フィリピン人との国際結婚の手続きについて

投稿日:2025年9月1日

日本人とフィリピン人の国際結婚の手続きは、どこで先に手続きを行うかによって、その流れが大きく変わります。

具体的には、

  • 日本で先に手続きをする場合
  • フィリピンで先に手続きをする場合

の2つのパターンが存在します。

この記事では、それぞれのパターンに沿って、必要な書類や手続きの流れを解説します。複雑に思える手続きも、1つずつクリアしていけば、必ずゴールにたどり着けます。この記事を参考に、スムーズに手続きを進めていきましょう。

1.結婚できる年齢について

まずはじめに、結婚の手続きを進めるにあたって、自分や相手が結婚できる年齢であるかどうかを確認する必要があります。国によって、結婚できる年齢が異なるため、とても重要な確認事項です。

日本人とフィリピン人との国際結婚の場合、日本もフィリピンも、法律で男女ともに18歳以上であることを定めていますので、18歳以上の男女であれば結婚可能です。ただし、フィリピン人については、18歳以上20歳以下の場合は、両親の同意書が必要ですし、21歳以上25歳以下は両親の承諾書が必要です
なお現時点で、同性婚については両国とも認めていません。

2.日本で先に手続きをする場合

結婚予定のフィリピン人の方が、日本に在留している場合(短期滞在ビザでの在留を含む)は、日本での手続きを先に進めた方がスムーズです。まずは日本で先に手続きする場合について解説します。

(1)お住まいの市区町村役場に必要書類を確認する

最初に、日本人が住んでいる市区町村役場に結婚手続きに必要な書類を確認します。役場によって、必要な書類が異なる場合がありますので、必ず確認してください。なお、一般的によく求められる書類は以下のとおりです。

【日本人が用意するもの】

  • 婚姻届
  • 戸籍謄本(本籍地以外の役場に提出する場合)

’【フィリピン人が用意するもの】

  • フィリピン外務省の認証済みのPSA発行の出生証明書
  • フィリピン外務省の認証済みのPSA発行の婚姻要件具備証明書
  • 上記2つの書類の日本語翻訳文 ※業者に依頼しても、自分たちで翻訳しても大丈夫です
  • パスポート
  • 在留カード(ある場合のみ)
(2)管轄の駐日フィリピン大使館・総領事館で婚姻要件具備証明書を取得する

次に、結婚予定のフィリピン人が住んでいる(短期滞在の場合は、結婚予定の日本人が住んでいる)地域を管轄する駐日フィリピン大使館又は総領事館に連絡し、婚姻要件具備証明書を取得するために必要な書類等を確認します。そして、その必要書類を持って駐日フィリピン大使館又は総領事館で直接手続きをする(2人そろって窓口に行く必要があります)か、郵送請求をして、証明書を取得します。ただし、郵送請求の場合、記入済みの申請用紙を日本の公証役場で公証する必要がありますので、注意してください。以下は、在東京フィリピン大使館で求める必要書類となります(管轄する公館によって異なる場合がありますので、HPや電話で必ず確認してください)。

【婚姻要件具備証明書に必要な書類(フィリピン人が初婚の場合)】

  • 記入済み申請用紙 ※様式は管轄の大使館・総領事館のものを使用してください
  • 日本人とフィリピン人のパスポート(原本提示+データページのコピー1部)
  • フィリピン人の在留カード(原本提示+データページのコピー1部)
  • フィリピン外務省認証済みのPSA発行の出生証明書(原本+コピー1部)
  • フィリピン外務省認証済みのPSA発行の独身証明書(CENOMAR)(原本+コピー1部)
    ※独身証明書に記載されるフィリピン国籍者の情報は、PSA発行の出生証明書の記載内容と一貫しているか、同一であること(独身証明書は発行日より6カ月間有効)
  • 日本人の戸籍謄本
  • 日本人とフィリピン人のパスポートサイズの証明写真 (各3枚)
  • レターパックプラス(600円) ※返信用
  • 18歳から25歳の初婚のフィリピン人の追加書類:両親の同意宣誓供述書または承諾宣誓書
    a) 18歳以上20歳以下の場合 : 両親の同意書  
    b) 21歳以上25歳以下の場合 :両親の承諾書   

 ※注意※  
  両親がフィリピンに居住している場合:フィリピンの公証役場で公証後、フィリピン外務省で認証したものを提出
  両親が日本に居住している場合:管轄の大使館等に来館し、作成して提出
  両親が亡くなっている場合:フィリピン外務省認証済みのPSA発行の死亡証明書を提出

