投稿日:2025年11月21日
特定技能外国人の雇用契約に変更が生じた場合、受入れ企業には、その内容を入管へ届け出る義務があります。ですが、どのようなケースでも届け出なければならないというものではありません。
そこで今回は、雇用契約の変更時に提出が必要となる「特定技能雇用契約の変更に係る届出書」について、どのようなケースで届出が求められるのか、そして実際に届出を行う際の注意点や届出の方法について、分かりやすく解説します。
受入れ企業と特定技能外国人の間で結ばれる雇用契約の一部に変更があった場合のうち、以下に該当する場合は入管に届出を提出する必要があります。各種様式のダウンロードはこちら。
元の雇用契約期間を短くする場合に届出が必要です。一方、雇用契約期間を長くする場合は不要です。また、来日予定日を延期した、雇用開始予定日以降に在留資格変更許可がなされた等、当初予定していた雇用開始日が変更することとなった場合であっても、雇用契約期間に変更が生じていない場合は、届出は不要です。
契約の更新の有無について、「契約の更新はしない」又は「更新する場合があり得る」から「自動的に更新する」に変更となる場合以外の変更については、届出が必要です。また「更新する場合があり得る」の更新の判断基準を変更する場合も届出が必要です。
【提出書類】
雇用条件書(第1-6号)の写し ※別紙1又は2に変更があった場合は、その別紙も添付すること。
【ビルクリーニング分野】
・建築物清掃業登録証明書又は建築物環境衛生総合管理業登録証明書
【宿泊分野】
・旅館業許可証(旅館・ホテル営業許可書)
【外食業分野】
・保健所長による営業許可書の写し
・営業許可を要しないが保健所長への届出の対象となる施設はその届出の写し
※保健所長の営業許可の名宛人が受入れ企業と異なる場合は、入管に確認すること。
次のいずれかに該当する場合、届出を提出する必要があります。
なお、特定技能外国人の指定書について、記載内容を変更する必要があるため、最寄りの入管へ持参の上、提出してください。
【提出書類】
雇用条件書(第1-6号)の写し ※別紙1又は2に変更があった場合は、その別紙も添付すること。
特定技能外国人が従事しようとする業務に必要な技能水準を有することを証明する資料(業務区分を変更した場合のみ)
次のいずれかに該当する場合、届出を提出する必要があります。
【提出書類】
雇用条件書(第1-6号)の写し ※別紙1又は2に変更があった場合は、その別紙も添付すること。
変形労働時間制に関する協定書の写し(変形労働時間制を採用又は廃止した場合/所定労働時間数・日数を変更した場合)
フルタイムではないことの理由書(労働時間がフルタイムでなくなった場合)
年間合計休日日数が減少した場合に届出が必要です。平年かうるう年かによる変更、暦上の日と曜日の対応関係が毎年変わることによる年末年始休暇日数の変更又は法令による祝日の変更に伴う年間合計休日日数の減少は届出不要です。
【提出書類】
雇用条件書(第1-6号)の写し ※別紙1又は2に変更があった場合は、その別紙も添付すること。
当初の契約より年間休暇日数を減らす場合に届出が必要です。
年次有給休暇の「継続勤務6か月未満の年次有給休暇」又は有給・無給にかかわらず、その他の休暇のいずれかの休暇を廃止する場合は届出が必要です。
【提出書類】
雇用条件書(第1-6号)の写し ※別紙1又は2に変更があった場合は、その別紙も添付すること。
直近に入管へ提出した雇用条件書の「Ⅶ.賃金」欄に、次のような変更が生じた場合(賃金の増額等、特定技能外国人にとって利益となる場合を除く)に届出を提出する必要があります。
【提出書類】
雇用条件書(第1-6号)の写し ※別紙1又は2に変更があった場合は、その別紙も添付すること。
特定技能外国人の報酬に関する説明書(第1-4号)
※在留申請時に「比較対象となる日本人」として申告した日本人の賃金改定等に伴い、特定技能外国人の賃金が変更になった場合に提出が必要です。
以前提出した雇用条件書の「Ⅷ.退職に関する事項」欄に変更が生じた場合、届出を提出する必要があります。
【提出書類】
雇用条件書(第1-6号)の写し ※別紙1又は2に変更があった場合は、その別紙も添付すること。
次のいずれかに該当する場合、届出を提出する必要があります。
【提出書類】
雇用条件書(第1-6号)の写し ※別紙1又は2に変更があった場合は、その別紙も添付すること。
受入れ企業の労働保険料等納付証明書(未納なし証明)、労働保険関係成立届の写し、労働保険の概算保健料申告書の写し等のいずれか
ここまで見てきたように、入管へ届出が必要となる雇用契約の変更は、特定技能外国人にとって不利益となり得る内容を含むことが多く、特に慎重な対応が求められます。
そのため、そもそも就業規則等の変更が、有効かつ合理的に行われているかといった点も丁寧に検討したうえで、変更後の契約内容が法令や特定技能制度の基準に適合しているかどうか、事前に十分な確認を行うことが不可欠です。
なお、届出書に添付する「雇用条件書(参考様式第1-6号)」については、変更部分のみを記載すれば足ります。ただし、これは単に書式を整えればよいというものではなく、特定技能外国人がその内容を十分に理解できる言語で記載されていること、そして内容を理解した上で署名がされていることが必須です。これらの要件が満たされていれば、雇用条件書は必ずしも参考様式を使用する必要はなく、任意の書式を用いても差し支えありません。
特定技能の制度は「本人の理解と同意」を特に重視するため、変更内容の説明や書面の作成プロセスも丁寧に進めることが、後のトラブル防止につながります。
特定技能雇用契約を変更した場合、受入れ企業は変更日から14日以内に以下のいずれかの方法で、入管に届出を行わなければなりません。
この記事では、特定技能外国人の雇用契約を変更した場合に、どのようなケースで入管への届出が必要となるのかを解説しました。
入管が特に注目しているのは、特定技能外国人にとって、どのような不利益となる契約変更があったか、また不利益となる変更があった際、その内容が適切で、本人が理解・同意しているかどうかという点です。
とは言え、企業を取り巻く環境や経済状況によっては、どうしても雇用条件を見直さざるを得ない場合もあります。そのような時は、変更内容が法令上問題ないか、本人への説明や同意が十分かを慎重に確認することが大切です。
判断に迷うケースも多いため、労働関係やビザ手続の専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で入管業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆様を支援しています。
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