投稿日:2025年10月6日
近年、食品工場等の製造現場では、人手不足が深刻な課題になっています。生産性向上のための取り組みとして、ロボット導入等の設備投資やIoT・AI等を活用した省人化・低コスト化を進めている工場も増えてきていますが、目視や手作業に頼らざるを得ない工程もあり、機械化による省力化には限界があります。
そのような中で注目されているのが、「特定技能(飲食料品製造業)」制度です。この制度を活用すれば、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れることができ、現場の即戦力として活躍してもらうことができます。
この記事では、特定技能(飲食料品製造業)で外国人を雇用するための要件・手続きの流れ・注意点をわかりやすくご紹介します。
飲食料品製造業が特定技能の対象となった背景には、深刻な人手不足があります。食品工場では、惣菜、弁当、パン、菓子、缶詰等、私たちの日常生活に欠かせない食品を生産しています。しかし、現場の仕事は立ち仕事が多く、気温が低い作業環境での単純作業も多いため、日本人労働者が集まりにくい状況が続いていました。
これまでも「技能実習制度」を通じて、外国人も働いていましたが、実習はあくまで「技能の移転」が目的であり、労働力としての受入れではありませんでした。そのため、実習を終えた外国人が引き続き日本で働くことはできず、現場では常に人手不足が続いていたのです。
こうした現状を踏まえて、政府は即戦力として働ける外国人を受け入れるための制度として、2019年4月に「特定技能制度」を新設しました。その中で、特に人手不足が深刻な分野の1つとして「飲食料品製造業分野」が対象に加えられました。この分野では、一定の技能試験と日本語試験を合格した外国人が、労働者として正規に雇用されることが可能です。また、技能実習2号を修了した外国人は、特定技能1号へスムーズに移行できる仕組みが整えられています。
上記のほか、日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することも認められています。
(関連業務例:原料の調達・受入れ、製品の納品、清掃、事業所の管理の作業)
ただし、総合スーパーマーケット及び食料品スーパーマーケットでは、関連業務としても販売業務に従事することはできませんので、注意してください。
また、2号特定技能外国人(1号特定技能外国人として実務経験を2年以上経て、特定技能2号評価試験に合格した人)については、上記に加えて、「飲食料品製造業全般に関する管理業務」も業務の1つとなります。そして、工場長等の事業所責任者が行う管理業務を補助することを前提で雇用することとなるため、役職等を命じ、業務に従事させる必要があります。
外国人が飲食料品製造業分野で特定技能ビザを取得して働くためには、以下の要件を満たす必要があります。
3と4について、外国人がどのようなルートで1号特定技能外国人を目指しているかによって、求められる試験が異なります。以下、ご参照ください。
| 対象者 | 技能水準 | 日本語能力 |
|---|---|---|
| 特定技能試験 | 日本語試験等 | |
| 関連職種・作業の技能実習2号を良好に修了した者 【技能実習2号ビザ】 | 免除 | 免除 |
| 関連職種・作業以外の技能実習2号を良好に修了した者 【技能実習2号ビザ】 | 飲食料品製造業1号技能測定試験 | 免除 |
| 上記以外の者 | 飲食料品製造業1号技能測定試験 | ■下記どちらかの試験合格 |
| 職種 | 作業 | 必要な合格証明書の写し |
|---|---|---|
| 缶詰巻締 | 缶詰巻締 | 缶詰巻締技能評価試験(専門級)の実技試験 |
| 食鳥処理加工業 | 食鳥処理加工 | 食鳥処理加工業技能評価試験(専門級)の実技試験 |
| 加熱性水産加工食品製造業 | 節類製造 加熱乾製品製造 調味加工品製造 くん製品製造 | 水産加工食品製造業技能評価試験(専門級)の実技試験 |
| 非加熱性水産加工食品製造業 | 塩蔵品製造 乾製品製造 発酵食品製造 調理加工品製造 生食用加工品製造 | 水産加工食品製造業技能評価試験(専門級)の実技試験 |
| 水産練り製品製造 | かまぼこ製品製造 | 水産練り製品製造の技能検定(3級)の実技試験 |
| 牛豚食肉処理加工業 | 牛豚部分肉製造 ※牛豚精肉商品製造は対象外(2025年10月時点) | 牛豚食肉処理加工業技能評価試験(専門級)の実技試験 |
| ハム・ソーセージ・ベーコン製造 | ハム・ソーセージ・ベーコン製造 | ハム・ソーセージ・ベーコン製造の技能検定(3級)の実技試験 |
| パン製造 | パン製造 | パン製造の技能検定(3級)の実技試験 |
| そう菜製造業 | そう菜加工 | そう菜製造業技能評価試験(専門級)の実技試験 |
| 農産物漬物製造業 | 農産物漬物製造 | 農産物漬物製造業技能評価試験(専門級)の実技試験 |
特定技能外国人を受け入れるためには、事業所側も満たさなくてはいけない要件があります。