【婚姻要件具備証明書に必要な書類(フィリピン人に離婚歴がある場合)】

  • 記入済み申請用紙 ※様式は管轄の大使館・総領事館のものを使用してください
  • 日本人とフィリピン人のパスポート(原本提示+データページのコピー1部)
  • フィリピン人の在留カード(原本提示+データページのコピー1部)
  • フィリピン外務省認証済みのPSA発行の出生証明書(原本+コピー1部)
  • フィリピン外務省認証済みのPSA発行の婚姻記録証明書(原本+コピー1部)
    ※婚姻記録証明書に記載されているフィリピン人の情報は、PSA発行の出生証明書の記載内容と一貫しているか、同一であること(婚姻記録証明書は発行日より6カ月間有効
  • フィリピン外務省認証済みのPSA発行の結婚証明書又は婚姻届(離婚承認注釈付き)(原本+コピー1部)
  • フィリピン外務省認証済みのフィリピン裁判所発行の外国離婚承認審判書と確定証明書(原本+コピー1部)
  • 日本国内における離婚の記録
    a. 前配偶者が日本国籍者の場合:戸籍謄本(離婚日の記載があるもの)
    b. 前配偶者が外国籍の場合:離婚届受理証明書 (離婚日の記載があるもの)
  • 日本人の戸籍謄本
  • 日本人とフィリピン人のパスポートサイズの証明写真 (各3枚)
  • レターパックプラス(600円)※返信用

その他、婚姻解消したフィリピン人の場合や配偶者と死別したフィリピン人の場合で、提出書類が異なります。詳しくは管轄の大使館・総領事館にお尋ねください。

【大使館・総領事館の管轄地域】

  1. 在東京フィリピン大使館 領事部:北海道、秋田県、青森県、山形県、宮城県、岩手県、福島県、栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、東京都
  2. 在大阪フィリピン総領事館:滋賀県、三重県、京都府、奈良県、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、山口県、岡山県、広島県、香川県、徳島県、高知県、愛媛県、福岡県、大分県、佐賀県、熊本県、長崎県、宮崎県、 鹿児島県、沖縄県
  3. 在名古屋フィリピン総領事館:愛知県、岐阜県、福井県、石川県、長野県、新潟県、静岡県、富山県、山梨県
(3)お住まいの市区町村役場に婚姻届等を提出する

無事、婚姻要件具備証明書を取得できたら、その翻訳文も準備して、お住まいの市区町村役場で婚姻届と必要書類を提出します。この手続きで、日本における婚姻関係の手続きは完了です。
ですが、フィリピンに結婚の報告をする必要があるため、その手続きで求められる婚姻届記載事項証明書を取得したい旨も併せて窓口で伝えましょう。取得までに数日から10日程度かかります。

(4)駐日フィリピン大使館・総領事館に婚姻記載事項証明書等を提出する

日本で先に結婚手続きを行った場合、その事実をフィリピン政府に報告する必要があります。
管轄の駐日フィリピン大使館・総領事館に以下の書類を提出することで、報告的手続きが完了します(郵送申請も可能)。婚姻日から1年以内に手続きをする必要があります

  • 記入済み婚姻届出書
  • 日本人とフィリピン人のパスポート(原本提示 + 夫、妻それぞれのデータページコピー4部も必要)
  • 婚姻届記載事項証明書(原本 + コピー4部)
  • 戸籍謄本(原本 + コピー4部) ※婚姻の事実が記載されているもの
  • 遅延届宣誓供述書 ※日本での婚姻後、1年を経過してフィリピン政府へ婚姻届を提出される場合のみ
  • 日本人とフィリピン人のパスポートサイズの証明写真 (各3枚)
  • レターパックプラス(600円)※返信用
  • 申請手数料
(5)入管に配偶者ビザの申請をする

フィリピン人との国際結婚が成立したら、配偶者ビザへの変更許可申請又は認定証明書交付申請を行います。ここまでの国際結婚の手続きの中で、最も難しい手続きです。
中長期の在留資格を持つ方が変更許可申請を行う場合についてはこちらを、短期滞在ビザ(90日)から手続きを行う場合はこちらをご覧ください。

配偶者ビザには様々なメリットがあります。例えば、配偶者ビザは、就労制限が無く、自由に働くことができます。アルバイトだけでなく、正社員や会社経営等、様々な働き方をすることができます。また、永住権の取得についても、配偶者ビザの方は要件が緩和されており、永住申請しやすいです。
とは言え、配偶者ビザは審査が厳しく、結婚しているからといって絶対に得られるビザではないため、入念に申請準備することをおすすめします。

3.フィリピンで先に手続きを進める場合

結婚予定のフィリピン人の方がフィリピンに在住している場合は、フィリピンでの手続きを先に進めた方がスムーズです。日本人はノービザ(30日以内)でフィリピンに渡航できるからです。とは言え、日本で先に手続きをするよりも時間がかかりますので、1回の渡航ですべての手続きが完了しない可能性が高いことを覚えておいてください。
ここからはフィリピンで先に手続きする場合について解説します。

