技能実習生以外の外国人を特定技能で雇用するには?

投稿日:2025年7月25日

人手不足の特定産業分野において、特定技能制度を活用して、外国人を雇用することができるようになりましたが、その多くは、関連職種の技能実習を経て、特定技能に移行する外国人です(技能実習ルート)。
ですが、技能実習を経ていない外国人でも、一定の条件を満たせば、特定技能外国人として雇用することが可能です(試験ルート)。

この記事では、技能実習生以外の外国人を特定技能で雇用するための条件や流れについて、解説します。

1.技能実習生以外の外国人を雇用するための条件

技能実習を経ていない外国人を特定技能で雇用するための条件は、以下の2つです。

  1. 従事予定の業務に必要な技能に係る技能試験に合格していること
  2. 日本語能力試験等に合格していること
(1)従事予定の業務に必要な技能に係る技能試験に合格していること

特定技能外国人は、一定の専門性や技能を持ち、即戦力となることが求められています。そのため、1つ目の条件として、従事予定の産業分野の技能試験に合格していることが必要です。なお、この技能試験は、海外で受験可能な分野もあります。つまり、現在は海外に住んでいる外国人でも、この技能試験を受験して合格することで、特定技能外国人として日本に呼び寄せることができるということです。

参考までに、各分野の試験情報のサイトをご紹介します。

(2)日本語能力試験等に合格していること

特定技能外国人が日本の会社で即戦力として働くためには、一定水準の日本語能力も必要です。そのため、2つ目の条件として、日本語能力試験等に合格していることが求められます
試験の種類は2種類あり、いずれかの試験で基準を満たせば、特定技能外国人の条件をクリアすることになります。なお、こちらの試験も海外で受験することができます。

  • 国際交流基金日本語基礎テストA2レベル(ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力)以上
  • 日本語能力試験(JLPT):N4レベル(基本的な日本語を理解する)以上 ※自動車運送業のタクシー・バス区分にて従事する場合はN3レベル(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる以上が必要です。

​ちなみに、外国人が介護分野に従事する場合は、以下の試験にも合格する必要があります。対人サービスが基本業務となるため、より高い日本語能力を求められるからです。

2.試験ルートの雇用の流れ

続いて、試験に合格した外国人を特定外国人として雇用するためのおおまかな流れをご紹介しますが、外国人が日本に住んでいるか、海外に住んでいるかで、手続きが少し変わりますので、それぞれのケースに分けてご紹介します。

なお、特定技能外国人を受け入れるためには、会社がクリアしないといけない条件もたくさんありますが、それについては、こちらのページをご覧ください。

(1)外国人が日本に住んでいる場合

手続きの数が非常に多いため、雇用予定の外国人が技能試験に合格する前から、雇用契約書や支援計画書等、手続きに必要な書類を準備しておくことをおすすめします。また、STEP4~7は同時進行でも良いと思います。

STEP1 会社がハローワーク等に求人票を出す又は登録支援機関等から人材紹介を受ける
STEP2 候補者の外国人と面接し、選考を行う
STEP3

採用予定の外国人が技能試験及び日本語能力試験等に合格する

※合格前に内定を出すことは禁止されていませんが、雇用契約は合格後に締結してください。

STEP4

外国人と雇用契約を結ぶ

※外国人の労働条件が適法であることが求められます。

STEP5

外国人の支援計画を策定する

※会社は、外国人が特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、この計画に基づいて支援を行わなければなりません。なお、この支援計画の実施について、一部又は全部を登録支援機関に委託することができます。その場合は、登録支援機関と委託契約を結ぶ必要があります。

STEP6

外国人に事前ガイダンスを行う

※労働条件、活動内容等について、対面又はZoom等で説明します。これも支援計画の1つであるため、登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が行います。

STEP7

外国人に健康診断を受けてもらう

※健康状態が良好であることも審査基準の1つであるため、必ず受けてもらう必要があります。健康診断個人票に掲げられている項目が網羅されているものであれば、異なる様式の健康診断書を入管に提出しても問題ありません。