全分野共通の要件と飲食料品製造業特有の要件に加えて、雇用形態・契約内容に関する要件や支援計画を作成することも求められていますので、併せて紹介します。
上記の中で、特に注意したいのが、2の非自発的離職者です。これは、会社都合で離職させた人のことを指しますが、退職勧奨や試用期間からの本採用拒否も該当しますので、気を付けてください。詳しくはこちらをご覧ください。
飲食料品製造業分野で特定技能外国人を雇用するためには、以下の要件も満たす必要があります。
この支援計画には、必ず行わなければならない義務的支援と行うことが望ましいとされる任意的支援に分けられますが、支援計画書に記載した場合は、任意的支援についても支援義務が生じます。そして、この支援義務を果たさない場合、欠格事由に該当することとなりますので、注意が必要です。
なお、支援計画の項目は以下のとおりです(各項目に義務的支援と任意的支援が含まれています)。詳細はこちらをご覧ください。
これらの支援計画については、全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、事業所で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。
続いて、飲食料品製造業分野の特定技能外国人(日本に在留しており、関連職種・作業の技能実習2号を良好に修了予定の外国人)を雇用するためのおおまかな流れをご紹介します。手続きの数が非常に多く、時間もかかるため、登録支援機関や行政書士のサポートを受けながら、進められることをおすすめします。手続きがすべて完了するまでに4ヶ月程度かかります。
| STEP1 | 技能実習修了予定の外国人と雇用契約を結ぶ ※外国人の労働条件が適法であることが求められます。 |
|---|---|
| STEP2 | 外国人の支援計画を策定する ※会社は、外国人が特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、この計画に基づいて支援を行わなければなりません。なお、この支援計画の実施について、一部又は全部を登録支援機関に委託することができます。その場合は、登録支援機関と委託契約を結ぶ必要があります。 |
| STEP3 | 外国人に事前ガイダンスを行う ※労働条件、活動内容等について、対面又はZoom等で説明します。これも支援計画の1つであるため、登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が行います。 |
| STEP4 | 食品産業特定技能協議会へ加入する ※在留資格変更申請前に加入する必要があります。 |
| STEP5 | 本国で「特定技能」の活動に関して必要な手続きを行う ※特定技能外国人として日本で働く際に、カンボジア、タイ、ベトナムの外国人については、本国で定める手続きをし、証明書等を受領しておく必要があります。 |
| STEP6 | 外国人に健康診断を受けてもらう ※健康状態が良好であることも審査基準の1つであるため、必ず受けてもらう必要があります。健康診断個人票に掲げられている項目が網羅されているものであれば、異なる様式の健康診断書を入管に提出しても問題ありません。 |
| STEP7 | 外国人が関連職種・作業の技能実習2号を修了(在留期間満了3ヶ月前) ※技能実習期間を2年10ヶ月修了していることが必須条件です。 |
| STEP8 | 特定技能1号ビザの在留資格変更許可申請をする ※審査に2ヶ月程度かかります。 |
| STEP9 | 許可後に、就労開始! |
ここまで、特定技能外国人を雇うまでの要件や流れ等について紹介してきましたが、雇った後も特定技能特有の手続きが必要となります。以下、主要なものをご紹介します。
1と2については、登録支援機関に相談しながら、手続きを行ってください。3については、行政書士に依頼されることをおすすめします。
特定技能(飲食料品製造業)を活用すれば、人手不足の解消に大きく役立ちます。
一方で、申請書類の作成や支援体制の整備等、専門的な知識が必要な手続きも多くあります。
当事務所では、特定技能制度の活用を検討する事業所様に対し、受入れ要件の確認から申請書類の作成及び申請までをトータルでサポートしています。外国人雇用を安心して進めたい事業所様は、ぜひ一度ご相談ください。
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で入管業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆様を支援しています。
お電話でのお問合せ・相談予約
<受付時間>
10:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く
フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。
〒739-0041 広島県東広島市西条町寺家
10:00~18:00
土曜・日曜・祝日(予約対応可)
広島県を中心に、岡山県、山口県、島根県、鳥取県および全国オンライン対応可能