投稿日:2025年10月27日
 
 近年、鉄道業界では熟練技術者の高齢化や若手人材の不足が深刻化しており、安全で安定した運行を維持するための人材確保が大きな課題となっています。
 こうした状況を踏まえ、2024年に「鉄道分野」が特定技能制度の対象に追加され、外国人材の受け入れが可能になりました。この制度を活用すれば、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れることができ、現場の即戦力として活躍してもらうことができます。
この記事では、鉄道分野で特定技能外国人を雇用するための要件や基本的な流れ、注意点等を詳しく解説します。
日本の鉄道は、世界でも高い安全性と正確な運行管理で知られています。しかしその一方で、鉄道業界の現場では深刻な人手不足が続いています。特に、保守・点検や車両整備といった技術職では、長年働いてきた熟練技術者の高齢化が進み、若年層の担い手が減少しています。こうした状況により、鉄道の安全・安定運行を維持するための人材確保が喫緊の課題となっていました。
こうした背景を踏まえ、政府は2024年3月、鉄道分野を新たに特定技能制度の対象に追加することを決定しました。鉄道分野では、「軌道整備」「電気設備整備」「車両整備」「車両製造」「運輸係員」の5つの業務区分が対象とされ、2024年9月から受入れが本格的にスタートしています。
この制度の目的は、単に人手不足を補うだけでなく、鉄道インフラの維持管理に必要な技能を持つ外国人材を育成し、長期的に日本の交通基盤を支える体制を整えることにあります。鉄道は安全性・正確性が求められる公共交通機関であるため、外国人材に対しても一定の技能水準と日本語能力が求められ、試験制度を通じて適正な人材を確保する仕組みが導入されています。また、外国人材の受け入れを通じて、鉄道業界の国際化や多様な人材による新たな技術伝承の可能性も期待されています。特に、アジア諸国を中心に日本の鉄道技術に関心を持つ人材が多く、今後は「鉄道を学びに日本へ」という人の流れが生まれることも想定されています。
このように、鉄道分野が特定技能の対象となった背景には、「安全な鉄道運行を次世代に引き継ぐための人材確保」と「国際的な技術交流の促進」という2つの大きな目的があります。制度の導入によって、鉄道業界が安定した運行体制を維持しながら、将来にわたって持続可能な発展を目指すことが期待されています。
上記のほか、日本人が通常従事することとなる以下の関連業務に付随的に従事することも認められています。
なお、鉄道分野については、2号特定技能外国人(1号特定技能外国人として実務経験を経て、必要な試験に合格した熟練者)の受け入れはできません(2025年10月時点)。
外国人が鉄道分野で特定技能ビザを取得して働くためには、以下の要件を満たす必要があります。
3と4について、外国人がどのようなルートで1号特定技能外国人を目指しているかによって、求められる試験が異なります。以下、ご参照ください。
| 対象者 | 技能水準 | 日本語能力 | 
|---|---|---|
| 特定技能試験 | 日本語試験等 | |
| 関連職種・作業の技能実習2号を良好に修了した者 【技能実習2号ビザ】 | 免除 | 免除 | 
| 関連職種・作業以外の技能実習2号を良好に修了した者 【技能実習2号ビザ】 | 鉄道分野特定技能1号評価試験 | 免除 ※ただし、運輸係員の区分に従事する場合は、日本語能力試験N3以上の合格が必要。 | 
| 上記以外の者 | 鉄道分野特定技能1号評価試験 (軌道整備/電気設備整備/車両整備/車両製造/運輸係員) ※車両製造の区分については技能検定3級(機械加工/仕上げ/電子機器組立て/電気機器組立て/塗装)の合格でもよい。 | ■下記どちらかの試験合格 ※ただし、運輸係員の区分に従事する場合は、日本語能力試験N3以上の合格が必要。 | 
特定技能外国人を受け入れるためには、企業側も満たさなくてはいけない要件があります。
 全分野共通の要件と鉄道分野特有の要件に加えて、雇用形態・契約内容に関する要件や支援計画を作成することも求められていますので、併せて紹介します。
上記の中で、特に注意したいのが、2の非自発的離職者です。これは、会社都合で離職させた人のことを指しますが、退職勧奨や試用期間からの本採用拒否も該当しますので、気を付けてください。詳しくはこちらをご覧ください。
鉄道分野で特定技能外国人を雇用するためには、以下の要件も満たす必要があります。
この支援計画には、必ず行わなければならない義務的支援と行うことが望ましいとされる任意的支援に分けられますが、支援計画書に記載した場合は、任意的支援についても支援義務が生じます。そして、この支援義務を果たさない場合、欠格事由に該当することとなりますので、注意が必要です。
