ビルクリーニング分野で特定技能外国人を雇用するには?
~要件・試験・流れを解説~

投稿日:2025年10月20日

ビルクリーニング業界では、オフィスビルや商業施設、病院等で高い清掃品質が求められる一方、深刻な人手不足が続いています。

そのような中で注目されているのが「特定技能(ビルクリーニング)」制度です。この制度を活用すれば、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れることができ、現場の即戦力として活躍してもらうことができます。

この記事では、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を雇用したい事業者様向けに、要件・手続きの流れ・注意点をわかりやすく解説します。

1.特定技能制度とは?ビルクリーニングが対象になった背景

ビルクリーニング分野が特定技能制度の対象となった背景には、人手不足の深刻化があります。ビルクリーニング業界は、衛生的環境の確保が求められる特定建築物(店舗やオフィス等)の数が年々増加しており、今後もサービス需要は増加していく見込みですが、若年層の人材確保が難しく、就業者の半数近くが65歳以上となる等、高齢化が加速しています。また、これまで「技能実習制度」により外国人材を受け入れてきましたが、技能実習はあくまで「技術移転を目的とした制度」であり、労働力確保を主な目的とするものではありません。したがって、現場で経験を積んだ人材が戦力となる頃には帰国してしまうという課題がありました。​

こうした状況を踏まえ、政府は人手不足が特に顕著な産業分野としてビルクリーニング分野を位置づけ、2019年4月の特定技能制度の創設と同時に「特定産業分野」の1つに指定しました。これにより、技能試験等に合格した外国人はもちろんのこと、ビルクリーニングの技能実習2号を修了した外国人についても、試験免除でスムーズに移行できる仕組みが整えられ、現場での即戦力として長期的に働くことが可能となりました。

2.ビルクリーニング分野で特定技能外国人が従事できる業務範囲

基本となる業務は、建築物内部の清掃 です。具体的には、次の業務に従事することができます。

多数の利用者が利用する建築物(百貨店、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、旅館等)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保及び保全の向上を目的として、場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、方法、洗剤及び用具を適切に選択して清掃作業を行い、建築物に存在する環境上の物質を排除し、清潔さを維持する業務
※床、浴室、トイレ、洗面台等の清掃からアメニティ補充やベッドメイク作業等、衛生かつ美観が整えられた客室を商品として納品するために必要な一連の業務である客室清掃業務は主な業務に含まれます

上記のほか、日本人が通常従事することとなる以下の関連業務に付随的に従事することも認められています。

  • 複数の作業員の指導、現場の管理、計画作成や進行管理等
  • 清掃用機械器具の維持管理等に関する業務、技能実習責任者の業務、技能実習指導員の業務や、生活指導員の業務(それぞれ主な業務に該当するものを除く)
  • 建築物と構造上一体と見なせる部分(犬走・アプローチ等の外周部等)の清掃作業
  • 資機材倉庫の整備作業
  • 建物外部(外壁、屋上等)の洗浄作業(高所作業を伴う窓ガラス・外壁清掃作業は除く)
  • ベッドメイク作業
  • 建築物内外の植裁管理作業(灌水作業等)
  • 資機材の運搬作業(他の現場に移動する場合等)

また、2号特定技能外国人(1号特定技能外国人として実務経験を2年以上経て、必要な試験に合格した人)については、上記に加えて、「複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務のほか、同業務の計画作成、進行管理その他のマネジメント業務」も業務の1つとなります。

3.特定技能外国人(候補者)に必要な要件

外国人がビルクリーニング分野で特定技能ビザを取得して働くためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 18歳以上であること
  2. 健康状態が良好であること
  3. 従事する業務に必要な知識又は経験を必要とする技能を有していることが試験等により証明されていること
  4. 日本での生活に必要な日本語能力及び従事しようとする業務に必要な日本語能力を有していることが証明されていること

3と4について、外国人がどのようなルートで1号特定技能外国人を目指しているかによって、求められる試験が異なります。以下、ご参照ください。

対象者 技能水準 日本語能力
特定技能試験 日本語試験等
ビルクリーニングの技能実習2号を良好に修了した者
【技能実習2号ビザ】
免除 免除
ビルクリーニング以外の技能実習2号を良好に修了した者
【技能実習2号ビザ】
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験  免除
上記以外の者 ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 

■下記どちらかの試験合格
①日本語能力試験N4以上
②国際交流基金日本語基礎テスト

ビルクリーニング分野特定技能評価試験の詳細はこちらをご覧ください。
日本語能力試験の詳細はこちらをご覧ください。
国際交流基金日本語基礎テストの詳細はこちらをご覧ください。

