インドネシア人との国際結婚の手続きについて

投稿日:2025年12月12日

日本で暮らすインドネシア人は、2010年代頃から徐々に増えはじめ、最近では日本人とインドネシア人のカップルも増えてきました。一方で、多くの方が頭を悩ませるのが「国際結婚の手続き」です。両国の制度の違いもあり、どこから手を付ければよいのか分からないという声もよく聞かれます。

特に、日本人とインドネシア人の国際結婚は、どちらの国で先に手続きを進めるかによって、必要書類や流れが大きく変わります。

具体的には、

  • 日本で先に手続きをする場合
  • インドネシアで先に手続きをする場合

の2つのパターンが存在します。

この記事では、それぞれのパターンに沿って、必要な書類や手続きの流れを解説します。複雑に思える手続きも、1つずつクリアしていけば、必ずゴールにたどり着けます。この記事を参考に、スムーズに手続きを進めていきましょう。

1.インドネシア人との結婚で注意すべきポイント

インドネシア人との結婚の手続きを進めるにあたって、結婚できる年齢、再婚禁止期間、宗教等、注意すべきポイントがありますので、主なものをご紹介します。

  1. 結婚できる年齢
    日本人とインドネシア人との国際結婚の場合、日本人は、男女ともに18歳以上であることが求められますが、インドネシア人は、男女ともに19歳以上であることが求められます。ただし両親と裁判所が認めれば、19歳未満でも結婚することができます。
  2. 再婚禁止期間
    日本では再婚禁止期間のルールが廃止されましたが、インドネシアでは再婚禁止期間のルールがあります。インドネシア人女性が夫と死別した場合は130日間、離婚した場合は原則90日間(約3ヶ月間)、再婚することができません。加えて、妊娠している場合は、出産後に再婚可能となります。 
  3. 宗教
    インドネシアでは「無宗教」は認められず、結婚するにあたって、必ず何らかの宗教(イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教等)への帰属が必須で、夫婦は同じ宗教を信仰していることが原則です。そのため、インドネシア方式(インドネシアで先に手続きをする方式)でインドネシア人と結婚する場合は、日本人側が相手の宗教に合わせる(または双方の宗教を尊重する形で手続きを進める)必要がありますが、基本的には男性の宗教に合わせるのが一般的です。家族の理解を得るためにも同じ宗教である方が有利です。
  4. 一夫多妻制
    インドネシアではイスラム教徒の男性に限り、条件付きで一夫多妻が認められていますが、日本は重婚を禁止しているため、日本国籍のままインドネシア人と結婚して、一夫多妻関係になることは日本の法律で認められません。ですが、インドネシア方式で重婚した場合、日本の役所は報告的届出として婚姻届を受理せざるを得ないとされています。一方、日本方式で婚姻届を提出する場合、日本の重婚禁止規定が適用されるため、一夫多妻の婚姻届は受理されません。
  5. 同性婚
    現時点で、両国とも認めていません。

​その他にも、インドネシアは地域によって結婚のルールが異なるようですので、結婚を決められたら、インドネシアの役所等に確認しながら進めてください。

2.日本で先に手続きをする場合

結婚予定のインドネシア人の方が、日本に在留している場合は、日本での手続きを先に進めた方がスムーズです。また日本人がインドネシア人と同じ宗教に入信する予定が無い場合も、日本での手続きを先に進めた方がよいです。まずは日本で先に手続きする場合について解説します。

(1)お住まいの市区町村役場に必要書類を確認する

最初に、日本人が住んでいる市区町村役場に結婚手続きに必要な書類を確認します。役場によって、必要な書類が異なる場合がありますので、必ず確認してください。なお、一般的によく求められる書類は以下のとおりです。

【日本人が用意するもの】

  • 婚姻届
  • 戸籍謄本 ※本籍地以外の役場に提出する場合のみ

’【インドネシア人が用意するもの】

  • 婚姻要件具備証明書とその日本語翻訳文 ※業者に依頼しても、自分たちで翻訳しても大丈夫です
  • パスポート
  • 在留カード
(2)管轄の駐日インドネシア大使館・総領事館で婚姻要件具備証明書を取得する