 なお、支援計画の項目は以下のとおりです(各項目に義務的支援と任意的支援が含まれています)。詳細はこちらをご覧ください。
これらの支援計画については、全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、事業所で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。
続いて、鉄道分野の特定技能外国人(日本に在留しており、関連職種・作業の技能実習2号を良好に修了予定の外国人)を雇用するためのおおまかな流れをご紹介します。手続きの数が非常に多く、時間もかかるため、登録支援機関や行政書士のサポートを受けながら、進められることをおすすめします。手続きがすべて完了するまでに4ヶ月程度かかります。
| STEP1 | 技能実習修了予定の外国人と雇用契約を結ぶ ※外国人の労働条件が適法であることが求められます。 | 
|---|---|
| STEP2 | 外国人の支援計画を策定する ※会社は、外国人が特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、この計画に基づいて支援を行わなければなりません。なお、この支援計画の実施について、一部又は全部を登録支援機関に委託することができます。その場合は、登録支援機関と委託契約を結ぶ必要があります。 | 
| STEP3 | 外国人に事前ガイダンスを行う ※労働条件、活動内容等について、対面又はZoom等で説明します。これも支援計画の1つであるため、登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が行います。 | 
| STEP4 | 鉄道分野特定技能協議会へ加入する ※在留資格変更申請前に加入する必要があります。 | 
| STEP5 | 本国で「特定技能」の活動に関して必要な手続きを行う ※特定技能外国人として日本で働く際に、カンボジア、タイ、ベトナムの外国人については、本国で定める手続きをし、証明書等を受領しておく必要があります。 | 
| STEP6 | 外国人に健康診断を受けてもらう ※健康状態が良好であることも審査基準の1つであるため、必ず受けてもらう必要があります。健康診断個人票に掲げられている項目が網羅されているものであれば、異なる様式の健康診断書を入管に提出しても問題ありません。 | 
| STEP7 | 外国人が関連職種・作業の技能実習2号を修了(在留期間満了3ヶ月前) ※技能実習期間を2年10ヶ月修了していることが必須条件です。 | 
| STEP8 | 特定技能1号ビザの在留資格変更許可申請をする ※審査に2ヶ月程度かかります。 | 
| STEP9 | 許可後に、就労開始! | 
ここまで、特定技能外国人を雇うまでの要件や流れ等について紹介してきましたが、雇った後も特定技能特有の手続きが必要となります。以下、主要なものをご紹介します。
1と2については、登録支援機関に相談しながら、手続きを行ってください。3については、行政書士に依頼されることをおすすめします。
鉄道分野における外国人材の受け入れは、現場の人手不足を補うだけでなく、安全運行を支える新しい力となることが期待されています。ですが、制度の理解や受入体制の整備には専門的な知識が欠かせません。
 申請手続きや支援計画の作成に不安がある場合は、特定技能に詳しい専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
当事務所では、特定技能制度の活用を検討する企業様に対し、受入れ要件の確認から申請書類の作成及び申請までをトータルでサポートしています。外国人雇用を安心して進めたい企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
 
 かざはな行政書士事務所
代表行政書士 
 佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
 前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
 その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
 2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
 ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。
 
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