  • ビルクリーニングの技能実習2号を良好に修了したとして技能試験の合格等の免除を受けたい場合には、技能実習2号修了時のビルクリーニング技能検定(3級)の実技試験の合格証明書の写しの提出が必要です。合格していない場合は、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験等を受験し合格するか、実習実施者が作成した技能等の修得状況を評価した文書の提出が必要です。
  • 1号特定技能外国人から2号特定技能外国人への移行を目指す場合は、さらに「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」又は「技能検定1級(ビルクリーニング)」に合格する必要があります。
    上記試験の受験条件は、試験日において、特定建築物の建築物内部の清掃又は建築物清掃業若しくは建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所が行う建築物(住宅を除く)内部の清掃に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する者としての実務経験が2年以上あることです。

4.特定技能外国人を雇用したい事業者が満たすべき要件

特定技能外国人を受け入れるためには、事業者側も満たさなくてはいけない要件があります。
全分野共通の要件とビルクリーニング分野特有の要件に加えて、雇用形態・契約内容に関する要件や支援計画を作成することも求められていますので、併せて紹介します。

(1)全分野共通の要件

この中で1つでも満たさないものがあれば(欠格事由に該当すれば)、その日から5年間、特定技能外国人を受け入れることができません

  1. 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守すること
  2. 非自発的離職者を発生させないこと(特定技能雇用契約締結の前1年及び締結後)
  3. 行方不明者を発生させないこと(特定技能雇用契約締結の前1年及び締結後)
  4. 関係法律による刑罰を受けていないこと(刑に処せられ、その執行後又は執行を受けることが無くなった日から5年を経過していること)
  5. 実習認定の取り消しを受けた場合は、取り消しを受けてから5年が経過していること
  6. 出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行っていないこと(特定技能雇用契約締結の前5年及び締結後)
  7. 暴力団員ではないこと
  8. 行為能力・役員等の適格性があること
  9. 特定技能外国人の活動状況に係る文書を作成し、雇用契約終了の日から1年以上保管すること
  10. 特定技能外国人とその親族が、保証金の徴収・違約金契約等を締結させられていないこと
  11. 特定技能外国人に対する義務的支援の費用を外国人に負担させないこと
  12. 特定技能外国人を派遣労働者として受け入れる場合、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者等で、適当と認められる者であるほか、派遣先も1~4の基準に適合すること
  13. 会社が労災保険の適用事業所である場合、労災保険に係る保険関係の届出を適切に行うこと
  14. 特定技能外国人が継続して働くことができるように、会社が事業を安定的に継続することができる財政的基盤を持っていること
  15. 報酬の支払い方法について、基本的には預金口座への振り込みを行うこと
  16. 地域における共生社会の実現のために寄与する責務を果たしていること
  17. 特定産業分野ごとの特有の事情に応じて個別に定める基準に適合していること

上記の中で、特に注意したいのが、2の非自発的離職者です。これは、会社都合で離職させた人のことを指しますが、退職勧奨や試用期間からの本採用拒否も該当しますので、気を付けてください。詳しくはこちらをご覧ください。

(2)ビルクリーニング分野特有の要件

ビルクリーニング分野で特定技能外国人を雇用するためには、以下の要件も満たす必要があります。

  1. 受入れ事業者は、都道府県知事の登録を受けた正式な清掃事業所において特定技能外国人を受け入れることとしていること
  2. 受入れ事業者は、厚生労働省が設置する、ビルクリーニング分野の業界団体、試験実施主体、制度関係機関その他の関係者で構成するビルクリーニング分野特定技能協議会(以下、協議会)の構成員になること
  3. 受入れ事業者は、協議会において協議が調った措置を講じること
  4. 受入れ事業者は、協議会に対し、必要な協力を行うこと
  5. 受入れ事業者は、厚生労働省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと
(3)雇用形態・契約内容に関する要件

ビルクリーニング分野の特定技能ビザを申請する前に、採用予定者と適法な雇用契約を結んでおくことも要件の1つです。適法な契約の条件としては、次のものが挙げられます。雇用条件書の書き方についてはこちらをご参照ください。

  1. 労働関連法令に適合していること
  2. 業務内容が建築物内部の清掃業務及びその指導・管理・マネジメント業務(2号のみ)であること
  3. 直接雇用であること ※ビルクリーニング分野では、派遣雇用は認められていない
  4. 所定労働時間がフルタイム(週5日以上かつ年間217日以上、かつ労働時間が週30時間以上)であること
  5. 特定技能外国人の所定労働時間が他の労働者の所定労働時間と同等であること
  6. 同等の業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上であること
  7. 特定技能外国人から一時帰国の申し出があった場合は、有給休暇の取得をさせる等の配慮をすること
  8. 特定技能外国人が雇用契約終了後、帰国に要する旅費を負担することができないときは、企業が旅費を負担するとともに、円滑に出国できるよう必要な措置を講ずること
  9. 特定技能外国人の健康状況やその他生活状況を把握するために必要な措置を講ずること
(4)支援計画を作成すること

