特定活動55号(特定自動車運送業準備)ビザとは

投稿日:2025年9月11日

自動車運送業分野で外国人労働者を雇用するためには、外国人が技能試験や日本語能力試験に合格するだけでなく、運転免許の外免切替や研修の修了も必要です。しかし、外国人がこれらの要件を満たすには、一定期間日本に在留する必要があります。

この記事では、外国人が自動車運送業で働くために必要な要件をそろえる準備期間として認められる「特定活動55号(特定自動車運送業準備)ビザ」について、概要・要件・注意点・申請書類までをわかりやすく解説します。

1.特定活動55号ビザとは?創設された背景

まずは自動車運送業分野の特定技能制度について、おさらいしましょう。

外国人が自動車運送業で働くことができる業務区分には、トラック、タクシー、バスの3つがあります。そして、外国人が自動車運送業の分野で特定技能ビザを取得して働くためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 18歳以上であること
    ※第一種運転免許取得の年齢要件は中型20歳以上、大型21歳以上であることに注意。
  2. 健康状態が良好であること
  3. 従事する業務に必要な知識又は経験を必要とする技能を有していることが試験等により証明されていること
  4. 日本での生活に必要な日本語能力及び従事しようとする業務に必要な日本語能力を有していることが証明されていること

3と4について、業務区分に応じて、取得する免許や受験する試験が異なります。以下、ご参照ください。

区分 技能水準 日本語能力
運転免許 特定技能試験 日本語試験等
トラック

第一種
運転免許

自動車運送業分野
特定技能1号評価試験(トラック)
下記のいずれか
・日本語能力試験N4以上
・国際交流基金日本語基礎テスト
・技能実習2号の良好終了
タクシー 第二種
運転免許
自動車運送業分野
特定技能1号評価試験(タクシー)
日本語能力試験N3以上
バス 第二種
運転免許
自動車運送業分野
特定技能1号評価試験(バス)
日本語能力試験N3以上

採用予定の外国人に内定を出す段階で、特定技能試験と日本語試験の条件をクリアしているケースが多いですが、日本の運転免許への切替については、日本に元々在留している外国人でない限り、手続きをしていない方がほとんどです。
よって、内定を出した外国人に運転免許の外免切替の手続きをしてもらう必要があります。しかし外免切替は、2025年10月1日以降、住民票の提出が義務付けられることとなったため、海外在住の外国人が、将来日本でドライバーとして勤務するために短期滞在ビザで来日しても、外免切替をすることができません。また、タクシー・バス区分で働く予定の方については、外免切替後に、新任運転者研修の修了も必要となり、一定期間、日本での在留を認める仕組みが必要です。

このような状況に対応するために創設されたのが、特定活動55号(特定自動車運送業準備)ビザです。このビザは、

外国人が外免切替と新任運転者研修の修了以外の全ての要件を満たしていれば、申請することができます​このビザを取得すれば、トラック区分で6カ月間、タクシー・バス区分で1年間の在留が認められ、その間に、特定技能1号ビザを取得するために必要な外免切替や新任運転者研修を修了することができます。また、そのような手続き等をしていない時は、車両の清掃等、関連作業に従事することも認められています。

2.特定活動55号ビザを取得するための要件

特定活動55号ビザを取得するためには、企業側も特定技能外国人を受け入れる場合と同様の内容で満たす必要があります。以下、企業側が満たさなくてはいけない要件についてご紹介します。

(1)全分野共通の要件

この中で1つでも満たさないものがあれば(欠格事由に該当すれば)、その日から5年間、特定技能外国人を受け入れることができません

  1. 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守すること
  2. 同種の業務に従事する労働者の非自発的離職者を発生させないこと(特定活動雇用契約締結の前1年及び締結後)
  3. 企業の責めに帰すべき事由で行方不明者を発生させないこと(特定活動雇用契約締結の前1年及び締結後)
  4. 関係法律による刑罰を受けていないこと(刑に処せられ、その執行後又は執行を受けることが無くなった日から5年を経過していること)
  5. 行為能力・役員等の適格性があること
  6. 実習認定の取り消しを受けた場合は、取り消しを受けてから5年が経過していること
  7. 出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行っていないこと(特定活動雇用契約締結の前5年及び締結後)
  8. 暴力団員ではないこと
  9. 特定活動外国人の活動状況に係る文書を作成し、雇用契約終了の日から1年以上保管すること
  10. 特定活動外国人とその親族が、保証金の徴収・違約金契約等を締結させられていないこと
  11. 特定活動外国人に対する義務的支援の費用を外国人に負担させないこと
  12. 企業が労災保険の適用事業所である場合、労災保険に係る保険関係の届出を適切に行うこと
  13. 特定活動外国人が継続して働くことができるように、企業が事業を安定的に継続することができる財政的基盤を持っていること
  14. 報酬の支払い方法について、基本的には預金口座への振り込みを行うこと

