外食業分野で特定技能外国人を雇用するには?
~要件・試験・流れを解説~

投稿日:2025年10月3日

外食業界では深刻な人手不足が続いており、「求人を出しても応募が集まらない」「採用してもすぐに離職してしまう」といった課題を抱える店舗が多いです。
ICT化等による業務改善に取り組んでいる店舗も増えてきていますが、手作り感やホスピタリティといった外食業ならではの付加価値を求められること等から、機械化による省力化には限界があります。

こうした中注目されているのが、特定技能(外食業分野)による外国人雇用です。技能試験と日本語試験に合格した外国人材を即戦力として受け入れることができ、人手不足の解消につながります。

この記事では、特定技能(外食業分野)を活用して外国人を雇用するために必要な条件や手続き、注意すべきポイント等を、飲食店の経営者様向けにわかりやすく解説します。

1.特定技能制度とは?外食業が対象になった背景

外食業が特定技能の対象となった背景には、深刻な人手不足があります。外食業界では、接客や調理補助といった現場の仕事が敬遠されやすく、離職率も高いため、常に人材が不足してきました。

これまで飲食店で働く外国人の多くは、留学ビザや家族滞在ビザを持つ人で、週28時間以内のアルバイトしかできませんでした。つまり、フルタイムで長期的に働いてもらうことが難しかったのです。また、外国料理専門店であれば、技能ビザを持つ調理師をフルタイムで雇用することは可能でしたが、この場合の業務内容は「本国の料理を作ること」に限られます。ホール業務等の単純作業は認められていませんし、カフェやレストラン、居酒屋等、一般的な飲食店では技能ビザの外国人を雇うことはできませんでした。

こうした状況を受け、政府は2019年4月に「特定技能」という新しい在留資格を創設し、その対象分野の1つとして外食業を加えました。特定技能外国人は、一定の技能と日本語能力を持っているため、人手不足の現場で、即戦力として活躍することが期待されています。これにより、多くの飲食店が人材確保の選択肢を広げ、安定した店舗運営につなげられるようになりました。

2.外食業分野で特定技能外国人が従事できる業務範囲

基本となる業務は、「飲食物調理、接客、店舗管理」 です。具体的には、次の業務に従事することができます。

  1. 飲食物調理:客に提供する飲食料品の調理、調製、製造を行うもの

    (例:食材仕込み、加熱調理、非加熱調理、調味、盛り付け、飲食料品の調製等)

  2. 接客:客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行うもの
    (例:席への案内、メニュー提案、注文伺い、配膳、下膳、カトラリーセッティング、代金受取り、商品セッティング、商品の受け渡し、食器・容器等の回収、予約受付、客席のセッティング、苦情等への対応、給食事業所における提供先との連絡・調整等)
  3. 店舗管理:店舗の運営に必要となる上記2業務以外のもの
    (例:店舗内の衛生管理全般、従業員のシフト管理、求人・雇用に関する事務、従業員の指導・研修に関する事務、予約客情報・顧客情報の管理、レジ・券売機管理、会計事務管理、社内本部・取引事業者・行政等との連絡調整、各種機器・設備のメンテナンス、食材・消耗品・備品の補充、発注、検品又は数量管理、メニューの企画、店舗内外・全体の環境整備、店内オペレーションの改善、作業マニュアルの作成・改訂等)​

特定技能評価試験等で立証された能力を用いて、上記のとおり外食業全般の業務に幅広く従事する必要があります。ただし、職場の状況に応じて、許可された在留期間全体の一部の期間において調理担当に配置される等、特定の業務にのみ従事することも可能です。

上記のほか、日本人が通常従事することとなる以下の関連業務に付随的に従事することも認められています。

  • 店舗において原材料として使用する農林水産物の生産
  • 客に提供する調理品等以外の物品の販売

また、2号特定技能外国人(1号特定技能外国人として実務経験を2年以上経て、特定技能2号評価試験に合格した人)については、上記に加えて、「店舗経営」も業務の1つとなります。

  • 店舗経営:店舗をトータルで管理するために必要な上記1~3の業務以外のもの
    (例:店舗の経営分析、経営管理、契約に関する事務等)

