生計の概要その1の書き方について

投稿日:2025年8月22日

帰化申請をする際の必要書類の1つに「生計の概要」というものがあります。生計の概要には、「その1」と「その2」があり、「その1」は、帰化を希望する人とその配偶者や同居する家族について、1か月にどのくらいの収入と支出があるかを記載する書類です。決して難しい書類ではありませんが、注意すべきポイントがたくさんあります。

この記事では、生計の概要その1の書き方について、記載例とともに解説します。

1.生計の概要その1の基本的なルール

まず、生計の概要その1を作成するにあたり、押さえておくべきルールとして、生計の概要は、生計を同じくする世帯で1枚作成して提出すればよいため、家族で一緒に帰化申請をする場合でも、1枚(2部)提出すればよく、人数分の提出は不要です。
また、生計の概要は、手書きで作成しても、パソコンで作成してもどちらでも良いですが、同じものを2部用意する必要があります。手書きで作成する場合は、1枚作成してそれをコピーして用意すれば大丈夫ですし、パソコンで作成する場合は、2部印刷すればよいです。帰化申請については、他の提出書類にも言えることですが、同じものを2部(正本と副本)提出する必要があるということを覚えておいてください。あと、手書きの場合は、修正液や修正テープを使用してはいけないことにも注意してください。
それから、生計の概要その1は、帰化申請の受理日の前月の給与明細書等から収入金額をそのまま記載して作成しますので、書類の中では最後の方に作成します。この書類で、収入の範囲内で生活できているかという「生計の安定性」をチェックされます。

なお、書類の様式は住所地を管轄する法務局のHPからダウンロードして作成しましょう。参考に、当事務所がある広島法務局の様式を掲載しておきます。

2.生計の概要その1の書き方

それでは早速、生計の概要その1の記載例(参考:帰化許可申請のてびき)を見ながら、注意すべきポイントについて、確認していきましょう。

❶作成した年月日を日本の元号(和暦)で記載します。帰化申請の受理日の前月の給与明細をもらった日から受理日までの間で、書類を作成した日を記載します

生計を同じくする方の中で、収入のある親族の氏名をフルネームで記載します。氏名は、氏、名の順番で漢字、ひらがな、カタカナで記載してください。アルファベットでの記載はできません。ミドルネームがある場合は、ミドルネームも記載してください。また、中国の簡略体漢字は、日本の正字に引き直して記載する必要があります。なお、二世帯家族のように、同じ家に住んでいても生計を別にしている方は対象外です。

税引き後の実際に受け取った金額を記載します。会社員やアルバイトの場合は、金等控除後の手取り額を、個人事業主は前年度の確定申告書の損益計算書に記載されている利益を12等分した金額を、法人等の経営者や役員等は役員報酬を記載してください。また、不動産所得等の事業収入がある場合は、毎月口座に入ってくる実際の金額を記載してください。それから、年金受給者の方は1か月分の年金額を、児童手当等の育児給付金を受給されている方は1か月分の手当額を記載してください。その他、世帯が別であっても離婚した元配偶者から子どもの養育費等を受け取っている場合は、その1か月分の金額を記載してください。なお、法務局によって収入額の下3桁を「000」でよいと言われるところと1円単位で記載するようにと言われるところがありますので、必ず確認してください

❹種目は、収入の種類と収入先を記載します。会社員やアルバイトは「給料(○○株式会社)」、個人事業主や経営者は「事業収入(○○株式会社)」、年金受給者は「年金」と記載してください。

❺備考欄には勤務開始日を記載します。会社員の場合は入社年月日を、個人事業主や経営者の場合は開業届を出した年月日又は設立登記をした年月日を記載します。こちらの年月日もすべて日本の元号(和暦)で記載する必要がありますが、元号の記載は省略可能です。会社員の場合は記載例のように「平○.○から勤務」と記載し、経営者の場合は「平○.○から経営」と記載します。

❻収入の合計額を記載します。この収入額と⓮の支出額は1円単位で合致するようにしてください。

❼生計を同じくする親族が使う1か月の大体の食費を記載してください。1円単位で記載する必要はありません。備考欄には記載不要です。

❽賃貸の物件に住んでいる場合は、賃貸借契約書を確認して、家賃のほか、共益費、管理費、駐車場代、自治会費等、毎月実際に支払っている金額の合計を記載してください。備考欄にはその名目を記載例のように記載してください。

❾1か月の教育費を記載します。日本語学校の授業料や子どもの教育費としてかかった費用等が対象です。備考欄にはその名目(例:日本語学校授業料、書籍代、子どもの塾代)を記載します。

❿毎月支払う借金の返済額を記載します。自動車ローンや奨学金の返済金等が該当します。備考欄にも何であるか、記載してください。

民間の生命保険等の1か月の支払い保険料を記載します。こちらは健康保険料や年金保険料を記載する欄ではないので、注意してください。民間の保険に加入していない場合は「0」と記載してください。また備考欄には記載不要です。

⓬毎月貯金している金額を記載します。⓭のその他の金額と調整しながら、適度な金額を記載してください。備考欄には記載不要です。

その他には、光熱費、水道費、通信費、交際費等の合計額を記載し、備考欄にもその名目を記載します。❻の収入合計額から、❼から⓬までの支出額を差し引いて残った額を1円単位で記載してください。なお、海外の親族に仕送りをしている場合は、⓭の下の欄の支出科目に「海外送金」と記載し、金額を記載したうえで備考欄には「父母の生活費の仕送り」等と記載してください

⓮支出の合計額を記載します。⓬と⓭で調整するので、❻と⓮の金額は合致します

⓯借入の目的は、自動車や住宅購入のために金融機関等からお金を借りている場合に記載します。「自動車購入」や「住宅購入」のように記載します。

⓰金融機関名と支店名を記載します。

⓱帰化申請時点での借入の残額を記載します。

⓲借入金額を払い終える年月を記載します。こちらも年月日はすべて日本の元号(和暦)で記載する必要がありますが、元号の記載は省略可能です。

3.まとめ

この記事では、生計の概要その1の書き方について解説しました。
生計の概要その1は、帰化を希望している人が、現在、日本で安定した生活を送っているかを確認し、帰化許可の判断材料の一つとする非常に重要な書類です。収入が多ければよいというものではなく、毎月安定した収入を得て、収入の範囲内で支出し、慎ましく生活していることが大切です。
もし、この記事を読んでも「書類を作成するのが難しい」、「仕事が忙しくて準備する時間がない」といったお悩みをお持ちの場合は、一人で抱え込まず、ぜひ帰化専門の行政書士にご相談ください。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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