投稿日:2025年11月17日
配偶者ビザ(日本人の配偶者等・永住者の配偶者等)の申請では、「質問書」が審査を左右する重要な書類です。
実際、許可・不許可の判断は、この質問書でどれだけ夫婦関係の実態を正確かつ自然に伝えられるかにかかっていると言っても過言ではありません。しかし、初めて手続きをする方にとっては、「どこまで詳しく書けばいいの?」「書き方がよく分からない」といった不安を抱えやすいポイントでもあります。
この記事では、配偶者ビザ申請に必須となる質問書について、1ページごとに記載例を示し、書くときの注意点等を行政書士の視点から分かりやすく解説します。
まず、質問書についておさらいしましょう。
質問書とは、日本人の配偶者等ビザ又は永住者の配偶者等ビザを申請する際に求められる重要な書類です。ですが、すべての申請で求められるものではなく、以下の場合に求められます。
質問書は、申請人(結婚相手の外国人)と配偶者(日本人又は永住者)の身分情報や出会いから結婚までの経緯、家族構成等を配偶者の目線で詳しく記載する必要があります。用紙は全部で8ページに及び、正確さが強く求められるため、過去の記録を確認しながら丁寧に作成する必要があります。完成までに少し時間がかかると思いますが、焦らず事実を確認しながら進めてください。
なお、事実と異なる記載が判明すると申請が不許可になるだけでなく、最悪の場合は罪に問われる可能性もあります。提出前には申請者と配偶者の双方で記載内容に誤りがないかを十分に確認し、配偶者が署名のうえで提出するようにしましょう。
質問書の様式はこちらからダウンロードしてください(日本語版のほか、10言語の様式があります)。
それでは早速、質問書の記載例を見ながら、注意すべきポイントについて、確認していきましょう。
申請人の欄には、結婚相手の外国人の国籍・地域と氏名、性別を記載します。
氏名については、パスポートに記載されているとおりに、アルファベットで記入します。お相手が漢字圏(中国、韓国、台湾)の場合は、漢字の氏名も併記してください。
配偶者の欄には、日本人又は永住者の身分情報を記載します。
自宅の住所は、住民票の記載どおりに記入してください。
電話について、固定電話が無い場合は、「なし」と書けば問題ありません。
自宅が賃貸物件の場合は、借家にチェックを入れ、家賃や間取りも記入する必要があります。家賃には、月額家賃と月額管理費の合算した金額を記入します。間取りについて、「LDK」が最初から記載されていますが、該当する部屋が無ければ、取り消し線を加えてください(記載例では、リビングが無いため、「L」に取り消し線を加えています)。また注意したいのは、ワンルーム(単身用)を借りている場合は、本当に2人で暮らすのか疑われやすいです。その場合は、理由書等で説明する等、補強資料をつけるとよいでしょう。
職場の情報は、配偶者が勤務している会社の情報を記入します。支店で働いている場合は、支店の情報を書きましょう。提出する在職証明書と矛盾しないように気を付けましょう。
初めて会った時期は、日にちまではっきりと覚えていれば、年月日を記入してください。日にちまで分からなければ、〇月頃という記載でも大丈夫です。ここで注意すべきポイントは、「会った」時期であるということ。つまり、テレビ電話やZoomで話した日ではなく、実際に対面した日を書く必要があります。また、会った場所も具体的に記入しましょう。
初めて会ってから、結婚届を提出するまでのいきさつについては、ここで書かずに理由書にまとめることをおすすめします。よって、ここでは「別紙参照」とし、理由書に以下のポイントを押さえて記載します。理由書の例文はこちら。
各項目には、その時の印象や具体的なエピソードを添えて記載すると効果的です。できるだけ詳しく書いてください。日付については、年月日の「日」までが不明な場合は「年月」までの記載で大丈夫です。むしろ間違った情報を記載しないように気を付けましょう。
紹介者がいれば、「有」にチェックを入れ、詳細情報を記載します。紹介者が結婚相談所等、会社の場合は氏名欄に会社名を書きます。また、紹介者が外国人の場合は、在留カードの番号も必要です。一方、紹介者がいなければ、「無」にチェックを入れるのみです。
紹介者が個人の場合は、その関係性も詳しく書きましょう。ただ「友人」と書くだけですと、後で追加資料等を求められることがあります。「どこで知り合って、いつから友人となったか」等を詳しく書くとよいでしょう。
夫婦間で使われている言語については、普段夫婦のコミュニケーションで使っている言語と、それぞれの母国語を記入します。
それぞれの母国語に対する理解度を確認する項目については、特に注意しなければなりません。例えば、申請人の日本語能力がそこまで高くないのに「会話に支障なし」とした場合、追加で入管から日本語能力を立証する資料を求められることがあります。しかし、立証することができないため、不許可となる可能性が高まります。よって、絶対に嘘は書かないようにしましょう。
逆に、申請人も配偶者も「難しい=通訳が必要」にチェックを入れている場合も、「当人同士で意思の疎通が図れないのに、どうやって結婚したんだろう?」と入管から疑われ、不許可となる可能性が非常に高いです。謙遜しすぎるのも危険です。
その他、申請人の日本語学習の期間や内容、当人同士のコミュニケーションを補強するものがあれば、具体的に記載します。補強する必要が無ければ、その旨を書きましょう。(例:お互いの言葉が通じないことはありません。)
