技術・人文知識・国際業務ビザについて

投稿日:2025年6月16日

留学生が、日本の企業に就職することとなった場合、働き始めるまでに、留学ビザから就労ビザに変更する必要があります。留学生が変更する就労ビザの中で、最も多い就労ビザは、技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)です。

この記事では、技人国ビザとはどのようなビザか、また留学ビザから技人国ビザに変更申請する際にどのような書類が必要かについて解説します。

1.技人国ビザとは

技人国ビザとは、簡単に言うと、大学等や実務経験で学んだことを活かして、企業で専門知識や技術を必要とする仕事を行うことを目的としたビザですので、このビザの活動内容に、現場労働や単純作業は含まれていません。よって就職先の主な仕事内容が現場労働や単純作業ですと、このビザは取得できません

次に、技人国ビザの対象となる分野は、大きく分けて次の3つです。

(1)理学や工学等の自然科学分野(技術)

この分野での就労は、自然科学に基づく専門知識と技術が求められます(いわゆる理系の知識や技術です)。
主にIT・機械・電気電子・建築等の領域で活躍できる人材が対象です。
具体的な職種の例としては、以下のとおりです。

  • 機械工学技術者
  • システムエンジニア
  • プログラマー
  • CADオペレーター
  • 電気電子技術者
  • 研究開発者
  • 生産管理技術者
  • 品質管理技術者
(2)法律学や経済学等の人文科学分野(人文知識)

この分野での就労は、社会科学的な専門知識が求められます(いわゆる文系の知識です)。
主に法律、経済、経営の業界で活躍できる人材が対象です。
具体的な職種の例としては、以下のとおりです。

  • 経営コンサルタント
  • 財務アナリスト
  • 人事マネージャー
  • 法務担当者
  • マーケティング専門職
  • 広報担当者
  • 商品開発担当者
  • 知的財産管理者
(3)外国文化に基づく業務(国際業務)

この分野での就労は、外国の文化や言語に関する理解と専門知識が求められます。
母国の文化や言語を活用しながら、日本企業のグローバル展開をサポートできる人材が対象です。
具体的な職種の例としては、以下のとおりです。

  • 通訳者
  • 翻訳者
  • 語学講師
  • 海外の感性を活かしたデザイン作成
  • 海外営業担当者
  • インバウンド営業担当者
  • 外国人観光客対応専門職

2.技人国ビザの申請要件について

技人国ビザは上記の分野のいずれかに該当すれば、必ず許可されるというものではありません。次の4つの要件も満たす必要があります。

ちなみに、留学ビザで日本に在留している時の在留状況も審査されますので注意してください。例えば、資格外活動で週28時間を超えてアルバイトしていないか、学校にはちゃんと行っていたか、交通違反等の法律違反をしていないか等がチェックされます。

(1)学歴(職歴)と仕事内容の関連性があること

外国人の学歴又は職歴と仕事内容とが、関連している必要があります
例えば、情報工学を専攻した人がシステムエンジニアとして働く場合や、経済学を学んだ人が財務部門で働く場合には、関連性が認められるでしょう。
ただし、大学等の専攻科目と仕事内容が一致していることまでは必要ではなく、関連していればよいため、その判断は、大学等で学んだ科目等を確認して行われます(専修学校卒業者の場合は、高い関連性が求められます)。
また、専攻科目と仕事内容に直接的な関連性が無い場合でも、十分な実務経験と証明があれば、要件を満たせる可能性があります。なお、関連性の判断が難しい場合は、仕事内容の詳細情報や必要とされる専門知識に関する具体的な資料の提出が必要です。

なお、2024年2月末からの新制度により、専門職大学(短期大学含む)の卒業生に関しても、業務内容との関連性について、大学の卒業生と同様に柔軟な判断が行われるようになりました。これにより、専門職大学の卒業生も従来より幅広い分野で就労できることとなりました。

(2)一定の学歴(職歴)があること

学歴要件としては、大学を卒業していること、または日本の専修学校を卒業していることが求められます。
海外の大学を卒業している場合は、学歴が日本の大学卒業と同等以上か証明する必要があります。

なお、学歴要件を満たさない場合でも、技術・人文知識分野では10年以上、国際業務分野では3年以上の実務経験があれば申請できます

(3)就職先の経営状況

外国人の安定した雇用を保証する観点から、就職先の企業の経営状況はしっかりチェックされます。
企業には適切な事業実績と健全な財務状況が求められ、債務超過が有る場合は、改善に向けた具体的な計画等、追加の書類が求められます。
また、企業の規模に応じた適切な雇用体制が整っているかも審査の判断材料です。例えば、売上高や従業員数に対して適正な人数の外国人を雇用しているか、適切な労働環境が整備されているか等を審査されます。