(1)日本人の婚姻要件具備証明書を取得する

まず、結婚予定の日本人がフィリピンでの結婚の条件を満たしていることを証明する書類(婚姻要件具備証明書)が必要です。婚姻要件具備証明書は、フィリピンにある日本国大使館・総領事館で取得します
婚姻要件具備証明書を取得するために必要とされる一般的な書類等は、以下のとおりです。詳しくはこちらもご覧ください。

  • 申請書
  • 日本人の戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの) ※離婚歴のある方は改正原戸籍、除籍謄本(発行から6か月以内のもの)も必要
  • 日本人のパスポート

  • フィリピン人のPSA発行の出生証明書

  • 手数料 ※交付時に現金で支払う

申請の翌日(申請が午後の場合は翌日の午後)に、婚姻要件具備証明書が交付されます。交付されたら、コピーも取っておきましょう。

(2)フィリピンの役場で婚姻許可証を取得する

婚姻要件具備証明書を取得したら、結婚予定のフィリピン人が住んでいる市区町村役場で結婚許可証の取得申請をします。事前に必要書類等を必ず確認してください。役場によっては、2人そろって家族計画講習を受けることが条件となるところもあります。

婚姻許可証の発行は、申請者の氏名等を10日間継続して地方民事登録官事務所に公示された後、特に問題が無ければ発行されます。婚姻許可証はフィリピン国内で120日間有効のため、その間に挙式を行います

(3)挙式後、婚姻証明書を取得する

フィリピンでは、婚姻を挙行できる権限のある人(婚姻挙行担当官:牧師、裁判官等)が法律で定められており、この婚姻挙行担当官と成人2人以上の証人の前でカップルが婚姻の宣誓を行い、カップルと証人が婚姻証明書に署名し、婚姻挙行担当官が認証することにより、婚姻が成立します。

婚姻後15日以内に、婚姻証明書が婚姻挙行担当官より挙行地の市区町村役場に送付され、地方民自登記官により登録が行われます。登録が完了すると、その役場で婚姻証明書の謄本を入手することができます。この婚姻証明書の謄本が日本への報告的届出で必要となります。

(4)日本の役場へ報告的届出を行う

フィリピンで結婚が成立したら、その事実を日本の戸籍に反映させるための手続きを行います。お住まいの市区町村役場で3か月以内に手続きを行いましょう。日本の役場で手続きをした方が、戸籍に婚姻事実が記載されるまでの時間が短いため(1週間程度)、おすすめですが、引き続きフィリピンに滞在する場合は、フィリピンにある日本大使館・総領事館で手続きを行うこともできます。ただし、婚姻事実が記載されるまでに2か月ほどかかりますので、注意してください。日本の役場への報告的届出に際して、必要とされる一般的な書類は以下のとおりです(必ず届出を行う役場に事前に確認してください)。

  • 婚姻届
  • 日本人の戸籍謄本(本籍地以外の役場に提出する場合)
  • フィリピン人のPSA発行の婚姻証明書 
  • フィリピン人のPSA発行の出生証明書
  • 上記2つの日本語翻訳文 ※業者に依頼しても、自分たちで翻訳しても大丈夫です

この手続きが完了して初めて、日本でも法的に婚姻が成立したことになります。

(5)入管に配偶者ビザの認定証明書交付申請をする

フィリピン人との国際結婚が成立し、フィリピン人配偶者と日本で暮らす場合は、フィリピン人配偶者を日本に呼び寄せるために、配偶者ビザの認定証明書交付申請を行います。ここまでの国際結婚の手続きの中で、最も難しい手続きです。詳しくはこちらをご覧ください(この手続きで婚姻の記載がある戸籍謄本を求められるため、日本国内の役場で報告的届出をした方がスムーズに手続きできます)。
配偶者の呼び寄せについても、審査が厳しく、結婚しているからといって絶対に得られるビザではないため、入念に申請準備することをおすすめします。

4.まとめ

この記事では、日本人とフィリピン人の国際結婚手続きについて、日本で先に進める場合とフィリピンで先に進める場合、それぞれの流れを詳しく解説しました。
この2つのケースを比較すると、

  • 結婚予定のフィリピン人が日本在住(滞在)なら、日本で先に手続き
  • 結婚予定のフィリピン人がフィリピン在住なら、フィリピンで先に手続き

が、全体的な流れとしてスムーズである場合が多いです。ですが、フィリピンで先に手続きをする場合、婚姻許可証の有効期間内にフィリピンで挙式をしなければならず、日本で先に手続きをする場合よりも、やらなければならないことが増えますし、時間もかかります。よって、お二人でしっかり相談して、どちらで先に手続きをされるか、決められるとよいと思います。どのような道を選ばれるにしても、お二人の結婚手続きが円滑に進み、新しい生活が素晴らしいものになることを心より願っています。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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