通訳者については、いる(いた)場合は詳細情報を記載し、いない場合は「なし」と記載しましょう。
国際結婚を先に日本で成立させた場合は、結婚届出時の証人2人の詳細情報を記載します。一般的には、両親や兄弟姉妹が証人になるケースがほとんどだと思います。逆にそうでない場合、なぜ親族ではないのかと入管に疑われる可能性があります。電話番号は、固定電話でも携帯電話でもどちらの番号でも大丈夫です。
海外で先に成立させた場合には、「○○で先に結婚手続きをしたため、なし」と記載しましょう。
結婚式(披露宴)を挙げている場合は、場所や年月日、出席した親族を記載します。会場名だけでは、どの地域で挙げたかが分からない場合は、「○○県○○市内の○○ホテル」等、具体的な地名も記載するようにします。なお、配偶者ビザ申請後に結婚式等を挙げる予定の場合も、年月日のあとに(予定)と加えて記載しておくと、審査が有利に進みます。場所が確定していない場合は「○○県内を予定(式場等は未定)」と記載しておきましょう。
それぞれの結婚歴についても、正直に記載する必要があります。過去の離婚が1度だけである場合には、審査に大きく影響しませんが、複数回の離婚がある場合には、結婚の安定性や偽装結婚の可能性を疑われ、審査が厳しくなる傾向にあります。疑われる可能性がある場合は、理由書ですべての離婚についてその経緯を説明し、過去の離婚を踏まえて今回の結婚にどのように向き合うかについて丁寧に説明しておいた方が良いでしょう。
申請人の来日の回数と時期については、申請人のパスポートを確認し、正確に記載します。回数がおおくてわからない場合は、「多数」回と記載します。
配偶者の来日の回数と時期についても、配偶者のパスポートを確認し、正確に記載します。なお、知り合ってから結婚までの間とは、国際結婚の手続きを日本又は海外のどちらかで先に成立させた日より前に渡航したものが対象期間となります。つまり、海外で先に国際結婚の手続きをするために渡航した場合も、知り合ってから結婚までの間に含めるということです。
申請人の退去強制歴等について、過去に不法就労やオーバーステイ等で退去強制や出国命令を受けたことがあれば「有」にチェックを入れ、詳細を記載します。退去強制を受けたことがある場合、配偶者ビザの審査では不利になる可能性があります。しかし、それ以上に注意すべきなのは、退去強制歴を隠してしまうことです。入管はこれまでの在留歴をすべて把握していますので、正直に記載することが何より大切です。
双方の親族情報を記載します。親族が亡くなっている場合は、住所欄に「死亡」と記載し、年齢と電話番号は空欄にします。外国人配偶者の親族の氏名について、漢字圏の場合は、漢字表記・アルファベット表記のどちらでも構いませんが、それ以外の場合はすべてアルファベット表記で記載します。また、携帯電話番号等が無い親族は、「なし」と記載しておきましょう。
申請人又は配偶者に子どもがいる場合に記載します。子どもが海外に住んでいる場合も必ず記載します。将来、子どもを日本に呼び寄せるためのビザ申請をした際に、入管が必ずこの質問書の記載内容を確認します。その時に質問書に子どもの情報が書かれていなければ、「何故書かなかったのか?本当にあなたの子どもなのか?」と疑義を持たれる可能性があります。面倒でも必ず書いてください。
なお2人の間に生まれた子どもについては、続柄に「長女」や「長男」と記載しますが、前婚の子どもであれば、「妻の長女」や「夫の長男」という記載になります。
2人の結婚について、知っている親族に〇を付けます。基本的には、生存している親族全員に知らせるはずですので、全員に〇を付けることができると思います。ここで、もし〇が付いていない親族がいれば、入管は疑義を持つことになります。結婚に反対している親族がいるとしても、必ず知らせましょう。
最後に、作成した年月日と署名を配偶者(日本人又は永住者)が記入し、完成です。
この記事では、配偶者ビザ申請に必須の質問書の書き方について解説しました。
質問書は、夫婦の出会いから結婚までの交際の経緯や親族の情報等を丁寧に伝えることで、審査官に「この夫婦の結婚には信ぴょう性がある」と理解してもらうための大切な書類です。
決して「上手に書く」必要はなく、事実を誠実に、矛盾なく伝えることが重要です。万が一、説明の不足や誤解が生じるような記載があると、追加書類や不許可につながる可能性もあります。不安がある場合は、早めに専門家に相談しながら進めることで、スムーズな許可につながります。
この記事が、質問書を作成する際の不安を少しでも軽くし、安心して手続きを進める手助けになれば幸いです。
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で入管業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆様を支援しています。
お電話でのお問合せ・相談予約
<受付時間>
10:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く
フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。
〒739-0041 広島県東広島市西条町寺家
10:00~18:00
土曜・日曜・祝日(予約対応可)
広島県を中心に、岡山県、山口県、島根県、鳥取県および全国オンライン対応可能