上記の中で、特に注意したいのが、2の非自発的離職者です。これは、会社都合で離職させた人のことを指しますが、退職勧奨や試用期間からの本採用拒否も該当しますので、気を付けてください。

(2)自動車運送業分野特有の要件

自動車運送業分野で特定活動外国人を雇用するためには、以下の要件も満たす必要があります。

  1. 道路運送法に規定する自動車運送事業を経営する者であること
  2. 下記のいずれかであること(タクシー・バス区分は①、トラック区分は①又は②)
    働きやすい職場認証の取得 ※法人単位の取得が基本
    安全性優良事業所(Gマーク)の保有 ※事業所単位での取得だが、同法人内であれば受け入れる事業所以外で保有している場合も可
  3. 自動車運送業分野特定技能協議会の構成員になり、必要な協力を行うこと
  4. 受入れ企業は、登録支援機関に特定自動車運送業準備外国人支援計画の実施を委託する場合は、協議会の構成員となっており、かつ国土交通省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
  5. タクシー運送業及びバス運送業を営む企業は、特定活動外国人に対し、新任運転者研修を実施すること(トラック運送業を営む企業は対象外)
(3)雇用形態・契約内容に関する要件

特定活動55号ビザを申請する前に、採用予定者と適法な雇用契約を結んでおくことも要件の1つです。適法な契約の条件としては、次のものが挙げられます。

  1. 労働関連法令に適合していること
  2. 業務内容がトラック・タクシー・バスのいずれかの運送業務に付随する関連業務であること
  3. 直接雇用であること ※自動車運送業分野では、派遣雇用は認められていない
  4. 所定労働時間がフルタイム(週5日以上かつ年間217日以上、かつ労働時間が週30時間以上)であること
  5. 特定活動外国人の所定労働時間が他の労働者の所定労働時間と同等であること
  6. 同等の業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上であること
  7. 特定活動外国人から一時帰国の申し出があった場合は、有給休暇の取得をさせる等の配慮をすること
  8. 特定活動外国人が雇用契約終了後、帰国に要する旅費を負担することができないときは、企業が旅費を負担するとともに、円滑に出国できるよう必要な措置を講ずること
  9. 特定活動外国人の健康状況やその他生活状況を把握するために必要な措置を講ずること
(4)支援計画を作成すること

支援計画とは、特定活動55号ビザの外国人と雇用契約を締結しようとする企業が、作成しなければならないものです。この支援計画は、外国人が、活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画です。

この支援計画には、必ず行わなければならない義務的支援行うことが望ましいとされる任意的支援に分けられますが、支援計画書に記載した場合は、任意的支援についても支援義務が生じます。そして、この支援義務を果たさない場合、欠格事由に該当することとなりますので、注意が必要です。
なお、支援計画の項目は以下のとおりです(各項目に義務的支援と任意的支援が含まれています)。

  1. 事前ガイダンスの提供
  2. 出入国する際の送迎
  3. 適切な住居の確保に係る支援や生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 公的手続等への同行
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 相談又は苦情への対応
  8. 日本人との交流促進に係る支援
  9. 非自発的離職時の転職支援
  10. 定期的な面談の実施、行政機関への通報

これらの支援計画については、全部の業務を登録支援機関に委託することができます。ですが、支援計画書の作成は登録支援機関ではできませんので、会社で作成するのが難しい場合は、ビザ専門の行政書士に依頼されることをおすすめします。

3.特定活動55号ビザの注意点

特定活動55号ビザは、自動車運送業分野において、特定技能外国人として活動するために必要な準備をさせてもらえる非常にありがたいビザですが、いくつか注意点がありますので、ご紹介します。