支援計画とは、1号特定技能外国人と雇用契約を締結しようとする事業者が、作成しなければならないものです。この支援計画は、1号特定技能外国人が、活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画です。2号特定技能外国人には、支援計画不要です。)

この支援計画には、必ず行わなければならない義務的支援行うことが望ましいとされる任意的支援に分けられますが、支援計画書に記載した場合は、任意的支援についても支援義務が生じます。そして、この支援義務を果たさない場合、欠格事由に該当することとなりますので、注意が必要です。
なお、支援計画の項目は以下のとおりです(各項目に義務的支援と任意的支援が含まれています)。詳細はこちらをご覧ください。

  1. 事前ガイダンスの提供
  2. 出入国する際の送迎
  3. 適切な住居の確保に係る支援や生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 日本語学習の機会の提供
  6. 相談又は苦情への対応
  7. 日本人との交流促進に係る支援
  8. 非自発的離職時の転職支援
  9. 定期的な面談の実施、行政機関への通報

これらの支援計画については、全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、事業所で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。

5.特定技能外国人を雇用する流れ(ビルクリーニング分野の場合)

続いて、ビルクリーニング分野の特定技能外国人(日本に在留しており、ビルクリーニングの技能実習2号を良好に修了予定の外国人)を雇用するためのおおまかな流れをご紹介します。手続きの数が非常に多く、時間もかかるため、登録支援機関や行政書士のサポートを受けながら、進められることをおすすめします。手続きがすべて完了するまでに4ヶ月程度かかります。

STEP1

技能実習修了予定の外国人と雇用契約を結ぶ

※外国人の労働条件が適法であることが求められます。

STEP2

外国人の支援計画を策定する

※会社は、外国人が特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、この計画に基づいて支援を行わなければなりません。なお、この支援計画の実施について、一部又は全部を登録支援機関に委託することができます。その場合は、登録支援機関と委託契約を結ぶ必要があります。

STEP3

外国人に事前ガイダンスを行う

※労働条件、活動内容等について、対面又はZoom等で説明します。これも支援計画の1つであるため、登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が行います。

STEP4

ビルクリーニング分野特定技能協議会へ加入する

※在留資格変更申請前に加入する必要があります。

STEP5

本国で「特定技能」の活動に関して必要な手続きを行う

※特定技能外国人として日本で働く際に、カンボジア、タイ、ベトナムの外国人については、本国で定める手続きをし、証明書等を受領しておく必要があります。

STEP6

外国人に健康診断を受けてもらう

※健康状態が良好であることも審査基準の1つであるため、必ず受けてもらう必要があります。健康診断個人票に掲げられている項目が網羅されているものであれば、異なる様式の健康診断書を入管に提出しても問題ありません。

STEP7

外国人がビルクリーニングの技能実習2号を修了(在留期間満了3ヶ月前)

※技能実習期間を2年10ヶ月修了していることが必須条件です。

STEP8

特定技能1号ビザの在留資格変更許可申請をする

※審査に2ヶ月程度かかります。

STEP9 許可後に、就労開始!

6.ビルクリーニング分野で特定技能外国人を雇った後の手続き

ここまで、特定技能外国人を雇うまでの要件や流れ等について紹介してきましたが、雇った後も特定技能特有の手続きが必要となります。以下、主要なものをご紹介します。

  1. 定期届出(1年に1回、対象年の翌年4月1日~5月31日までに入管に提出)
  2. 随時届出(雇用条件が変わった、退職した、支援計画が変わった等の際に、事由が発生した時から14日以内に入管に提出)
  3. 在留期間更新許可申請(在留期限が1年で付与される方がほとんどのため、毎年、在留期限の3か月前~当日までに申請)

1と2については、登録支援機関に相談しながら、手続きを行ってください。3については、行政書士に依頼されることをおすすめします。

7.まとめ

特定技能(ビルクリーニング)制度を活用すれば、人手不足の解消に大きく役立ちます。
一方で、申請書類の作成や支援体制の整備等、専門的な知識が必要な手続きも多くあります。

当事務所では、特定技能制度の活用を検討する事業者様に対し、受入れ要件の確認から申請書類の作成及び申請までをトータルでサポートしています。外国人雇用を安心して進めたい事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。

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