更新日:2026年10月16日 投稿日:2025年11月10日
永住ビザを持っていれば、在留期間の更新がなく、日本でずっと暮らせるイメージがあります。 しかし、一定のルールを守らなかった場合、「永住者」の在留資格を取り消される可能性があります。特に2027年4月1日に施行が確定した取り消し事由の拡大については、注意が必要です。
出入国在留管理庁は2026年10月に、この新ルールの具体的な運用基準となる「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を公表しました。
この記事では、ガイドラインの内容に基づいて、どんな場合に取り消されるのか、日常生活で気をつけるポイント等を解説します。永住ビザを持っている方も、これから取得することを考えている方も、ぜひ参考にしてください。
まず、永住ビザの取り消しについて、次の2つを分けて理解することが大切です。
例えば、在留カードをうっかり携帯していなかった、10年に1度の在留カードの更新期限をうっかり過ぎてしまった、という場合でも、取消事由には該当します(故意でない過失の場合でも該当すると、ガイドラインで明記されました)。
ただし、その一度のミスだけで在留資格を取り消すことは想定されていません。対象となるのは、「繰り返し指導されても無視した」「明らかに義務を果たす意思がない」等、悪質なケースに限られます。
それでは、永住ビザが取り消される主なケースを具体的に見ていきましょう。
在留カードの携帯・提示・更新・再交付といった入管法上の基本的な義務を守らないことは永住ビザの取消事由になります。
具体的には、次のようなケースが該当します。
前述のとおり、うっかりした一度のミスですぐに取り消されることは想定されていませんが、繰り返しの指導にもかかわらず更新や携帯をしない場合は、取り消しの対象となり得ます。
また、在留カードの有効期限の更新は、期限が切れる2か月前から更新が可能です。更新忘れを防ぐためにも、期限は早めに確認しておきましょう。なお、16歳未満のお子様の在留カードは、16歳の誕生日の前の6か月前から更新が可能です。
新しい住居に住み始めてから14日以内に、居住地の市町村役場に新しい住所を届け出る必要があります。ですが、期限内にこの手続きをしない場合、20万円以下の罰金が科せられる場合があります。そして、引っ越してから90日を経過して手続きをしない場合は、永住ビザの取り消しの対象になります。また、虚偽の住所を届け出た場合も、永住ビザの取り消しの対象となります。
同じ市町村内での転居であれば、転居届を提出すれば大丈夫です。一方、異なる市町村への転居であれば、転居前の市町村役場で転出届を提出し、転居後の市町村役場で転入届を提出する必要があります。いずれにしても難しい手続きではありませんので、引っ越しをしたら、速やかに正しく届け出ることが大切です。
永住ビザを取得するために、様々な書類を提出していると思いますが、この提出書類の中に、虚偽の内容があることが発覚した場合は、永住ビザの取り消し対象となります。
例えば、日本人の配偶者等ビザを持っている方が永住ビザを得たものの、後で婚姻関係が無かったことや婚姻関係が破綻していたことが発覚したり、技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)の方が永住ビザを得たものの、技人国ビザでは就労が認められない現場作業を主な仕事として働いていたことが発覚したりするケースです。つまり、永住ビザ取得前に持っていた在留資格の条件を満たさない(又は在留状況が悪い)事実が発覚した場合がこのケースに当てはまります。
永住ビザを目指すなら、許可された在留資格で認められている活動の範囲内で、ルールを守って暮らすことが大切です。
これまでも、1年を超える実刑に処せられた場合や薬物事件により有罪の判決を受けた場合は、退去強制の対象となり、永住ビザが取り消されるという運用でした。しかし、2027年4月からは、窃盗、詐欺、恐喝、傷害、住居侵入、賭博、文書偽造、危険運転致死傷などの一定の罪で拘禁刑(懲役・禁固)に処せられた場合、永住ビザの取消事由になります。
ここで大切なポイントは次の2つです。
例えば、窃盗や詐欺で執行猶予付きの判決を受けた場合、これまでは永住ビザへの影響はありませんでしたが、2027年4月1日以降は取消事由に該当することになります。
一方、駐車違反等の軽微な交通違反は、対象となる罪には含まれません。また、交通違反の罰金・反則金は「公租公課」に含まれないため、納税状況の観点からも影響はありません。
永住ビザに限ったことではありませんが、日本で暮らす以上、法律を守り、犯罪に関わらないよう気をつけることが大切です。
永住ビザは、原則10年以上日本に在留し、法律や納税等、日本のルールを守って暮らしている外国人に認められる在留資格です。しかし、永住ビザを取得した途端に、税金や社会保険料を支払わない人が一定数いることから、ルールが厳格化され、故意に税金や社会保険料等を払わない永住者を永住ビザの取り消しの対象とすることとしました。この厳格化は、2024年の入管法改正で決定され、2027年4月から施行されます。
「故意に」の判断基準は、次の両方を満たす場合に限られます。
上記1、2を満たしていても、すぐに永住ビザを取り消すわけではなく、悪質な人に限るとされています。ガイドラインでは、次のような事例が示されています。
【該当しやすいと想定される事例】
【該当しないと想定される事例】
なお、手数料・利用料や、交通違反による罰金・反則金は「公租公課」に含まれません。