次に、結婚予定のインドネシア人が住んでいる地域を管轄する駐日インドネシア大使館又は総領事館に連絡し、婚姻要件具備証明書を取得するために必要な書類等を確認します。そして、その必要書類を持って駐日インドネシア大使館等に2人で出向き、手続きをして証明書を取得します。参考として、求められる一般的な必要書類をご紹介します(インドネシア人の在留状況によって必要書類が異なる場合がありますので、HPや電話で必ず確認してください)。

【日本人が用意するもの】

  • パスポートの原本とコピー
  • 婚姻要件具備証明書 ※法務局で取得したもの
  • 戸籍謄本 ※3ヶ月以内のもの

【インドネシア人が用意するもの】

  • 申請書 ※大使館等の窓口にあります
  • 独身証明書 ※インドネシアの役所が発行したもの
  • 出生証明書 ※インドネシアの役所が発行したもの
  • IDカードとファミリーカードのコピー
  • パスポートのコピー
  • 両親又は家族の同意書 ※ 印紙貼付と署名が必要
  • 顔写真 ※白背景のもの

​日本人が用意する公的書類については、外務省のアポスティーユを求められる可能性がありますので、必ず事前に大使館等に確認してください。

(3)お住まいの市区町村役場に婚姻届等を提出する

無事、婚姻要件具備証明書を取得できたら、その翻訳文も準備して、お住まいの市区町村役場で婚姻届と必要書類を提出します。この手続きで、日本における婚姻関係の手続きは完了です。

日本での手続きが終わったら、駐日インドネシア大使館等にも結婚の報告を行います。一般的には、婚姻の事実が記載された戸籍謄本と婚姻受理証明書及びそれらのインドネシア語翻訳文、夫婦のパスポートのコピーが必要となりますが、状況によって求められる書類が追加されることもありますので、事前に駐日インドネシア大使館等へ確認してください。

上記手続きが完了すると、入管に配偶者ビザ申請をするのに必要な「婚姻証明書」を取得することができます

(4)入管に配偶者ビザの申請をする

インドネシア人との国際結婚が成立したら、配偶者ビザへの変更許可申請又は認定証明書交付申請を行います。ここまでの国際結婚の手続きの中で、最も難しい手続きです。
中長期の在留資格を持つ方が変更許可申請を行う場合についてはこちらを、短期滞在ビザ(90日)から手続きを行う場合はこちらをご覧ください。

配偶者ビザには様々なメリットがあります。例えば、配偶者ビザは、就労制限が無く、自由に働くことができます。アルバイトだけでなく、正社員や会社経営等、様々な働き方をすることができます。また、永住権の取得についても、配偶者ビザの方は要件が緩和されており、永住申請しやすいです。
とは言え、配偶者ビザは審査が厳しく、結婚しているからといって絶対に得られるビザではないため、入念に申請準備することをおすすめします。

3.インドネシアで先に手続きを進める場合

結婚予定のインドネシア人の方がインドネシアに在住している場合は、インドネシアでの手続きを先に進めた方がスムーズですが、日本人が無宗教や他の宗教を信仰している場合、インドネシア人と同じ宗教に入るための手続きが必要となります。
ここからは、インドネシアで先に結婚手続きをする場合について解説します。

(1)日本人の婚姻要件具備証明書等を取得する

まず、結婚予定の日本人がインドネシアでの結婚の条件を満たしていることを証明する書類(婚姻要件具備証明書)が必要です。婚姻要件具備証明書は、在インドネシア日本国大使館で取得できます。婚姻要件具備証明書を取得するために必要とされる一般的な書類等は、以下のとおりです。日本人本人が申請する必要があります。

  • 申請書 ※様式はこちらからダウンロードできます
  • 日本人のパスポート
  • 戸籍謄本 ※3ヶ月以内のもの
  • 戸籍謄本の内容をローマ字及び英語で記入したもの ※様式はこちらからダウンロードできます
  • インドネシア人のパスポートのコピー
  • インドネシア人の国籍が分かる書類(出生証明書等)
(2)インドネシアで信仰する宗教の方式に従って婚姻の手続きを行う