新規設立の企業に就職する場合でも、申請は可能ですが、事業計画や資金計画の提出が求められます。
審査で重視されるのは、事業の継続性や安定性です。

(4)日本人と給与水準が同等以上であること

給与水準に関する要件は、日本人従業員と同等以上の待遇の確保です。外国人労働者の権利を保護し、適正な労働条件を確保するために設けられた基準です。
具体的には、同じ仕事をする日本人従業員の給与水準と比較して、同等又はそれ以上の給与が支払われる必要があります。基本給だけでなく、各種手当や賞与なども含めた総支給額で判断しなければいけません。
また、採用時の給与水準だけでなく、昇給や昇格の機会も、日本人従業員と同等の条件が求められます。新卒採用の場合は、同期入社の日本人従業員との給与比較が厳密に行われるのが一般的です。
給与水準が基準を下回る場合は、理由を合理的に説明する必要があります。説明が不十分だと、許可されない可能性が高まるでしょう。

3.技人国ビザ申請のための提出書類

最後に、留学ビザから技人国ビザへの申請に必要な提出書類をご紹介します。なお、企業の規模により、求められる提出書類が異なりますので、それぞれご紹介します。(申請者や企業の状況によって、以下にご紹介した書類以外のものを求められることもありますので、ご注意ください。)

(1)就職先の企業がカテゴリー1の場合

カテゴリー1とは、いわゆる上場企業や日本又は外国の地方公共団体、独立行政法人等です。就職先がカテゴリー1に属する場合、求められる提出書類は少ないです。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • パスポート(原本提示)
  • 在留カード(原本提示)
  • 専門士又は高度専門士取得の証明書(専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された場合のみ)
  • 四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書の写し等
(2)就職先の企業がカテゴリー2の場合

カテゴリー2とは、いわゆる未上場の大企業です。就職先がカテゴリー2に属する場合も、求められる提出書類は少ないです。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • パスポート(原本提示)
  • 在留カード(原本提示)
  • 専門士又は高度専門士取得の証明書(専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された場合のみ)
  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(源泉徴収税額が1,000万円以上であること)
(3)就職先の企業がカテゴリー3の場合

カテゴリー3とは、いわゆる中小企業が該当します。就職先がカテゴリー3に属する場合は、求められる提出書類が増えます。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • パスポート(原本提示)
  • 在留カード(原本提示)
  • 専門士又は高度専門士取得の証明書(専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された場合のみ)
  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(源泉徴収税額が1,000万円未満)
  • 申請理由書又は雇用理由書
  • 履歴書
  • 卒業証明書
  • 成績証明書
  • 日本語能力を証明する書類(ある場合のみ)
  • 資格の合格証の写し(仕事内容に関連するものである場合のみ)
  • 雇用契約書や内定通知書の写し等の労働条件が記載された文書
  • 法人登記事項証明書
  • 会社案内(沿革、役員、組織、事業内容、取引先、取引実績等が記載されたもの)
  • 直近年度の決算書の写し
  • 定款の写し
(4)就職先の企業がカテゴリー4の場合

カテゴリー4とは、カテゴリー1~3のいずれにも該当しない、新設会社が該当します。就職先がカテゴリー4に属する場合は、求められる提出書類が最も多いです。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • パスポート(原本提示)
  • 在留カード(原本提示)
  • 専門士又は高度専門士取得の証明書(専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された場合のみ)
  • 申請理由書又は雇用理由書
  • 履歴書
  • 卒業証明書
  • 成績証明書
  • 日本語能力を証明する書類(ある場合のみ)
  • 資格の合格証の写し(仕事内容に関連するものである場合のみ)
  • 雇用契約書や内定通知書の写し等の労働条件が記載された文書
  • 事業計画書
  • 法人登記事項証明書
  • 給与支払事務所等の開設届書の写し(受付印のあるもの)
  • 直近3か月の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるもの)の写し等
  • オフィスの建物賃貸借契約書の写し(不動産を所有している場合は、登記事項証明書)
  • 会社の写真(外観、入口、オフィス内部等)
  • 会社案内(沿革、役員、組織、事業内容、取引先、取引実績等が記載されたもの)
  • 直近年度の決算書の写し
  • 定款の写し
この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

お気軽にお問合せ・ご相談ください

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
082-495-5550
受付時間
10:00~18:00
定休日
土曜・日曜・祝日(予約対応可)

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

082-495-5550

<受付時間>
10:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

新着情報・お知らせ

2025/07/14
就労ビザ申請のお役立ち情報を追加しました
2025/07/08
就労ビザ申請のお役立ち情報を追加しました
2025/07/07
就労ビザ申請のお役立ち情報を追加しました

かざはな行政書士事務所

住所

〒739-0041 広島県東広島市西条町寺家

受付時間

10:00~18:00

定休日

土曜・日曜・祝日(予約対応可)