この改正には、経過措置が無いため、2027年4月施行前の未納や滞納も、施行後に判明した場合は永住ビザの取り消し対象となり得ます。ただし、ガイドラインでは、施行前の一時点の事情だけですぐに取り消すものではなく、その後の支払状況なども含めて判断するとされています。
もし、現時点で税金等に未納や滞納があれば、できるだけ早く支払う(または分納や猶予の相談をする)ことが、最も確実な対策です。支払の意思を示して相談している状況は、ガイドライン上「該当しない事例」とされています。
国や地方公共団体の職員が、職務の過程で取消事由に該当すると思われる外国人を見つけた場合、入管へ通報できる制度があり、ここから発覚するケースがほとんどです。
例えば、次のような場面が通報のきっかけとなり得ます。
ただし、通報があっても、すぐに取り消しになるわけではありません。法務大臣は、永住ビザを取り消すかどうかを決める前に、入管職員が事実関係を詳しく調べ、本人や代理人に説明の機会(意見聴取)を設けます。本人はそこで事情を話したり、証拠を出したりできます。つまり、いきなり取り消しになることはありません。
最終的な判断は調査結果に基づき慎重に行われ、不服がある場合は裁判で争うこともできます。
永住ビザが取り消された場合でも、すぐに国外退去になるわけではありません。
取り消された外国人が、日本に在留することが適当でないと認める場合でなければ、法務大臣が職権で永住ビザ以外のビザに変更することとしています。具体的にどのビザになるかは、その外国人の活動状況等によりますが、多くの場合は「定住ビザ」への変更が想定されています。とは言え、今後も納税しない意思が明らかである等、在留状況が良くないと判断された場合は退去を求められることもあります。
また、職権変更後に改めて永住許可の要件を満たせば、再度永住許可を申請することも可能です。取り消されたからといって、二度と永住ビザを取得できないわけではありません。
それから、永住者本人のビザが取り消されても、その配偶者や子どもが、家族であることを理由として在留資格の取り消しや永住ビザ以外のビザへの変更の対象となるわけではありません。ただし、配偶者のビザが、永住者の配偶者等ビザの場合は、定住ビザ等に変更されることがあります。
永住ビザは、取り消されるだけでなく、失効することもあります。次のような場合には自動的に効力を失います。
再入国許可を取らずに日本を出国した場合
みなし再入国許可を取って出国したものの、1年以内に戻らなかった場合
再入国許可を取って出国したものの、5年以内に戻らなかった場合
これらに該当すると、永住ビザが失効してしまい、もう日本に永住者として入国できません。この場合、「永住ビザが取り消された」というより、「再入国期限を過ぎて無効になった」 という状態です。
永住ビザが失効した後に再び日本に住みたい場合は、在留資格認定証明書の申請からやり直しとなります。他のビザで日本に入国し、一定期間日本に在留した後、再び永住ビザの申請をする必要があります。
海外に長期間滞在する予定がある方は、必ず再入国許可の有効期限を確認し、必要に応じて延長手続きをしましょう。なお延長手続きは、最寄りの日本国大使館等で申請可能です。相当の理由がある場合に限り、1年を超えない期間で延長できます(みなし再入国許可は延長不可)。
Q. 在留カードをうっかり携帯していなかっただけで、取り消されますか?
A. 取消事由には「該当」しますが、一度のミスで取り消されることは想定されていません。ただし、繰り返しの指導にもかかわらず携帯や更新をしない場合はリスクが高まります。
Q. 税金を少し滞納しただけで取り消されますか?
A. いいえ。「故意に」支払わなかった場合、つまり支払意思がないことが明白な場合が対象です。病気や失業などやむを得ない事情がある場合や、分納・猶予の相談をしている場合は該当しません。
Q. 執行猶予付きの有罪判決でも対象になりますか?
A. 2027年4月1日以降は、対象となる一定の罪(窃盗・詐欺等)で拘禁刑に処せられた場合、執行猶予付きでも取消事由に該当します。
Q. 働いている会社が社会保険料を納めていなかった場合も対象になりますか?
A. いいえ。給与から控除されていたにもかかわらず会社が納付していなかった場合は、本人の責任ではないため「該当しない事例」とされています。
Q. どうやって発覚するのですか?
A. 税務署や市区町村などの国・地方公共団体の職員が、職務の過程で把握した事実に基づいて、入管へ任意で通報する仕組みです。一般の方からの通報制度ではありません。
Q. 取り消されたら、もう日本で暮らせませんか?
A. いいえ。原則として職権で「定住ビザ」等への変更が行われます。その後、改めて永住許可の要件を満たせば、再度永住許可を申請することも可能です。
永住ビザは、「日本でずっと暮らせる権利」であると同時に、「社会のルールを守る責任」も伴います。
多くの永住者には影響のない取り消し事由の拡大ですが、うっかりでも取消事由に該当する可能性があること、悪質なケースでないと実際の取り消しには至らないことを正しく理解して、日頃から在留カードの管理と税金等の納付をきちんと行うことが大切です。
永住者としての暮らしに少しでも不安を感じたときは、一人で悩まず、ビザに詳しい行政書士等の専門家に相談してみましょう。
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で入管業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆様を支援しています。
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