3.特定技能外国人(候補者)に必要な要件

外国人が外食業分野で特定技能ビザを取得して働くためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 18歳以上であること
  2. 健康状態が良好であること
  3. 従事する業務に必要な知識又は経験を必要とする技能を有していることが試験等により証明されていること
  4. 日本での生活に必要な日本語能力及び従事しようとする業務に必要な日本語能力を有していることが証明されていること

3と4について、外国人がどのようなルートで1号特定技能外国人を目指しているかによって、求められる試験が異なります。以下、ご参照ください。

対象者 技能水準 日本語能力
特定技能試験 日本語試験等
医療・福祉施設給食製造の技能実習2号を良好に修了した者
【技能実習2号ビザ】
免除 免除
医療・福祉施設給食製造以外の技能実習2号を良好に修了した者
【技能実習2号ビザ】
外食業1号技能測定試験 免除
上記以外の者 外食業1号技能測定試験

■下記どちらかの試験合格
①日本語能力試験N4以上
②国際交流基金日本語基礎テスト

外食業1号技能測定試験の詳細はこちらをご覧ください。
日本語能力試験の詳細はこちらをご覧ください。
国際交流基金日本語基礎テストの詳細はこちらをご覧ください。

【注意事項】

  • 医療・福祉施設給食製造の技能実習2号を良好に修了したとして技能試験の合格等の免除を受けたい場合には、技能実習2号修了時の医療・福祉施設給食製造技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の写しの提出が必要です。合格していない場合は、外食業特定技能測定試験を受験し合格するか、実習実施者が作成した技能等の修得状況を評価した文書の提出が必要です。
  • 1号特定技能外国人から2号特定技能外国人への移行を目指す場合は、さらに「外食業2号技能測定試験」と「日本語能力試験(N3以上)」に合格する必要があります。
    外食業2号技能測定試験の受験条件は、試験の前日までに外食業分野において複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者としての実務経験を2年以上有することです。

4.特定技能外国人を雇用したい店舗が満たすべき要件

特定技能外国人を受け入れるためには、店舗側も満たさなくてはいけない要件があります。
全分野共通の要件と外食業特有の要件に加えて、雇用形態・契約内容に関する要件や支援計画を作成することも求められていますので、併せて紹介します。

(1)全分野共通の要件

この中で1つでも満たさないものがあれば(欠格事由に該当すれば)、その日から5年間、特定技能外国人を受け入れることができません

  1. 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守すること
  2. 非自発的離職者を発生させないこと(特定技能雇用契約締結の前1年及び締結後)
  3. 行方不明者を発生させないこと(特定技能雇用契約締結の前1年及び締結後)
  4. 関係法律による刑罰を受けていないこと(刑に処せられ、その執行後又は執行を受けることが無くなった日から5年を経過していること)
  5. 実習認定の取り消しを受けた場合は、取り消しを受けてから5年が経過していること
  6. 出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行っていないこと(特定技能雇用契約締結の前5年及び締結後)
  7. 暴力団員ではないこと
  8. 行為能力・役員等の適格性があること
  9. 特定技能外国人の活動状況に係る文書を作成し、雇用契約終了の日から1年以上保管すること
  10. 特定技能外国人とその親族が、保証金の徴収・違約金契約等を締結させられていないこと
  11. 特定技能外国人に対する義務的支援の費用を外国人に負担させないこと
  12. 特定技能外国人を派遣労働者として受け入れる場合、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者等で、適当と認められる者であるほか、派遣先も1~4の基準に適合すること
  13. 会社が労災保険の適用事業所である場合、労災保険に係る保険関係の届出を適切に行うこと
  14. 特定技能外国人が継続して働くことができるように、会社が事業を安定的に継続することができる財政的基盤を持っていること
  15. 報酬の支払い方法について、基本的には預金口座への振り込みを行うこと
  16. 地域における共生社会の実現のために寄与する責務を果たしていること
  17. 特定産業分野ごとの特有の事情に応じて個別に定める基準に適合していること

