知っておきたい「退去強制」と「出国命令」の違い
収容や上陸拒否期間の差とは?

投稿日:2026年10月21日

在留期限を過ぎて不法残留(オーバーステイ)になったり、在留資格で認められていない活動をしたりして入管法に違反した場合、日本から退去させられる可能性があります。

その手続には、「退去強制」と「出国命令」の2つがあり、対象となる人や手続の内容、その後の日本への再入国ができるまでの期間が大きく異なります。

特に注目すべきは出国命令制度です。一定の要件を満たす不法残留者は、収容されることなく、簡易な手続で出国することができます。自ら出頭した人への大きなメリットとなる制度ですので、この記事でしっかり確認しておきましょう。

1.退去強制とは

退去強制は、不法入国や不法残留など、入管法第24条に定める「退去強制事由」に該当する外国人を、正式な手続を経て強制的に日本から退去させる制度です。

退去強制の対象となる主な行為は、次の通りです。

  • 不法入国:有効な旅券を持たずに入国した、審査を受けずに入国した、偽造旅券等を使って入国した

  • 上陸拒否事由該当者の入国:テロ行為をしたことのある方や重大な前科のある方など、上陸が認められない者が検査を避けて入国した

  • 不法残留(オーバーステイ):在留期間の更新を受けずに、在留期限を超えて残留した

  • 資格外活動違反(無許可就労):資格外活動許可を受けずに報酬を得る活動・就労をした

  • 虚偽の在留申請:偽りや不正な手段で在留資格の取得・変更・更新をした(偽装結婚による在留資格の取得なども含まれます)

  • その他:仮上陸の許可の条件違反、一時庇護の許可の取消し等

これらの行為があると、原則として退去強制の手続の対象となります。

退去強制事由が疑われると、次の流れで手続が進みます。

  • 違反調査(入国警備官):事実関係を調査します
  • 違反審査(入国審査官):退去強制事由に該当するかどうか審査します
  • 口頭審理(特別審理官):本人の主張を聞きます
  • 異議申し出に対する裁決(法務大臣):異議の申し出があった場合、法務大臣が証拠を調べて、処分を決定します
  • 文書の発付(主任審査官):法務大臣の裁決に応じて、退去強制令書等を発行します
  • 送還:退去強制が決定した場合、速やかに国外へ送還されます

原則として、手続中は収容されます(ただし、2024年6月に創設された「監理措置」制度により、収容に代わる措置で手続が進められる場合もあります)。

また、退去強制事由に該当しても、日本人と結婚して実体のある婚姻生活を送っている、日本で生まれ育った子どもがいるといった事情がある場合は、法務大臣が例外的に在留を許可する「在留特別許可」となる可能性があります。ただし、あくまで例外的・恩恵的な措置であり、該当しただけで許可されるものではありません。

2.出国命令とは

出国命令制度は、入管法違反者のうち一定の要件を満たす不法残留者について、収容をしないまま簡易な手続により出国させる制度です。

出国命令の対象となるのは、在留期間を超えて残留している方(オーバーステイ)だけです。

  • 対象になる例:観光ビザで来日し、在留期限を過ぎても残留している → 出国命令の対象となり得ます
  • 対象にならない例:偽造旅券で入国した(不法入国)、在留期限内に無許可で就労した(資格外活動違反)、偽装結婚で在留資格を取得した(虚偽申請) → いずれも退去強制手続となります

つまり、「オーバーステイはしたけれど、それ以外の違反はない」という方だけが、出国命令の対象になれます。対象となるための詳細な要件は、次の5つです。以下のすべてに該当する場合に、出国命令の対象となります。

  1. 自ら出頭したこと:入国警備官の違反調査の開始前に、速やかに出国する意思をもって自ら出入国在留管理局に出頭したこと(摘発された場合でも、違反審査による通知を受ける前に速やかに出国意思を表明すれば可)
  2. 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと:不法就労・偽装結婚等のその他の違反がないこと
  3. 一定の罪で拘禁刑に処せられたことがないこと:窃盗罪等の一定の罪による受刑歴がないこと
  4. 過去に退去強制・出国命令を受けたことがないこと:2回目は対象になりません
  5. 速やかに出国することが確実と見込まれること

​手続の流れと期間は以下のとおりです。

  • 出頭:地方出入国在留管理局に出頭して申告します(旅券または身分証明書を持参)
  • 違反調査・審査:事実関係の調査を受けます
  • 出国命令書の交付:出国すべき期限が指定されます
  • 出国:期限内に自力で出国します。出国期限内の在留は合法化されます

