運営:かざはな行政書士事務所
投稿日:2025年7月7日
世界中で、高度人材(研究者・エンジニア・経営者等)を獲得する競争が激しくなる中、従来の日本の在留資格制度では、高度人材に日本が選ばれない傾向にありました。そこで日本は、優秀な外国人材を日本に呼び込み、定着してもらうことで、日本の経済や技術革新を促進しようと考え、2015年4月に高度専門職ビザを在留資格として創設しました。
高度専門職ビザには、1号と2号がありますが、この記事では、高度専門職1号ビザとは、どのようなビザなのか、メリットはあるのか等について詳しく解説します。
なお、2号についてお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。
まず高度専門職ビザとは、簡単に言うと、学歴、職歴、年収等で高いスキルを持つ外国人に対して、特別な優遇を与えるビザです。日本での活動をしやすくすることで、優秀な人材を日本に呼び込むことを目的としています。そして、後程説明しますが、このビザを取得するためには、高度人材ポイント計算表で70点以上を獲得する必要があります。
高度専門職1号ビザは、海外に住んでいる外国人が、日本に入国する際に取得することもできますし、すでに別のビザで日本に在留している外国人が、高度専門職1号ビザに変更することもできます。
また高度専門職1号ビザには、3つのタイプがあり、このタイプごとに個々の在留資格として扱われます。なお、この3つのタイプは、いずれも申請時に届け出た勤務先において主活動をすることに対して認められるものですので、その勤務先以外で同様の主活動を行う場合(転職した場合)は、在留資格変更許可申請が必要になります(勤務先によって、ポイントが加算されることがあるため)。
このタイプは、相当程度の研究実績がある研究者、科学者、大学教授等が研究・教授活動に従事する場合を想定しています。主活動として、教授ビザ、研究ビザ、教育ビザ等に相当する活動が想定されていますが、教授ビザや教育ビザが学校等の教育現場に限られているのに対し、このタイプは、民間企業の社内研修等で教育を行う場合も対象となります。
また、高度学術研究活動を主活動として行う限りは、資格外活動許可を受けることなく、関連事業の経営活動や他の機関での研究等の活動を併せて行うことが認められます。例えば、主活動の研究の成果や知識、技術を活かして、ベンチャー企業を経営する等の活動は認められるでしょう。ただし、関連する事業である必要がありますし、事業の管理に従事する活動は含まれませんので、注意してください。もちろん、主活動を行わず、付帯的な活動のみを行うことも認められません。
このタイプは、医師、弁護士、情報通信分野等の高度な専門資格を有する技術者等が専門的な就労活動に従事する場合を想定しています。主活動として、技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)、企業内転勤ビザ、経営・管理ビザ、法律・会計業務ビザ、医療ビザ等に相当する活動が想定されています。
また、高度専門・技術活動を主活動として行う限りは、資格外活動許可を受けることなく、関連事業の経営活動を併せて行うことが認められます。例えば、専門知識を活かして、研修会社を経営する等の活動は認められるでしょう。ただし、関連する事業である必要がありますし、事業の管理に従事する活動は含まれませんので、注意してください。もちろん、主活動を行わず、付帯的な活動のみを行うことも認められません。
このタイプは、企業の経営者、管理者等の上級幹部社員が当該企業の経営・管理活動に従事する場合を想定しています。主活動として、経営・管理ビザ、法律・会計業務ビザ等に相当する活動が想定されています。
このタイプで注意しないといけないのは、たとえポイント計算で70点以上獲得しているとしても、経営しようとする会社の財務状況が悪い場合は、許可されない可能性があるということです。主活動が安定的かつ継続的に行われるかどうかをチェックされます。
また、高度経営・管理活動を主活動として行う限りは、資格外活動許可を受けることなく、関連事業の経営活動を併せて行うことが認められます。例えば、同業他社の社外取締役を兼務する等の活動は認められるでしょう。ただし、関連する事業である必要がありますし、事業の管理に従事する活動は含まれませんので、注意してください。もちろん、主活動を行わず、付帯的な活動のみを行うことも認められません。