STEP8

分野別協議会への加入手続きを行う

※在留資格変更申請前に手続きを済ませておく必要があります。加入済みでなくても、手続き中であれば、在留資格変更申請は可能です。

STEP9

本国で「特定技能」の活動に関して必要な手続きを行う

※特定技能外国人として日本で働く際に、カンボジア、タイ、ベトナムの外国人については、本国で定める手続きをし、証明書等を受領しておく必要があります。なお、ベトナムについては、2年以上の課程を修了した(又は修了予定の)留学生から特定技能外国人へ移行する方のみ、手続きの対象となっています。

STEP10

特定技能1号ビザの在留資格変更許可申請をする

※審査に1か月程度かかります。

STEP11 許可後に、就労開始!
(2)外国人が海外に住んでいる場合

雇用予定の外国人が海外に住んでいる場合は、会社の採用活動や在留資格を許可された後の手続きが少し異なります。外国人が日本に住んでいる場合よりも、さらに時間がかかりますので、支援計画書等の準備できる書類は事前に用意しておくことをおすすめします。

STEP1

二国間取り決めのルールにしたがって、会社が雇用を予定している外国人の国の送出機関等に登録し、求人情報等を提供する又は登録支援機関等から人材紹介を受ける

※国によって、取り決めの内容が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

STEP2

送出機関等に登録している求職中の外国人又は登録支援機関から紹介された外国人とZoom等で面接を行い、選考を行う

STEP3

採用予定の外国人が技能試験及び日本語能力試験等に合格する

※合格前に内定を出すことは禁止されていませんが、雇用契約は合格後に締結してください。

STEP4

外国人と雇用契約を結ぶ

※外国人の労働条件が適法であることが求められます。

STEP5

外国人の支援計画を策定する

※会社は、外国人が特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、この計画に基づいて支援を行わなければなりません。なお、この支援計画の実施について、一部又は全部を登録支援機関に委託することができます。その場合は、登録支援機関と委託契約を結ぶ必要があります。

STEP6

外国人に事前ガイダンスを行う

※労働条件、活動内容等について、Zoom等で説明します。これも支援計画の1つであるため、登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が行います。

STEP7

在留資格の申請3か月前以降に、外国人に本国の病院で健康診断を受けてもらう

※健康状態が良好であることも審査基準の1つであるため、必ず受けてもらう必要があります。健康診断個人票(英語、ベトナム語等、10言語のバージョンがあります)に掲げられている項目が網羅されているものであれば、異なる様式の健康診断書を入管に提出しても問題ありません。外国語の場合、日本語に翻訳したものも併せて提出する必要があります。

STEP8

分野別協議会への加入手続きを行う

※在留資格の申請前に手続きを済ませておく必要があります。加入済みでなくても、手続き中であれば、在留資格認定証明書交付申請は可能です。

STEP9

本国で「特定技能」の活動に関して必要な手続きを行う

※特定技能外国人として日本で働く際に、カンボジア、ベトナムの外国人については、本国で定める手続きをし、証明書等を受領しておく必要があります。

STEP10

特定技能1号ビザの在留資格認定証明書交付申請をする

※審査に3か月程度かかります。

STEP11

入管から在留資格認定証明書を受領する

※入管から在留資格認定証明書を受け取ったら、会社から外国人へ送付します。在留資格認定証明書はメール又は紙(選択可能)で交付されますので、メールでの送付も可能です。

STEP12 外国人が本国の在外日本大使館で査証申請し、ビザの交付を受ける
STEP13

在留資格認定証明書が交付されてから3か月以内に、外国人が日本に入国する

※上陸審査後、在留カードを受け取ります。その後、14日以内に住居地を定めて市役所に届け出る必要があります。

STEP14

就労開始!

3.まとめ

この記事では、技能実習生以外の外国人が特定技能へ移行する際の条件や流れについてご紹介しました。いわゆる試験ルートと言われるものですが、ご紹介したとおり、手続きが多く非常に複雑です。
特定技能制度の活用には、二国間取り決めに基づく対応、技能試験の受験や在留資格の申請等、細かな手続きやルールへの理解が必要不可欠です。少しでも不安を感じられた場合は、制度に精通した行政書士に相談することで、スムーズかつ確実な採用につながります。外国人雇用をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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