企業内転勤ビザについて

投稿日:2025年6月24日

経済のグローバル化と企業活動の国際展開が進む中、外国の会社で育成された人材を日本の会社に一時的に転勤させるケースが増えてきました。このような海外人材の受け入れを円滑にするために設けられた在留資格が、企業内転勤ビザです。
企業内転勤ビザは、技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)で認められている活動内容を行うことを基本とし、それに加えていくつかの要件を満たす必要があります。

この記事では、技人国ビザとの違いを押さえながら、企業内転勤ビザの申請要件や申請に必要な書類について解説します。

1.企業内転勤ビザとは

企業内転勤ビザとは、簡単に言うと、外国の会社に勤めている社員が、日本の関連会社や支店に転勤し、一定期間、専門的な知識や技術を活かして働くためのビザです。
このビザには、外国の会社と日本の会社の関係性、期間、活動内容、就労場所について、条件がありますので、詳しく見ていきましょう。

(1)外国の会社と日本の会社の関係性について

企業内転勤ビザは、転勤元の会社と転勤先の会社に一定の関係(資本関係等)が求められます。単なる業務提携関係にある会社同士では該当しません。企業内転勤ビザが認められる関係性は次のとおりです。

  1. 本店(本社)⇔支店(支社、営業所)
  2. 親会社⇔子会社、親会社⇔孫会社(みなし子会社)、子会社⇔孫会社、孫会社⇔曾孫会社(孫会社の子会社である時のみ)、親会社⇔曾孫会社(親会社が孫会社、曾孫会社まで一貫して100%出資している場合のみ)
  3. 子会社⇔子会社、孫会社⇔孫会社
  4. 親会社⇔関連会社、子会社⇔子会社の関連会社

なお、企業内転勤ビザが認められ、日本の会社で働いている時に、親会社と子会社の資本関係等が無くなった場合で、引き続き同じ会社で働きたいと思われる時は、技人国ビザか特定活動ビザ(告示外)等への在留資格変更が必要となります。

(2)期間について

企業内転勤ビザは、日本の会社での勤務が一定期間に限られている在留資格です。よって、申請書の期間の欄に「未定」と記載した場合は、不許可となる可能性があります。期間を定めずに転勤する場合は、技人国ビザの対象となりますので、ご注意ください。
とは言え、転勤期間の延長による企業内転勤ビザの在留期間更新申請は可能ですし、実は企業内転勤ビザからの永住申請も可能です。

(3)活動内容等について

企業内転勤ビザで行うことができる活動は、技人国ビザで認められている活動です。詳しくはこちらをご覧ください。
一方、技人国ビザと異なる点は、技人国ビザは会社との契約について、雇用、委任、委託、嘱託等、様々な契約関係が可能ですが、企業内転勤ビザは、同一法人内(又は関係する法人内)の「転勤」であるため、雇用契約関係に限られます。なお、同一法人内の転勤であっても、異なる法人への出向であっても、転勤先(出向先)の会社と新たに契約を締結することは不要です。

(4)就労場所について

企業内転勤ビザは、就労場所を限定して認められるビザです。よって、在留中に、別の事業所に異動して勤務することは、原則として認められず、違法な資格外活動として不法就労となります。ただし、次の場合は、例外として認められています。

  1. 事業所の変更に該当しないとされる場合
    例えば、場所的に離れた場所に移る場合であっても、異動元と異動先が、人事、経営管理上それぞれ独立の事業所であるとまで言えない時、出張のように籍を移さずに一時的に赴く時、異動先の場所が随時のもので一定期間以上の継続性が無い時等が挙げられます。
  2. 転勤元の会社の命令によって、日本のグループ会社内の別の会社へ転勤する場合
    帰国することなく、直接異動するものであっても、実質的に、転勤元の会社から転勤する場合と変わらないと捉えられるためです。
    ※転勤元の会社が関与することなく、転勤先の会社が単独で別の会社に転勤することを決めた場合は当然に認められません。

上記2のように、もし転勤元の会社の命令により、企業内転勤ビザを持つ人が、日本のグループ会社内の別の会社に転勤する場合、まずは本人が入管に「活動機関からの離脱と移籍の届出」を14日以内に提出する必要があります。その上で、次の書類を提出して、就労資格証明書交付申請を行うことが望ましいです。(不法就労でないことのお墨付きを入管からもらっておくと安心です)

  • 組織図(出資比率等が示され、転勤元の会社と新しい転勤先の会社との関係が明らかとなるもの)
  • 転勤元の会社が発行する辞令等の写し
  • 新しい転勤先の会社による説明書(転勤元の会社の命令によって転勤するものであり、転勤元の会社と新しい転勤先の会社が同一グループ内であることを説明するもの)

なお、日本の別の会社(関係性の無い会社)に転職しようとする場合は、企業内転勤ビザに該当しなくなりますので、技人国ビザ等、別の在留資格に変更する手続きが必要となります

2.企業内転勤ビザの申請要件について

これまで見てきたように、企業内転勤ビザは、技人国ビザと共通している部分もあれば、特有の部分もあります。そして、申請要件についても、2つのビザに共通する部分もあれば、異なる部分もあります。詳しく見ていきましょう。