インドネシアで結婚する場合は、宗教(イスラム教、ヒンズー教、仏教、カトリック、プロテスタント)によって、手続きの方法が異なります。必ず事前に確認してから、手続きを進めてください。

  • イスラム方式:居住地の宗教事務所(K.U.A)で結婚の手続きを行う。
  • 非イスラム方式:居住地の民事登録事務所(Kantor Catatan Sipil)で結婚の手続きを行う。

結婚手続き後、婚姻証明書(イスラム方式の場合は BUKU NIKAH 、非イスラム方式の場合は AKTA PERKAWINAN )の交付を受けることができます。

(3)日本の役場へ報告的届出を行う

インドネシアで結婚が成立したら、その事実を日本の戸籍に反映させるための手続きを行います。お住まいの市区町村役場か在インドネシア日本国大使館で3ヶ月以内に手続きを行いましょう。日本の役場で手続きをした方が、戸籍に婚姻事実が記載されるまでの時間が短いため(1週間程度)、おすすめですが、引き続きインドネシアに滞在する場合は、在インドネシア日本国大使館で手続きを行うこともできます。ただし、婚姻事実が記載されるまでに1~2か月ほどかかりますので、注意してください。日本の役場への報告的届出に際して、必要とされる一般的な書類は以下のとおりです(必ず届出を行う役場に事前に確認してください)。

  • 婚姻届 2通 ※これまでの本籍地とは別のところに本籍地を置く場合は3通必要
  • 婚姻証明書 ※イスラム方式の場合はBUKU NIKAH、非イスラム方式の場合はAKTA PERKAWINAN
  • 婚姻証明書の日本語翻訳文 ※業者に依頼しても、自分で翻訳しても大丈夫です
  • インドネシア人の国籍及び氏名を立証する公的書類(出生証明書(AKTA KELAHIRAN)等)
  • 上記公的書類の日本語翻訳文 ※業者に依頼しても、自分で翻訳しても大丈夫です
  • 日本人の婚姻要件具備証明書のコピー

この手続きが完了して初めて、日本でも法的に婚姻が成立したことになります。

(4)入管に配偶者ビザの認定証明書交付申請をする

インドネシア人との国際結婚が成立し、インドネシア人配偶者と日本で暮らす場合は、インドネシア人配偶者を日本に呼び寄せるために、配偶者ビザの認定証明書交付申請を行います。ここまでの国際結婚の手続きの中で、最も難しい手続きです。詳しくはこちらをご覧ください(この手続きで婚姻の記載がある戸籍謄本を求められるため、日本国内の役場で報告的届出をした方がスムーズに手続きできます)。
配偶者の呼び寄せについても、審査が厳しく、結婚しているからといって絶対に得られるビザではないため、入念に申請準備することをおすすめします。

4.まとめ

この記事では、日本人とインドネシア人の国際結婚手続きについて、日本で先に進める場合とインドネシアで先に進める場合、それぞれの流れを詳しく解説しました。
この2つのケースを比較すると、

  • 結婚予定のインドネシア人が日本在住なら、日本で先に手続き
  • 結婚予定のインドネシア人がインドネシア在住なら、インドネシアで先に手続き

が、全体的な流れとしてスムーズである場合が多いです。
インドネシア人との結婚は、まずお相手の方の宗教とその宗教の慣習や手続きを確認することが重要です。この事前確認が、その後の手続きを円滑に進めるための鍵となります。お二人の結婚手続きが円滑に進み、新しい生活が素晴らしいものになることを心より願っています。

結婚手続き完了後には、外国人配偶者の方が日本で安定して暮らすために不可欠な配偶者ビザの申請という大切なステップが控えています。このビザ申請には、複雑な書類作成と厳格な審査が伴います。
当事務所では、日本人とインドネシア人の国際結婚後の配偶者ビザ(「日本人の配偶者等」)申請について、書類作成から申請代行までトータルでサポートしております。お二人が安心して新生活をスタートできるよう、確かな知識でサポートいたします。ビザ申請に関してお困りの際やご不安な点がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で入管業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆様を支援しています。

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