ベトナム人との国際結婚の手続きについて

投稿日:2025年9月4日

日本人とベトナム人の国際結婚の手続きは、どこで先に手続きを行うかによって、その流れが大きく変わります。

具体的には、

  • 日本で先に手続きをする場合
  • ベトナムで先に手続きをする場合

の2つのパターンが存在します。

この記事では、それぞれのパターンに沿って、必要な書類や手続きの流れを解説します。複雑に思える手続きも、1つずつクリアしていけば、必ずゴールにたどり着けます。この記事を参考に、スムーズに手続きを進めていきましょう。

1.結婚できる年齢等について

まずはじめに、結婚の手続きを進めるにあたって、自分や相手が結婚できる年齢であるかどうかを確認する必要があります。国によって、結婚できる年齢が異なるため、とても重要な確認事項です。

日本人とベトナム人との国際結婚の場合、日本人は、男女ともに18歳以上であることが求められますが、ベトナム人は、男性18歳以上、女性20歳以上であることが求められます。加えて、ベトナム人と結婚する場合は、精神障害が無いか(自分で意思決定する能力があるか)、HIVに感染していることを隠していないかということも求められます
なお現時点で、同性婚については両国とも認めていません。

2.日本で先に手続きをする場合

結婚予定のベトナム人の方が、日本に在留している場合は、日本での手続きを先に進めた方がスムーズです。まずは日本で先に手続きする場合について解説します。

(1)お住まいの市区町村役場に必要書類を確認する

最初に、日本人が住んでいる市区町村役場に結婚手続きに必要な書類を確認します。役場によって、必要な書類が異なる場合がありますので、必ず確認してください。なお、一般的によく求められる書類は以下のとおりです。

【日本人が用意するもの】

  • 婚姻届
  • 戸籍謄本(本籍地以外の役場に提出する場合)

’【ベトナム人が用意するもの】

  • 婚姻要件具備証明書とその日本語翻訳文 ※業者に依頼しても、自分たちで翻訳しても大丈夫です
  • パスポート
  • 在留カード

※ベトナム人が短期滞在ビザで在留している場合、駐日ベトナム大使館等で婚姻要件具備証明書を取得することができません。その場合は、ベトナム人がベトナムから取り寄せた出生証明書や婚姻状況確認書(人民委員会発行のもの)等で代用できる場合があります(それぞれ日本語翻訳文も必要)。詳しくはお住まいの役場にお尋ねください。

(2)管轄の駐日ベトナム大使館・総領事館で婚姻要件具備証明書を取得する

次に、結婚予定のベトナム人が住んでいる地域を管轄する駐日ベトナム大使館又は総領事館に連絡し、婚姻要件具備証明書を取得するために必要な書類等を確認します。そして、その必要書類を持って駐日ベトナム大使館又は総領事館で直接手続きをするか、郵送請求をして、証明書を取得します。以下は、在東京ベトナム社会主義共和国大使館で求める必要書類となります(ベトナム人の在留状況によって必要書類が異なる場合がありますので、HPや電話で必ず確認してください)。

【婚姻要件具備証明書に必要な書類】

  • 記入済み申請用紙 ※様式は管轄の大使館・総領事館のものを使用してください
  • ベトナム人のパスポート原本と2、3ページ目のコピー
  • ベトナム人が住んでいる日本の市区町村役場に発行してもらう結婚登録書に自分の名前が記載されていない証明書 (当該ベトナム人が日本で結婚していない旨を証明する文書) ※来日後に住んでいたすべての市区町村役場で発行されたものが必要です
  • ベトナム人が住んでいたベトナムの町村級の人民委員会が発行した婚姻状況確認書(使用目的:婚姻、結婚予定の日本人の名前が記載されているもの) ※発行から6カ月以内のもの
  • 日本国内にベトナム人が在住していることを証明する公的書類(在留カード、住民票等)

【大使館・総領事館の管轄地域】

  1. 在東京ベトナム社会主義共和国大使館:北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県
  2. 在大阪ベトナム社会主義共和国総領事館:愛知県、岐阜県、富山県、石川県、福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県
  3. 在福岡ベトナム社会主義共和国総領事館:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
(3)お住まいの市区町村役場に婚姻届等を提出する

