投稿日:2025年11月20日
特定技能で働く外国人が転職を希望する場合、他の就労ビザと比べて制限や手続きが多いのが特徴です。
「旧受入れ企業」「特定技能外国人本人」「新受入れ企業」の三者が、それぞれ届出や必要書類を準備しなければならず、1つでも提出を怠ると、後で過料や刑事罰等の対象となることもあります。
この記事では、特定技能の転職が大変な理由とともに、各関係者が提出しなければならない必要書類、そして転職が可能な分野の例示までわかりやすく解説します。
特定技能外国人が他の就労ビザと比べて転職が大変な理由は、主に以下の3つが挙げられます。
特定技能制度には、1号と2号があり、2号の場合は、在留期間の更新について制限はありませんが、1号の場合、通算在留期間は5年までとなっています(詳しくはこちら)。
つまり、残りの在留期間を考慮して転職しないと、せっかく様々な手続きを済ませて転職したのに、少しの期間しか働けないということになります。転職を考える1号特定技能外国人の方は、残りの在留期間を意識して転職活動を行う必要があります。
また、もし転職のための在留資格変更許可申請中に、今の受入れ企業を辞めてしまった場合は、他社で働くことができません(アルバイトも不可)。パスポートに貼られた指定書に記載されている企業、分野、業務区分でしか働けないためです。そのため、在留資格変更許可が下りるタイミングを想定して、今の受入れ企業の退職日を調整するか、十分な貯金を確保しておく必要があります。
特定技能外国人が働ける産業分野は決まっており、自由にどの業界でも働けるわけではありません。
まず、1号特定技能外国人が働けるのは16分野です。介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、鉄道、自動車運送業、林業、木材産業に限られます。そして、2号特定技能外国人については、さらに範囲が狭くなり、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の11分野のみです(2025年11月時点)。
そのため、例えば介護分野で働いていた特定技能外国人が、特定技能ビザのままで転職してコンビニやスーパー等の小売店で働くことはできません。小売業は特定産業分野に含まれていないからです。
さらに、同じ特定産業分野であっても、従事できるのは「認められた業務区分」だけです。特に技能評価試験に合格して特定技能外国人になった場合、原則として同じ産業の同じ業務区分内でしか転職できません。
例えば、工業製品製造業で「機械金属加工」の試験に合格して働いていた人は、同じ産業内であっても「縫製」業務に転職することはできません。「縫製」業務への転職を希望する場合は、「縫製」の技能評価試験に合格し直す必要があります。
これに対して、技能実習2号を良好に修了して特定技能へ移行した人は、少し柔軟に転職できます。実習していた職種・作業と関連性が認められれば、産業分野が異なっていても転職できる場合があるからです。
例えば、技能実習で「鋳造」を修了した人は、工業製品製造業の「機械金属加工」から、造船・舶用工業の「船用機械」へ転職することが可能です。
とは言っても、他の就労ビザと比べると、特定技能外国人の転職では産業分野や業務区分の制限があるため、ハードルは高めと言えるでしょう。
企業が特定技能外国人を受け入れるためには、クリアしないといけない条件が主に5つあります。これは、転職先の企業にも求められる条件です。
つまり、新受入れ企業に上記の条件を満たしてもらう必要があります。そのうえで、特定技能外国人が在留資格変更許可申請の手続きをする際に、多くの書類を準備してもらう等、新受入れ企業の協力が必要不可欠となります。そのため、他の就労ビザでの転職よりも企業側の準備が多く、負担感も大きいと言えます。
それでは具体的に、特定技能外国人が自己都合で転職する場合の「旧受入れ企業」「特定技能外国人本人」「新受入れ企業」の三者が行わなければならない手続きについて、見ていきましょう。
旧受入れ企業が行わなければならない手続きは次の3つです。
1については、特定技能雇用契約が終了した日から14日以内に、旧受入れ企業の住所(雇用する特定技能外国人の指定書に記載の住所)を管轄する入管に書面を提出するか、入管の電子届出システムを利用して届出を行わなければなりません。なお、登録支援機関と委託契約を結んでいたとしても、この届出は登録支援機関に委託することはできませんので、受入れ企業が必ず責任を持って届け出てください。なお、行政書士に委託することは可能です。
2については、雇用保険被保険者の外国人の場合は、離職の翌日から起算して10日以内に、雇用保険被保険者ではない外国人の場合は、離職した翌月の末日までに、旧受入れ企業の住所を管轄するハローワークに書面を提出するか、外国人雇用状況届出システムを利用して届出を行わなければなりません。
特定技能外国人本人が行わなければならない手続きは次の2つです。
1については、「会社を辞めた」、「新しい会社に入社した」等の届出事由の発生日から14日以内に提出してください。
提出先は、書面を特定技能外国人の住所地を管轄する地方入管の窓口に提出するか、以下の住所に郵送で提出するか、電子届出システムで届け出ることも可能です。郵送の場合は、在留カードのコピーを同封してください。
郵送先:〒160-0004
東京都新宿区四谷1丁目6番1号四谷タワー14階
東京出入国在留管理局 在留調査部門 届出受付担当
2については、新受入れ先企業と協力して必要書類を整え、速やかに入管に提出しましょう。審査に3ヶ月程度かかるため、雇用契約期間の開始日は、余裕を持った日程に設定しておくとよいでしょう。また、作成書類や添付書類が多く、内容も難しいため、手続きをスムーズに進めたい方は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。
新受入れ企業が行わなければならない手続きは次の1つです。
雇用保険被保険者の外国人の場合は、雇入れの翌月10日までに、雇用保険被保険者ではない外国人の場合は、雇入れた翌月の末日までに、新受入れ企業の住所を管轄するハローワークに書面を提出するか、外国人雇用状況届出システムを利用して届出を行わなければなりません。
1つの手続きだけを見ると「意外と簡単そう」と感じるかもしれませんが、これは転職後の仕上げにあたる手続きです。その前に、特定技能外国人を受け入れるための体制づくりや、在留資格変更許可申請への積極的な協力等、押さえておくべき準備がいくつもありますので、あらかじめ意識しておくとよいでしょう。
特定技能外国人の転職には、多くの準備や手続きが必要で、受け入れる企業側にも一定の協力や体制づくりが求められます。特に、産業分野や業務区分の制限、必要書類の多さ等、他の就労ビザにはない独自のハードルがあります。
とは言え、ポイントを押さえて進めれば決して難しいものではありません。転職前後の手続きの流れを理解して準備を進めることで、スムーズな転職が可能になります。
もし「手続きが合っているか不安」「書類の準備が難しい」といったお悩みがあれば、どうぞ当事務所へお気軽にご相談ください。スムーズな転職手続きのサポートをいたします。
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で入管業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆様を支援しています。
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