上記の中で、特に注意したいのが、2の非自発的離職者です。これは、会社都合で離職させた人のことを指しますが、退職勧奨や試用期間からの本採用拒否も該当しますので、気を付けてください。詳しくはこちらをご覧ください。

(2)外食業分野特有の要件

外食業分野で特定技能外国人を雇用するためには、以下の要件も満たす必要があります。

  1. 次の飲食サービス業のいずれかを行っている店舗に就労させること
    ①客の注文に応じ調理した飲食料品、その他の飲食料品をその場で飲食させる店
    (例:食堂、レストラン、料理店等の飲食店、喫茶店等)
    ②客の注文に応じ調理した飲食料品を提供する持ち帰りサービスの店
    (例:持ち帰り専門店等)
    ③客の注文に応じ、店内で調理した飲食料品を客の求める場所に届ける配達サービスの店
    (例:仕出し料理・弁当屋、宅配専門店、配食サービス事業所等)
    ➃客の求める場所で調理した飲食料品の提供を行う飲食サービスの店
    (例:ケータリングサービス店、給食事業所等)
    ⇒外食業分野に該当するかどうか分からない場合は、農林水産省大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課(☎03-6744-2053)にお問い合わせください。
  2. キャバクラやスナック、パチンコ店等の「風俗営業」を営む店舗で就労させないこと
    ※ただし、旅館・ホテルの宴会場等では、接待を伴う飲食提供がある場合でも、接待以外の業務で就労可能。
  3. ソープランドやヘルス等の「性風俗関連特殊営業」を営む店舗で就労させないこと
  4. 特定技能外国人に接待させないこと
  5. 食品産業特定技能協議会の構成員になり、必要な協力を行うこと
  6. 農林水産省又はその委託を受けた者が行う調査等に対し、必要な協力を行うこと
  7. 登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合には、協議会の構成員となっており、かつ農林水産省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
  8. 特定技能外国人に対するキャリアアッププラン(想定されるキャリアルート、各レベルの業務内容や習熟の目安となる年数等)のイメージをあらかじめ設定し、雇用契約を締結する前に書面を交付して説明すること
  9. 特定技能外国人からの求めに応じ、実務経験を証明する書面を交付すること
(3)雇用形態・契約内容に関する要件

外食業分野の特定技能ビザを申請する前に、採用予定者と適法な雇用契約を結んでおくことも要件の1つです。適法な契約の条件としては、次のものが挙げられます。雇用条件書の書き方についてはこちらをご参照ください。

  1. 労働関連法令に適合していること
  2. 業務内容が外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)及び店舗経営(2号のみ)であること
  3. 直接雇用であること ※外食業分野では、派遣雇用は認められていない
  4. 所定労働時間がフルタイム(週5日以上かつ年間217日以上、かつ労働時間が週30時間以上)であること
  5. 特定技能外国人の所定労働時間が他の労働者の所定労働時間と同等であること
  6. 同等の業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上であること
  7. 特定技能外国人から一時帰国の申し出があった場合は、有給休暇の取得をさせる等の配慮をすること
  8. 特定技能外国人が雇用契約終了後、帰国に要する旅費を負担することができないときは、企業が旅費を負担するとともに、円滑に出国できるよう必要な措置を講ずること
  9. 特定技能外国人の健康状況やその他生活状況を把握するために必要な措置を講ずること
(4)支援計画を作成すること

支援計画とは、1号特定技能外国人と雇用契約を締結しようとする企業が、作成しなければならないものです。この支援計画は、1号特定技能外国人が、活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画です。2号特定技能外国人には、支援計画不要です。)

この支援計画には、必ず行わなければならない義務的支援行うことが望ましいとされる任意的支援に分けられますが、支援計画書に記載した場合は、任意的支援についても支援義務が生じます。そして、この支援義務を果たさない場合、欠格事由に該当することとなりますので、注意が必要です。
なお、支援計画の項目は以下のとおりです(各項目に義務的支援と任意的支援が含まれています)。詳細はこちらをご覧ください。