(1)学歴や職歴は求められない

技人国ビザに求められる学歴要件や職歴要件が、企業内転勤ビザでは求められません。これは大きな違いと言えます。ただし、企業内転勤ビザでも、大卒等の学歴や実務経験がある方が、活動に偽りが無いかどうかや在留資格に該当するかどうかといったポイントを審査される時に、有利に判断されやすいようです。

(2)外国の会社等で1年以上勤務した経験がある

企業内転勤ビザでは、転勤の直前に、外国のグループ会社で1年以上継続して勤務していることが求められます。ただし、一か所の外国の会社で1年以上である必要は無く、グループ会社の中の複数の会社や支店での勤務実績を合算して1年以上になれば認められます。
また、日本で企業内転勤ビザを持って、日本のグループ会社に勤務していた期間も、この1年以上の期間に合算してよいということになりました。これは、ある仕事を任されて日本に企業内転勤ビザを持って在留していた人が、一度帰国した後にまた新たな仕事を任されて、数か月後に日本への転勤が望まれるようなケースにも対応できるようにするためです。

(3)会社の実態や信頼性があること

企業内転勤ビザでも、会社の実態や信頼性はチェックされます。
財務状況は、一つの判断材料でありますが、赤字が続いている場合や、明らかに事業が成り立っていないと判断されると、「受け入れ先として不適格」とされる可能性があります。
新設会社や新規事業を行う会社に転勤する場合でも、申請は可能ですが、事業計画等の提出が求められます。

(4)日本人と給与水準が同等以上であること

給与水準に関する要件は、技人国ビザと同様に、日本人従業員と同等以上の待遇の確保です。外国人労働者の権利を保護し、適正な労働条件を確保するために設けられた基準です。
具体的には、同じ仕事をする日本人従業員の給与水準と比較して、同等又はそれ以上の給与が支払われる必要があります。基本給だけでなく、各種手当や賞与なども含めた総支給額で判断しなければいけません。
また、採用時の給与水準だけでなく、昇給や昇格の機会も、日本人従業員と同等の条件が求められます
給与水準が基準を下回る場合は、理由を合理的に説明する必要があります。説明が不十分だと、許可されない可能性が高まるでしょう。
なお、企業内転勤ビザの場合、給与の支払主体は、転勤元の会社でも転勤先の会社でも、どちらでもよいです。また、転勤元の会社が支払っている給与に加えて、転勤先の会社が日本の物価等を考慮して、滞在費を補完して支払ってもよいとされています。日本人が従事する場合に受ける給与と同等以上であることが重要です。

3.企業内転勤ビザ申請のための提出書類

最後に、企業内転勤ビザの申請(海外からの呼び寄せ)に必要な提出書類をご紹介します。なお、会社の規模により、求められる提出書類が異なりますので、それぞれご紹介します。(申請者や会社の状況によって、以下にご紹介した書類以外のものを求められることもありますので、ご注意ください。)

(1)転勤先の会社がカテゴリー1の場合

カテゴリー1とは、いわゆる上場企業や日本又は外国の地方公共団体、独立行政法人等です。転勤先がカテゴリー1に属する場合、求められる提出書類は少ないです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 460円切手を貼った返信用封筒(宛名記入)
  • パスポートの写し
  • 四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書の写し等
(2)転勤先の会社がカテゴリー2の場合

カテゴリー2とは、いわゆる未上場の大企業です。転勤先がカテゴリー2に属する場合も、求められる提出書類は少ないです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 460円切手を貼った返信用封筒(宛名記入)
  • パスポートの写し
  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(源泉徴収税額が1,000万円以上であること)
(3)転勤先の会社がカテゴリー3の場合

カテゴリー3とは、いわゆる中小企業が該当します。転勤先がカテゴリー3に属する場合は、求められる提出書類が増えます。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 460円切手を貼った返信用封筒(宛名記入)
  • パスポートの写し
  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(源泉徴収税額が1,000万円未満)
  • 雇用理由書
  • 辞令の写し等
  • 外国法人の支店の登記事項証明書等当該法人が日本に事業所を有することを明らかにする資料等
  • 関連する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書
  • 過去1年間に従事した業務内容及び地位、報酬を明示した転勤の直前に勤務した外国の機関等の文書
  • 法人登記事項証明書
  • 会社案内(沿革、役員、組織、事業内容、取引先、取引実績等が記載されたもの)
  • 直近年度の決算書の写し
  • 定款の写し
(4)転勤先の会社がカテゴリー4の場合

カテゴリー4とは、カテゴリー1~3のいずれにも該当しない、新設会社が該当します。転勤先がカテゴリー4に属する場合は、求められる提出書類が最も多いです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 460円切手を貼った返信用封筒(宛名記入)
  • パスポートの写し
  • 雇用理由書
  • 辞令の写し等
  • 外国法人の支店の登記事項証明書等当該法人が日本に事業所を有することを明らかにする資料等
  • 関連する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書
  • 過去1年間に従事した業務内容及び地位、報酬を明示した転勤の直前に勤務した外国の機関等の文書
  • 法人登記事項証明書
  • 会社案内(沿革、役員、組織、事業内容、取引先、取引実績等が記載されたもの)
  • 直近年度の決算書の写し
  • 定款の写し
  • 事業計画書
  • 給与支払事務所等の開設届書の写し(受付印のあるもの)
  • 直近3か月の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるもの)の写し等
  • オフィスの建物賃貸借契約書の写し(不動産を所有している場合は、登記事項証明書)
  • 会社の写真(外観、入口、オフィス内部等)
この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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