出頭先は、原則として8か所の地方出入国在留管理局(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・高松・福岡)又は3か所の支局(横浜・神戸・那覇)です。出頭から出国命令書の交付・出国までには概ね2週間程度かかりますので、帰国用航空券の予約時期にご注意ください。

3.退去強制と出国命令の比較

  退去強制 出国命令
対象 退去強制事由に該当する外国人 要件を満たす不法残留者のみ
手続き 正式な手続き 簡易な手続き
収容 原則収容 収容されない
出国方法 行政による送還 期限内に自力で出国
上陸拒否期間 5年(リピーターは10年)

1年

在留特別許可の可能性 あり(例外的措置) 出国後1年経過すれば上陸可能

最大の違いは、収容されるかどうかと上陸拒否期間の長さです。

4.上陸拒否期間について

退去強制・出国命令で出国した人は、原則として一定期間、日本に上陸できません。

区分 上陸拒否期間
出国命令により出国した場合 出国した日から1年
退去強制された場合(初回) 退去強制された日から5年
リピーター(過去に退去強制・出国命令の経験がある) 10年
1年以上の拘禁刑等に処せられた者、薬物関連法令違反で刑に処せられた者 上陸不可

なお、退去強制令書の発付を受けた人のうち、自費出国の許可を受けている・過去に退去強制・出国命令を受けたことがないという条件を満たす場合は、「上陸拒否期間の短縮決定」の対象となることがあります(素行等を総合考慮して判断されます)。

5.注意すべきポイント

  • 出頭しても違反状態は解消されません。入管に出頭申告しても、法務大臣から特別に在留が認められない限り、入管法違反の状態は続き、原則として就労も認められません。
  • 出国命令の出国期限を過ぎて残留すると、退去強制の対象になるとともに、刑事罰(3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金若しくは併科)の対象にもなります。出国命令を受けたら、必ず期限内に出国してください。
  • 不法入国(偽造パスポートでの入国等)は出国命令の対象外です。不法残留ではなく不法入国に当たる場合は、退去強制手続となります。
  • 出国命令を受けられるのは1回限りです。過去に出国命令を受けて出国したことがある人が再度不法残留した場合は、退去強制手続となります。
  • 空港に出頭しても、調査に時間を要するため当日出国は原則できません。事前に入管に出頭し、手続きを受けましょう。

6.よくある質問(FAQ)

Q. オーバーステイしたら、必ず収容されて強制送還されるのですか?
A. いいえ。5つの要件をすべて満たす不法残留者であれば、「出国命令」の対象となり、収容されないまま簡易な手続で出国できます。自ら出頭した人に大きなメリットがある制度です。

Q. 出国命令を受けて出国したら、もう日本に来られないのですか?
A. 1年の上陸拒否期間がありますが、それを過ぎれば通常の方法で再入国を申請できます(在留資格認定証明書の交付申請が必要です)。一方、退去強制の場合は5年、リピーターは10年です。

Q. 出頭したら、その場で合法的に働けるようになりますか?
A. いいえ。出頭申告をしても直ちに違反状態は解消されず、原則として就労も認められません。在留を希望する場合は別途、在留許可のための手続が必要です。

Q. 摘発されてからでも出国命令を受けられますか?
A. 場合によっては可能です。入国審査官からの認定通知を受ける前に速やかに出国意思を表明し、他の要件(4つ)をすべて満たせば対象となります。

Q. どのくらいの日数で出国できますか?
A. 出頭から出国命令書の交付・出国まで、概ね2週間程度です。状況(旅券の有無等)により前後するため、航空券の予約は注意してください。

Q. 以前出国命令で出国したことがあります。今回はどうなりますか?
A. 出国命令の対象は「過去に退去強制・出国命令を受けたことがない者」に限られるため、2回目は対象外です。退去強制手続となり、上陸拒否期間も10年となります。

7.まとめ

この記事では、退去強制と出国命令の違いについて解説しました。
入管法違反や不法残留(オーバーステイ)の状況は、日にちが経つほど精神的な負担も大きくなり、周囲にも相談しづらいものです。

しかし、放置して摘発を受ける(退去強制)か、自ら出頭して「出国命令」を受けるかによって、今後の日本への再入国の可能性や生活への影響は180度変わります。自ら出頭すれば、収容されることなく約2週間で出国できる道が用意されています。

「出頭するのが怖い」「自分や家族が対象になるか確かめたい」という方は、まずビザ手続きの専門家である行政書士にご相談ください。守秘義務のもと、あなたの不安に寄り添い、次のステップへ向けて全力でサポートいたします。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で入管業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆様を支援しています。

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