無事、婚姻要件具備証明書を取得できたら、その翻訳文も準備して、お住まいの市区町村役場で婚姻届と必要書類を提出します。この手続きで、日本における婚姻関係の手続きは完了です。
ですが、ベトナムに結婚の報告をする必要があるため、その手続きで求められる婚姻届受理証明書を取得したい旨も併せて窓口で伝えましょう。基本的には即日発行される書類です。

(4)駐日ベトナム大使館・総領事館に婚姻届受理証明書等を提出する

日本で先に結婚手続きを行った場合、その事実をベトナム政府に報告する必要があります。
管轄の駐日ベトナム大使館・総領事館に以下の書類を提出することで、報告的手続きが完了します(郵送申請も可能)。

  • 婚姻等記入申請書
  • 婚姻届受理証明書とそのベトナム語翻訳文 ※業者に依頼しても、自分たちで翻訳しても大丈夫です
  • 日本人とベトナム人のパスポート原本と2、3ページ目のコピー
  • 戸籍謄本とそのコピー ※婚姻の事実が記載されているもの

なお、婚姻要件具備証明書を取得せずに、日本で結婚の手続きを行った場合は、ベトナムの人民委員会に直接、報告的手続きを行う必要があります。必要書類はおおむね上記の書類と共通するようですが、必ずその機関に確認してください。

(5)入管に配偶者ビザの申請をする

ベトナム人との国際結婚が成立したら、配偶者ビザへの変更許可申請又は認定証明書交付申請を行います。ここまでの国際結婚の手続きの中で、最も難しい手続きです。
中長期の在留資格を持つ方が変更許可申請を行う場合についてはこちらを、短期滞在ビザ(90日)から手続きを行う場合はこちらをご覧ください。

配偶者ビザには様々なメリットがあります。例えば、配偶者ビザは、就労制限が無く、自由に働くことができます。アルバイトだけでなく、正社員や会社経営等、様々な働き方をすることができます。また、永住権の取得についても、配偶者ビザの方は要件が緩和されており、永住申請しやすいです。
とは言え、配偶者ビザは審査が厳しく、結婚しているからといって絶対に得られるビザではないため、入念に申請準備することをおすすめします。

3.ベトナムで先に手続きを進める場合

結婚予定のベトナム人の方がベトナムに在住している場合は、ベトナムでの手続きを先に進めた方がスムーズです。日本人はノービザ(45日以内)でベトナムに渡航できるからです。とは言え、日本で先に手続きをするよりも時間がかかりますので、1回の渡航ですべての手続きが完了しない可能性があることを覚えておいてください。
ここからはベトナムで先に手続きする場合について解説します。

(1)日本人の婚姻要件具備証明書を取得する

まず、結婚予定の日本人がベトナムでの結婚の条件を満たしていることを証明する書類(婚姻要件具備証明書)が必要です。婚姻要件具備証明書は、日本人本人がベトナムにある日本国大使館・総領事館に行って取得します
婚姻要件具備証明書を取得するために必要とされる一般的な書類等は、以下のとおりです。詳しくはこちらもご覧ください。

  • 証明書発給申請書
  • 日本人の戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの) 
  • 日本人のパスポート

  • ベトナム人の身分証明書(パスポート、IDカード等を原本提示)

  • 手数料 ※ベトナムドンの現金のみ

(2)婚姻要件具備証明書にベトナム政府の認証を受け、翻訳する

婚姻要件具備証明書を取得したら、ベトナム政府の認証を受ける必要があります。在ベトナム日本国大使館で発給を受けた証明書は、ベトナム外務省領事局(ハノイ)で認証手続きを行い、地方人民委員会各事務所でベトナム語に翻訳してもらいます。なお、在ホーチミン日本国総領事館及び在ダナン日本国総領事館で発給を受けた証明書の認証先については、それぞれの総領事館に確認してください。

