投稿日:2025年10月8日
建設業界では、高齢化による人手不足が深刻化しています。若年層の入職者は減少傾向にあり、現場では「人が足りない」「技能を継承できない」という声が多く聞かれます。ICT等の活用による生産性向上のほか、処遇改善等の取組により日本人労働者を追加で確保してもなお、人材が不足すると見込まれています。
そのような中で注目されているのが、「特定技能(建設分野)」制度です。この制度を活用すれば、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れることができ、現場の即戦力として活躍してもらうことができます。
この記事では、建設分野で特定技能外国人を雇用したい企業向けに、対象業種・要件・手続きの流れ・注意点をわかりやすく解説します。
建設分野が特定技能の対象となった背景には、長年にわたる深刻な人手不足があります。さらに、高齢化の進行により熟練技能者が現場を離れる一方、若年層の入職は減少傾向にあります。国土交通省の調査でも、建設業就業者のうち約3割が55歳以上を占め、29歳以下はわずか1割程度というデータが示されています。このような状況の中で、これまで現場を支えてきたのが「技能実習生」です。ですが、技能実習はあくまで「技能の移転」が目的であり、労働力としての受け入れ制度ではありません。そのため、実習を終えた外国人が引き続き日本で働くことはできず、現場では慢性的な人手不足が続いていました。
そこで新たに設けられたのが「特定技能」制度です。特定技能制度は、技能実習を終えた外国人等を対象に、一定の技能・日本語能力を持つ人材が「即戦力」として働けるようにする仕組みです。特に建設分野では、国土交通省が中心となって制度設計を行い、技能実習から特定技能への円滑な移行ルートを整備しました。
つまり、技能実習生として経験を積んだ人材が、そのまま「特定技能1号」として同じ職種で働き続けられるようになったのです。これにより、現場での人材の定着が可能となり、企業にとっても大きなメリットが生まれました。特定技能制度は、単なる外国人雇用制度ではなく、建設現場の持続的な人材確保のための新しい仕組みとして位置づけられています。
上記のほか、日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することも認められています。
(関連業務例:原材料・部品の調達・搬送、機器・装置・工具等の保守管理、足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業、足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業、清掃・保守管理作業、その他主たる業務に付随して行う作業)
また、2号特定技能外国人(1号特定技能外国人として実務経験を経て、必要な試験に合格した人)については、1号特定技能外国人と違って「複数の建設技能者を指導しながら、上記作業のいずれかに従事し、工程を管理する」ことができます。
なお、在留資格上の業務区分は、特定技能外国人が従事する業務内容に基づいた区分であり、業務区分に適合する業務内容であれば、作業を行う現場の種別を問わず従事することができます。
例えば、建築の現場でも、電気工事業を行うとして、ライフライン・設備の業務区分の特定技能外国人が就労可能です。
外国人が建設分野で特定技能ビザを取得して働くためには、以下の要件を満たす必要があります。
3と4について、外国人がどのようなルートで1号特定技能外国人を目指しているかによって、求められる試験が異なります。以下、ご参照ください。
| 対象者 | 技能水準 | 日本語能力 |
|---|---|---|
| 特定技能試験 | 日本語試験等 | |
| 関連職種・作業の技能実習2号を良好に修了した者 【技能実習2号ビザ】 | 免除 | 免除 |
| 関連職種・作業以外の技能実習2号を良好に修了した者 【技能実習2号ビザ】 | 建設分野特定技能1号評価試験 | 免除 |
| 上記以外の者 | 建設分野特定技能1号評価試験 | ■下記どちらかの試験合格 |
特定技能外国人を受け入れるためには、企業側も満たさなくてはいけない要件があります。
全分野共通の要件と建設分野特有の要件に加えて、雇用形態・契約内容に関する要件や支援計画を作成することも求められていますので、併せて紹介します。
上記の中で、特に注意したいのが、2の非自発的離職者です。これは、会社都合で離職させた人のことを指しますが、退職勧奨や試用期間からの本採用拒否も該当しますので、気を付けてください。詳しくはこちらをご覧ください。
建設分野で特定技能外国人を雇用するためには、以下の要件も満たす必要があります。
この支援計画には、必ず行わなければならない義務的支援と行うことが望ましいとされる任意的支援に分けられますが、支援計画書に記載した場合は、任意的支援についても支援義務が生じます。そして、この支援義務を果たさない場合、欠格事由に該当することとなりますので、注意が必要です。
なお、支援計画の項目は以下のとおりです(各項目に義務的支援と任意的支援が含まれています)。詳細はこちらをご覧ください。
