更新日:2025年10月22日 投稿日:2025年5月26日
 
 経営・管理ビザとは、日本で会社を設立して事業の経営を行う場合、又は事業の管理に従事する際に取得する在留資格です。経営・管理ビザをお持ちの方が永住ビザを取得することで、より安定的・継続的に事業活動を行うことが可能になりますので、永住ビザを取得するメリットは大きいと言えるでしょう。
この記事では、経営・管理ビザから永住ビザを取得するための要件等を解説します。
まずは永住ビザを取得するメリットについてご紹介します。
 経営・管理ビザをお持ちの方が、永住ビザを取得する大きなメリットは、在留期限と就労制限が無くなり、身分が安定することです。
 経営・管理ビザの在留期限は、3か月又は4か月、6か月、1年、3年、5年のいずれかで、在留期限が切れるまでに更新手続きが必要となります。ですが、永住ビザを取得すると、在留期限が無くなり、更新手続きが不要となります。
 また、就労活動については、経営・管理ビザの場合は、許可された就労活動(事業の経営や管理)しか行うことができませんが、永住ビザを取得すれば、就労活動の制限も無くなります。よって、収入を伴う他の活動も可能となります。
 詳細は、こちらのページでも解説しておりますので、ぜひご覧ください。
なお、2025年10月16日の改正で、経営・管理ビザの許可要件として資本金が3,000万円以上であることや1人以上の常勤職員の雇用等が求められるようになりました。永住申請においても、経営・管理ビザの方がこれらの要件を満たしているかどうかが審査のポイントになると考えられます。
永住ビザを取得するためには、3つの要件があります。
(1)素行が善良であること(素行善良要件)
 (2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
 (3)その者の永住が日本国の利益に号すると認められること(国益適合要件)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
素行善良要件とは、法律を守って人に迷惑をかけずに生活していることを指します。
 例えば、日本の法律に違反して、刑事罰を受けていないことや交通違反を繰り返していないこと等が具体例として挙げられます。もし、処罰されたことがある場合でも、特定の期間が経過すれば、許可になる可能性があります。
 特定の期間とは、懲役と禁固の場合は、刑務所から出所して10年を経過(執行猶予がついている場合は、猶予期間が満了してから5年経過)すること、罰金・拘留・科料の場合は支払いを終えてから5年経過することで、その刑は消滅したものとして扱われます。
 また、結婚されている方で、配偶者や子どもが家族滞在ビザで日本に在留している場合も注意が必要です。家族滞在ビザは、原則、就労を認められていないビザですが、資格外活動許可を得れば、週に28時間以内であれば働くことができます。ですが、週28時間を超えて働いている場合は、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行っているということになります。そして、その監督者である経営・管理ビザを持っている方も、違法行為又は風紀を乱す行為を行っている者を監督できていないということになります。この場合、家族滞在ビザの方が、就労時間を週28時間以内にしてから3年間経過しないと、永住ビザの許可は難しいです。
 これら以外にも様々なことが考えられますが、個々の状況によって判断されるため、明確な審査基準は存在しません。素行善良要件については、日常生活で法律に違反するような行動をしていなければ、心配する必要はありません。
独立生計要件とは、安定して自立した生活を継続できる能力があることを指します。
 特に、経営・管理ビザの方の場合、会社の赤字経営が続いている、又は黒字であっても借入金が多く、債務超過になっているといった状況では、独立生計要件を満たしていないと判断される可能性があります。よって、会社の経営が黒字化して2年経過してから、永住申請を考えた方がよいでしょう。
また、どれぐらいの年収があるのか?ということも重要な要素です。原則として、直近5年分の年収がチェックされます。年収額について、入管では明確な審査基準を公表していませんが、年収300万円以下の方は不許可になっているケースが多いようです。ですので、役員報酬は、永住申請をする5年前から最低でも年間300万円以上に設定してください。加えて、扶養家族が増えるごとに、60~80万円がプラスで必要とされていますので、例えば、配偶者と子どもがいる場合は、プラス140万円の440万円が年収として必要となります。
 なお、配偶者が家族滞在ビザで在留し、資格外活動許可を得てアルバイトをしている場合でも、配偶者の収入は加算されませんのでご注意ください。
国益適合要件とは,永住を認めることが日本国にとってプラスになることを指します。
 ガイドラインで4つの基準が定められていますので、それぞれ見てみましょう。
①原則として、引き続き10年以上日本に在留していること。
 「引き続き」とは、途切れることなく継続して在留していることを意味します。よって、出国が多い場合は、在留期間の積算がリセットされることがあります。例えば、1回の出国で90日以上又は1年間で半年以上出国している場合は、日本に生活基盤が無いとみなされ、永住許可が難しくなります。
 また、10年のうち直近5年間は、就労資格(経営・管理ビザ等)又は居住資格(配偶者ビザ等)で在留している必要があります。例えば、留学ビザで7年在留してから、経営・管理ビザに変更して3年在留している場合は、10年以上日本に在留していますが、この基準を満たしません。この場合、経営・管理ビザで5年在留している必要があるので、申請できるのは2年後です。
②罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務を適正に履行していること。
 公的義務とは、税金や公的年金等の保険料の納付だけでなく、入管法で規定されている届出等も含まれます。
 特に、国民年金と国民健康保険料について、納期限を守っていない場合、不許可となりますので、注意が必要です。もし、納期限を守って支払っていない場合は、永住ビザの申請をする前に、2年間、納期限を守って支払いましょう(納期限を守って支払った実績が必要です)。
 また、経営・管理ビザの場合、個人の納税状況だけでなく、会社の納税状況も審査対象になります。特に近年は、社会保険の加入の有無、社会保険料の適正納付は厳格に審査されています。会社は、社会保険(厚生年金保険および健康保険)の強制適用事業所とされ、役員一人だけで従業員がいない会社でも、社会保険に加入する義務があります。また、社会保険料は労使折半とされ、会社が保険料の半分を負担しなければなりません。経営者が永住ビザ申請を行う際には、年金事務所が発行する社会保険料納入証明書を提出しなければなりません。社会保険に加入していない場合や社会保険料を納付していない、あるいは納期遅滞がある場合には、永住ビザの審査において大きなマイナス要因になります。必ず社会保険に加入し、社会保険料を適正に納付するようにしてください。
③現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
 入管法上では5年のビザが最長になりますが、当面の間は3年のビザでも「最長の在留期間」として扱うことになっています。ですので、経営・管理ビザを持っている方でも、3年未満の在留期間で許可をされている方は、永住ビザの申請ができません。
④公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
 これは、感染症や薬物依存症でないことを意味します。
 
 かざはな行政書士事務所
代表行政書士 
 佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
 前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
 その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
 2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
 ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。
 
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