  1. 事前ガイダンスの提供
  2. 出入国する際の送迎
  3. 適切な住居の確保に係る支援や生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 日本語学習の機会の提供
  6. 相談又は苦情への対応
  7. 日本人との交流促進に係る支援
  8. 非自発的離職時の転職支援
  9. 定期的な面談の実施、行政機関への通報

これらの支援計画については、全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、事業所で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。

5.特定技能外国人を雇用する流れ(外食業分野の場合)

続いて、外食業分野の特定技能外国人(日本に在留しており、必要な試験等に合格した外国人)を雇用するためのおおまかな流れをご紹介します。手続きの数が非常に多く、時間もかかるため、登録支援機関や行政書士のサポートを受けながら、進められることをおすすめします。手続きがすべて完了するまでに4か月程度かかります。

STEP1 会社がハローワーク等に求人票を出す又は登録支援機関等から人材紹介を受ける
STEP2 候補者の外国人と面接し、選考を行う

STEP3

外国人と雇用契約を結ぶ

※外国人の労働条件が適法であることが求められます。

STEP4

外国人の支援計画を策定する

※会社は、外国人が特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、この計画に基づいて支援を行わなければなりません。なお、この支援計画の実施について、一部又は全部を登録支援機関に委託することができます。その場合は、登録支援機関と委託契約を結ぶ必要があります。

STEP5

外国人に事前ガイダンスを行う

※労働条件、活動内容等について、対面又はZoom等で説明します。これも支援計画の1つであるため、登録支援機関に委託している場合は、登録支援機関が行います。

STEP6

食品産業特定技能協議会へ加入する

※在留資格変更申請前に加入する必要があります。

STEP7

本国で「特定技能」の活動に関して必要な手続きを行う

※特定技能外国人として日本で働く際に、カンボジア、タイ、ベトナムの外国人については、本国で定める手続きをし、証明書等を受領しておく必要があります。なお、タイについては技能実習2号・3号から特定技能外国人へ移行する方のみ、ベトナムについては、技能実習2号と2年以上の課程を修了した(又は修了予定の)留学生から特定技能外国人へ移行する方のみ、手続きの対象となっています。

STEP8

外国人に健康診断を受けてもらう

※健康状態が良好であることも審査基準の1つであるため、必ず受けてもらう必要があります。健康診断個人票に掲げられている項目が網羅されているものであれば、異なる様式の健康診断書を入管に提出しても問題ありません。

STEP9

特定技能1号ビザの在留資格変更許可申請をする

※審査に2か月程度かかります。

STEP10 許可後に、就労開始!

6.外食業分野で特定技能外国人を雇った後の手続き

ここまで、特定技能外国人を雇うまでの要件や流れ等について紹介してきましたが、雇った後も特定技能特有の手続きが必要となります。以下、主要なものをご紹介します。

  1. 定期届出(1年に1回、対象年の翌年4月1日~5月31日までに入管に提出)
  2. 随時届出(雇用条件が変わった、退職した、支援計画が変わった等の際に、事由が発生した時から14日以内に入管に提出)
  3. 在留期間更新許可申請(在留期限が1年で付与される方がほとんどのため、毎年、在留期限の3か月前~当日までに申請)

1と2については、登録支援機関に相談しながら、手続きを行ってください。3については、行政書士に依頼されることをおすすめします。

7.まとめ

特定技能制度は、人手不足が深刻な外食業界にとっても、大きな支えとなる制度です。外国人材を受け入れることで、安定した人材確保につながり、店舗運営の継続やサービス向上が期待できます。
一方で、受入れには在留資格の申請、雇用契約の整備、定期的な届出等、多くの法律的・事務的な手続きが伴います。これらを誤って進めると、思わぬ不許可やトラブルにつながる恐れもあります。
だからこそ、外国人材の受け入れは専門家と一緒に進めることが安心・確実です。専門家のサポートを受けることで、制度を正しく理解しながらスムーズに人材を迎え入れることができ、本業に集中することができます。

当事務所では、特定技能をはじめとした在留資格の申請手続きや受入体制づくりをサポートしています。外食業分野での外国人材活用をご検討中の方は、どうぞお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。

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