これらの支援計画については、全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、事業所で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。
続いて、建設分野の特定技能外国人(日本に在留しており、関連職種の技能実習2号を良好に修了予定の外国人)を雇用するためのおおまかな流れをご紹介します。手続きの数が非常に多く、時間もかかるため、登録支援機関や行政書士のサポートを受けながら、進められることをおすすめします。手続きがすべて完了するまでに6ヶ月程度かかります。
| STEP1 | CCUSの事業者登録申請を行う ※既に登録済みの場合は不要です。登録完了までに2~4週間かかります。行政書士に代行申請を依頼することも可能です。 |
|---|---|
| STEP2 | JACに入会手続きを行う ※既に登録済みの場合は不要です。入会までに2~4週間かかります。 |
| STEP3 | 雇用契約に係る重要事項を説明した後、修了予定の外国人と雇用契約を結ぶ ※雇用契約を締結するまでの間に、必ず告示様式第2を使い、外国人に支払われる報酬予定額や業務内容等について、外国人が理解できる言語で説明し、理解していることを確認する必要があります。その後に、雇用契約を結びます。 |
| STEP4 | CCUSの技能者登録申請を行う ※事業者登録申請が完了してから行います。登録完了までに3~5週間かかります。行政書士に代行申請を依頼することも可能です。 |
| STEP5 | 建設特定技能受入計画を作成し、国土交通省にオンライン申請する ※技能実習生の在留期間満了日の6ヶ月前から申請可能ですので、早めに準備して申請しましょう。審査に2ヶ月程度かかります。申請書類が大量にありますので、書類作成や代行申請は行政書士に依頼されることをおすすめします。 |
| STEP6 | 外国人の支援計画を策定する ※受入れ企業は、外国人が特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、この計画に基づいて支援を行わなければなりません。なお、この支援計画の実施について、一部又は全部を登録支援機関に委託することができます。その場合は、登録支援機関と委託契約を結ぶ必要があります。 |
| STEP7 | 外国人に事前ガイダンスを行う ※労働条件、活動内容等について、対面又はZoom等で説明します。これも支援計画の1つであるため、登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が行います。 |
| STEP8 | 本国で「特定技能」の活動に関して必要な手続きを行う ※特定技能外国人として日本で働く際に、カンボジア、タイ、ベトナムの外国人については、本国で定める手続きをし、証明書等を受領しておく必要があります。 |
| STEP9 | 外国人に健康診断を受けてもらう ※健康状態が良好であることも審査基準の1つであるため、必ず受けてもらう必要があります。健康診断個人票に掲げられている項目が網羅されているものであれば、異なる様式の健康診断書を入管に提出しても問題ありません。 |
| STEP10 | 外国人が関連職種・作業の技能実習2号を修了(在留期間満了3ヶ月前) ※技能実習期間を2年10ヶ月修了していることが必須条件です。 |
| STEP11 | 特定技能1号ビザの在留資格変更許可申請をする ※建設特定技能受入計画が認定される前に申請できます。審査に2ヶ月程度かかります。申請書類が大量にありますので、書類作成や代行申請は行政書士に依頼されることをおすすめします。 |
| STEP12 | 許可後に、就労開始! ※受入開始後1ヶ月以内に、国土交通省に1号特定技能外国人の受入れ報告が必要です。 |
ここまで、特定技能外国人を雇うまでの要件や流れ等について紹介してきましたが、雇った後も特定技能特有の手続きが必要となります。以下、主要なものをご紹介します。
1と2については、登録支援機関に相談しながら、手続きを行ってください。3については、行政書士に依頼されることをおすすめします。
すべてオンラインで報告を行います。
特定技能(建設分野)制度を活用すれば、人手不足の解消に大きく役立ちます。
一方で、申請書類の作成や支援体制の整備等、専門的な知識が求められる手続きも多くあります。特に建設分野は、他の産業分野に比べて登録・提出書類が多く、準備に時間を要します。手続きを誤ると、審査の遅れや内定者の辞退等、思わぬトラブルにつながるおそれもあります。
だからこそ、外国人材の受け入れは専門家と一緒に進めることが安心で確実です。専門家のサポートを受けることで、制度を正しく理解しながらスムーズに人材を迎え入れることができ、本業にも専念できます。
当事務所では、特定技能制度の活用を検討する企業様に対し、受入要件の確認から申請書類の作成・申請までをトータルでサポートしています。外国人雇用を安心して進めたい企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で入管業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆様を支援しています。
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