先ほど説明したとおり、高度専門職ビザを取得するためには、高度人材ポイント計算表で70点以上を獲得する必要があります。項目としては、学歴、職歴、年収、年齢、研究実績、資格等があります。
ポイント計算は、タイプにより同じ項目でもポイントが異なったり、あるいは項目の内容が変わったりしますので、3つのタイプのどれに該当するか確認して、該当の計算シートで計算してみましょう。また、3つのタイプの主活動は、重複することがあり得るため、その場合は、該当すると思われるタイプそれぞれでポイントを計算し、申請者にとって有利な方を選択することになります。
詳しくは入管のHPもご覧ください。
高度専門職1号ビザは、高度人材ポイント計算表で70点以上を獲得し、その根拠となる資料も併せて提出する必要があることから、他の就労ビザに比べて、申請のハードルが高いです。
その一方で、このビザを取得すれば、様々な優遇措置を受けることができるという大きなメリットがあります。
先ほどの3つのタイプでも説明したとおり、主活動に加えて、関連する事業を経営する活動を行う等、複数の在留資格にまたがるような活動を行うことができます。これは、他の就労ビザでは認められていません。
他の就労ビザですと、最初の申請時は、大体1年の在留期間を与えられることが多いですが、高度専門職1号ビザについては、最初の申請でどのタイプであっても、一律5年の在留期間を与えられます。
永住申請には、原則として、引き続き日本に10年以上在留していることが必要ですが、高度専門職1号ビザを持っている場合、ポイントが70点以上ある人は3年以上、ポイントが80点以上ある人は1年以上、日本に在留していれば、永住申請することができます。ただし、永住ビザを取得することで、高度専門職ビザの優遇措置を受けられなくなる部分もありますので、その点については、状況に応じて検討する必要があります。永住ビザのメリット・デメリットについてはこちらをご覧ください。
就労ビザの配偶者に与えられるビザは、その多くが家族滞在ビザ(被扶養者であることが前提のビザなので、資格外活動許可を得て、週28時間以内のアルバイトしかできません)で、一定の学歴・職歴等の要件を満たした配偶者のみ、技人国ビザ等を取得することができます。一方、高度専門職1号ビザの配偶者については、学歴・職歴等の要件を満たさなくても、研究ビザ、教育ビザ、技人国ビザ、興行ビザに該当する活動を行うことができます(特定活動(告示33号))。
ただし、この特定活動ビザが許可されるには、高度専門職1号ビザの外国人と同居し、かつ日本人と同等額以上の報酬を得ることが条件です。
もし高度専門職1号ビザの外国人と別居した場合は、許可された就労活動を行うことはできません(行った場合、違法な資格外活動となり、退去強制の対象となる可能性があります)。なぜなら、この特定活動ビザは、高度専門職外国人の配偶者という身分関係を前提として、許可されるものだからです。
就労ビザの外国人の親の呼び寄せは、ほとんど認められていません(一部、例外はあります)。ですが、高度専門職1号ビザを持っている場合、以下のいずれかの状況であれば、一定の要件の下、親の呼び寄せ(帯同)が可能です。
上記いずれかの状況において、以下の要件をいずれも満たせば、親を本国から呼ぶことができます(特定活動(告示34号))。
なお、養育していた子どもが7歳に達した場合、引き続き在留することはできません。7歳の誕生日を迎えたら、すぐに在留資格が取り消されるわけではありませんが、在留期間中に帰国の準備をする必要があります。
一定の要件を満たせば、家事使用人を雇用することができます。雇用する形態としては、①入国帯同型(特定活動(告示2号の2))、②家庭事情型(特定活動(告示2号))、③高度金融人材優遇型(特定活動(告示2号の3))があります。
まず①入国帯同型の要件について、紹介します。
次に②家庭事情型の要件について、紹介します。
最後に③高度金融人材優遇型の要件について、紹介します。
就労ビザの審査には、通常3か月程度かかりますが、高度専門職1号ビザについては、優先的に審査されるため、入国事前審査については、申請を受け付けてから10日程度、在留審査については、申請を受け付けてから5日程度とされています。しかし、必要書類が不足している場合や申請内容に疑義がある場合は、1か月ほどかかることもあります。
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。
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