  • 在留期間中に外免切替や初任運転者研修を修了できない場合、在留資格の更新ができない
    ⇒帰国するしかないということです。ただし、在留期間中であれば、手続き等は何回でも行えます。
  • 外免切替や初任運転者研修を修了したら、速やかに特定技能1号ビザへの在留資格変更申請をしなければならない
    ⇒あくまで特定技能1号ビザを取得するために必要な準備を行うことに対して許可されたビザであるからです。
  • このビザでの在留期間は、特定技能1号ビザの通算期間に算入しない
    ⇒特定技能1号ビザは、通算5年が上限であるため、このルールはありがたいですね。

4.特定活動55号ビザ取得のための提出書類

それでは、特定活動55号ビザを取得するために必要な書類について、ご紹介します。今回は、中小企業が海外在住の外国人を呼び寄せるための必要書類(支援を登録支援機関に全部委託する場合)です。(申請者の状況によって、以下にご紹介した書類以外のものを求められることもありますので、ご注意ください。)
なお、自動車運送業で特定技能外国人を雇用するための全体的な流れについては、こちらの記事を参考にしてください。

【申請者に関する必要書類】

  • 460円切手を貼った返信用封筒(宛名記入)又はレターパックプラス
  • 申請人名簿(複数人について同時申請する場合)
  • 特定活動(特定自動車運送業準備)に係る提出所類一覧表(この場合、第1表、第2表の2、第3表)
  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 申請者のパスポートの写し
  • 説明書(指定の様式はこちらからダウンロードしてください)
  • 特定自動車運送業準備外国人の報酬に関する説明書
  • 賃金規定の写し(賃金規定に基づいて報酬を決定した場合のみ)
  • 特定自動車運送業準備雇用契約書の写し(申請者の署名及び申請者が十分に理解できる言語で作成すること)※
  • 雇用条件書の写し(申請者の署名及び申請者が十分に理解できる言語で作成すること)※
  • 賃金の支払の写し(申請者が十分に理解できる言語で作成すること)※
  • 年間カレンダーの写し(1年単位の変形労働時間制を採用している場合のみ。申請者が理解できる言語で作成すること) 
  • 1年単位の変形労働時間制に関する協定書の写し(採用している場合のみ)
  • 徴収費用の説明書
  • 雇用の経緯に係る説明書(申請者の署名及び申請者が十分に理解できる言語で作成すること)※
  • 職業紹介事業者に関する「人材サービス総合サイト(厚生労働省職業安定局HP)」の画面を印刷したもの(雇用契約を斡旋する者がいる場合のみ)
  • 健康診断個人票(参考様式の検診項目をすべて網羅しているもの。外国語の場合は、日本語訳も必要)※
  • 受診者の申告書(健康診断受診後の日付で作成すること)※
  • 特定自動車運送業準備外国人支援計画書(申請者の署名及び申請者が十分に理解できる言語で作成すること)※
  • 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書
  • 本国において定められた遵守すべき手続に係る書類又は遵守すべき手続がないことに係る説明書

※の書類は、外国語版(10言語)もあります。申請者が理解できる言語版での作成をおすすめします。
詳しくは、こちらでご確認ください。

【企業に関する必要書類】

【特定活動に関する必要書類】

  • 次の1~3のいずれかに該当する書類
  1. トラック区分に従事する場合
    自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック)の合格証明書の写し
    日本語能力試験(N4以上)の合格証明書の写し又は国際交流基金日本語基礎テストの判定結果通知書の写し(技能実習2号を良好に修了した者については省略可能であるが、技能実習2号良好修了者であることを証明する書類が必要)
  2. タクシー区分に従事する場合
    自動車運送業分野特定技能1号評価試験(タクシー)の合格証明書の写し
    第二種運転免許証の写し
    日本語能力試験(N3以上)の合格証明書の写し
  3. バス区分に従事する場合
    自動車運送業分野特定技能1号評価試験(バス)の合格証明書の写し
    第二種運転免許証の写し
    日本語能力試験(N3以上)の合格証明書の写し

5.まとめ

この記事では、特定活動55号(特定自動車運送業準備)ビザについて、詳しくご紹介しました。
外国人労働者が満たすべき要件もいくつかありますが、それ以上に受け入れる企業が満たすべき要件は沢山あり、企業の体制の整備や手続きの負担は大きいと思います。ですが、そのハードルを乗り越えることができれば、将来的に特定技能人材を多く受け入れることが可能になり、人手不足の解消にもつながります。

具体的な手続きや準備については、当事務所がサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

お気軽にお問合せ・ご相談ください

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
082-495-5550
受付時間
10:00~18:00
定休日
土曜・日曜・祝日(予約対応可)