(3)病院で健康診断書を取得する

ベトナム国内の公立総合病院(診療科目として精神科を含む病院)で健康診断書(自己の意思表示を行う能力があり、結婚生活に支障がない旨の記載が必要。発行日から6か月以内のもの)を取得します。日本の病院が発行する診断書でも手続き可能とされていますが、認証手続きが必要になる等、手続きが増えるため、ベトナム国内の公立総合病院で健康診断書を取得する方がおすすめです。
もし、日本国内の病院で健康診断書を取得した場合の手続きについては、在ベトナム大使館又は総領事館に相談してください。

(4)人民委員会で手続きする

結婚予定のベトナム人の本籍地のある地方人民委員会各区事務所が婚姻登録の申請窓口となります(ハノイ市の場合約30か所)。申請の際は、2人のうちいずれか1人が窓口に出頭して書類を提出することが可能です。

【日本人が用意するもの】

  • 婚姻登録申請書 (人民委員会から入手してください)
  • 婚姻要件具備証明書(発行から6か月以内のもので、ベトナム政府の認証を受けたもの)
  • ベトナムの公立総合病院が発行する健康診断書(発行から6カ月以内のもの)
  • パスポート(原本提示+コピー)

​なお、婚姻登録が受理された後、15日以内に面接が行われます。面接は2人とも出頭する必要があります。
上記は手続きの概要です。詳細は実際に手続きを行う地方人民委員会にご確認ください。

(5)日本の役場へ報告的届出を行う

ベトナムで結婚が成立したら、その事実を日本の戸籍に反映させるための手続きを行います。お住まいの市区町村役場で3か月以内に手続きを行いましょう。日本の役場で手続きをした方が、戸籍に婚姻事実が記載されるまでの時間が短いため(1週間程度)、おすすめですが、引き続きベトナムに滞在する場合は、ベトナムにある日本大使館・総領事館で手続きを行うこともできます。ただし、婚姻事実が記載されるまでに1~2か月ほどかかりますので、注意してください。日本の役場への報告的届出に際して、必要とされる一般的な書類は以下のとおりです(必ず届出を行う役場に事前に確認してください)。

  • 婚姻届
  • 婚姻証明書とその翻訳文 ※業者に依頼しても、自分で翻訳しても大丈夫です
  • ベトナム人の出生証明書とその翻訳文 ※業者に依頼しても、自分で翻訳しても大丈夫です
  • 2人のパスポート
  • 日本人の戸籍謄本(本籍地以外の役場に提出する場合)

この手続きが完了して初めて、日本でも法的に婚姻が成立したことになります。

(6)入管に配偶者ビザの認定証明書交付申請をする

ベトナム人との国際結婚が成立し、ベトナム人配偶者と日本で暮らす場合は、ベトナム人配偶者を日本に呼び寄せるために、配偶者ビザの認定証明書交付申請を行います。ここまでの国際結婚の手続きの中で、最も難しい手続きです。詳しくはこちらをご覧ください(この手続きで婚姻の記載がある戸籍謄本を求められるため、日本国内の役場で報告的届出をした方がスムーズに手続きできます)。
配偶者の呼び寄せについても、審査が厳しく、結婚しているからといって絶対に得られるビザではないため、入念に申請準備することをおすすめします。

4.まとめ

この記事では、日本人とベトナム人の国際結婚手続きについて、日本で先に進める場合とベトナムで先に進める場合、それぞれの流れを詳しく解説しました。
この2つのケースを比較すると、

  • 結婚予定のベトナム人が日本在住(滞在)なら、日本で先に手続き
  • 結婚予定のベトナム人がベトナム在住なら、ベトナムで先に手続き

が、全体的な流れとしてスムーズである場合が多いです。ですが、ベトナムで先に手続きをする場合、病院で健康診断書を取得しなければならず、日本で先に手続きをする場合よりも、やらなければならないことが増えますし、時間もかかります。よって、お二人でしっかり相談して、どちらで先に手続きをされるか、決められるとよいと思います。どのような道を選ばれるにしても、お二人の結婚手続きが円滑に進み、新しい生活が素晴らしいものになることを心より願っています。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

お気軽にお問合せ・ご相談ください

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
082-495-5550
受付時間
10:00~18:00
定休日
土曜・日曜・祝日(予約対応可)