投稿日:2025年5月26日
 
 日本で働くことを目的とする就労ビザには、教授ビザ、法律・会計業務ビザ、高度専門職ビザ等、たくさんの種類があります。その中で、最も多いのが、技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)です。そして、技人国ビザから永住ビザの取得を希望される方も多いです。
この記事では、技人国ビザから永住ビザを取得するための要件等を解説します。
まずは永住ビザを取得するメリットについてご紹介します。
 技人国ビザをお持ちの方が、永住ビザを取得する大きなメリットは、在留期限と就労制限が無くなり、身分が安定することです。
 技人国ビザの在留期限は、3か月、1年、3年、5年のいずれかで、在留期限が切れるまでに更新手続きが必要となります。ですが、永住ビザを取得すると、在留期限が無くなり、更新手続きが不要となります。
 また、就労活動については、技人国ビザの場合は、許可された就労活動しか行うことができませんが、永住ビザを取得すれば、就労活動の制限も無くなります。よって、起業することもできますし、接客業等の単純労働も可能となります。
 詳細は、こちらのページでも解説しておりますので、ぜひご覧ください。
永住ビザを取得するためには、3つの要件があります。
(1)素行が善良であること(素行善良要件)
 (2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
 (3)その者の永住が日本国の利益に号すると認められること(国益適合要件)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
素行善良要件とは、法律を守って人に迷惑をかけずに生活していることを指します。
 例えば、日本の法律に違反して、刑事罰を受けていないことや交通違反を繰り返していないこと等が具体例として挙げられます。もし、処罰されたことがある場合でも、特定の期間が経過すれば、許可になる可能性があります。
 特定の期間とは、懲役と禁固の場合は、刑務所から出所して10年を経過(執行猶予がついている場合は、猶予期間が満了してから5年経過)すること、罰金・拘留・科料の場合は支払いを終えてから5年経過することで、その刑は消滅したものとして扱われます。
 また、結婚されている方で、配偶者や子どもが家族滞在ビザで日本に在留している場合も注意が必要です。家族滞在ビザは、原則、就労を認められていないビザですが、資格外活動許可を得れば、週に28時間以内であれば働くことができます。ですが、週28時間を超えて働いている場合は、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行っているということになります。そして、その監督者である技人国ビザを持っている方も、違法行為又は風紀を乱す行為を行っている者を監督できていないということになります。この場合、家族滞在ビザの方が、就労時間を週28時間以内にしてから3年間経過しないと、永住ビザの許可は難しいです。
 これら以外にも様々なことが考えられますが、個々の状況によって判断されるため、明確な審査基準は存在しません。素行善良要件については、日常生活で法律に違反するような行動をしていなければ、心配する必要はありません。
独立生計要件とは、安定して自立した生活を継続できる能力を指します。
 具体的には、どれぐらいの年収があるのか?ということです。原則として、直近5年分の年収がチェックされます。年収額について、入管では明確な審査基準を公表していませんが、年収300万円以下の方は不許可になっているケースが多いようです。また、扶養人数が増えるごとに、60~80万円がプラスで必要とされています。
なお、配偶者が家族滞在ビザで在留し、資格外活動許可を得てアルバイトをしている場合、配偶者の収入は加算されませんのでご注意ください。
国益適合要件とは,永住を認めることが日本国にとってプラスになることを指します。
 ガイドラインで4つの基準が定められていますので、それぞれ見てみましょう。
①原則として、引き続き10年以上日本に在留していること。
 「引き続き」とは、途切れることなく継続して在留していることを意味します。よって、出国が多い場合は、在留期間の積算がリセットされることがあります。例えば、1回の出国で90日以上又は1年間で半年以上出国している場合は、日本に生活基盤が無いとみなされ、永住許可が難しくなります。
 また、10年のうち直近5年間は、就労資格(技術・人文知識・国際業務ビザ等)又は居住資格(配偶者ビザ等)で在留している必要があります。例えば、留学ビザで7年在留してから、技人国ビザに変更して3年在留している場合は、10年以上日本に在留していますが、この基準を満たしません。この場合、技人国ビザで5年在留している必要があるので、申請できるのは2年後です。
②罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務を適正に履行していること。
 公的義務とは、税金や公的年金等の保険料の納付だけでなく、入管法で規定されている届出等も含まれます。
 特に、国民年金と国民健康保険料について、納期限を守っていない場合、不許可となりますので、注意が必要です。もし、納期限を守って支払っていない場合は、永住ビザの申請をする前に、2年間、納期限を守って支払いましょう(納期限を守って支払った実績が必要です)。
③現に有している在留資格について,入管法に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
 入管法上では5年のビザが最長になりますが、当面の間は3年のビザでも「最長の在留期間」として扱うことになっています。ですので、技人国ビザを持っている方でも、3か月又は1年の在留期間で許可をされている方は、永住ビザの申請ができません。
④公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
 これは、感染症や薬物依存症でないことを意味します。
 
 かざはな行政書士事務所
代表行政書士 
 佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
 前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
 その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
 2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
 ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。
 
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