能外国人が継続して働くことができるように、会社が事業を安定的に継続することができる財政的基盤を持っていること
  15. 報酬の支払い方法について、基本的には預金口座への振り込みを行うこと

上記の中で、特に注意したいのが、2の非自発的離職者です。これは、会社都合で離職させた人のことを指しますが、退職勧奨や試用期間からの本採用拒否も該当しますので、気を付けてください。

(3)適法な雇用契約を締結していること

特定技能ビザの申請をする前に、採用予定者と適法な雇用契約を結んでおくことも条件の1つです。適法な契約の条件としては、次のものが挙げられます。

  1. 労働関連法令に適合していること
  2. 特定産業分野に属する業務であり、熟練した技能を要する業務であること
  3. 特定技能外国人の所定労働時間が他の労働者の所定労働時間と同等であること
  4. 同等の業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上であること
  5. 特定技能外国人から一時帰国の申し出があった場合は、有給休暇の取得をさせる等の配慮をすること
  6. 派遣労働者として雇用する場合は、全雇用期間の派遣先及び派遣期間が定められていること
  7. 特定産業分野ごとの特有の事情を考慮して個別に定める基準に適合していること
(4)支援計画を作成していること

支援計画とは、特定技能1号ビザの外国人と雇用契約を締結しようとする会社が、作成しなければならないものです。この支援計画は、特定技能1号ビザの外国人が、活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画です(特定技能2号ビザの外国人は、支援計画不要です)。
この支援計画には、必ず行わなければならない義務的支援行うことが望ましいとされる任意的支援に分けられますが、支援計画書に記載した場合は、任意的支援についても支援義務が生じます。そして、この支援義務を果たさない場合、受入機関適合性を満たしていない(欠格事由に該当する)こととなりますので、注意が必要です。
なお、支援計画の項目は以下のとおりです(各項目に義務的支援と任意的支援が含まれています)。

  1. 事前ガイダンスの提供
  2. 出入国する際の送迎
  3. 適切な住居の確保に係る支援や生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 公的手続等への同行
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 相談又は苦情への対応
  8. 日本人との交流促進に係る支援
  9. 非自発的離職時の転職支援
  10. 定期的な面談の実施、行政機関への通報

これらの支援計画については、全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、会社で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。

(4)分野別協議会に加入すること

分野別協議会とは、特定技能制度における産業分野ごとの業界団体等で構成される協議組織で、外国人の適正な受け入れと就労環境の整備を目的とした機関です。簡単に言うと、特定技能外国人が適正に働くことができているか、見守る機関です。特定技能外国人を雇用する会社は、この分野別協議会に加入することが必須となっています。
この手続きは、特定技能ビザの申請の前に済ませておく必要があります(手続き中であれば、加入前でもビザ申請は可能です)。この協議会への加入も、分野によっては複雑で難しいケースがありますので、その場合は、ビザ専門の行政書士に相談されることをおすすめします。

3.まとめ

以上が、特定技能ビザの概要になります。
他の就労ビザに比べると、ビザ申請の前の段階から、クリアしないといけない条件がいくつもあり、ビザ取得までの道のりは長いです(時間もかかります)。ですが、一度この特定技能制度を活用し、外国人材を受け入れることができたら、人材不足解消への大きな一歩となると思います。
とは言え、特定技能ビザは手続きが多いビザですので、申請の段階から特定技能外国人を受け入れた後も、ビザ専門の行政書士のサポートを受けられることをおすすめします。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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