特定技能1号の通算在留期間とは?
~最新の改正内容から注意点を解説~

投稿日:2025年10月4日

特定技能1号ビザは、通算で最長5年間の在留が認められています。この「通算在留期間」の扱いについては、企業の雇用計画に直結する重要なルールですが、2025年9月30日付でその一部が見直されました。
これまでのルールから変更があり、外国人材を受け入れている企業にとっては、雇用計画や契約更新の判断に直接影響する可能性があります。

この記事では、今回の改正内容をわかりやすく整理するとともに、企業が注意すべきポイントもご紹介します。
特定技能外国人を受け入れている、あるいは今後受け入れを検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

1.通算在留期間のおさらい

特定技能1号ビザには、通算で最長5年間という在留期間の上限が定められています。この通算在留期間は、どの特定産業分野においても共通です。なお、この在留期間の起点は、働き始めた日ではなく、在留カードを受け取った日になりますので、注意してください。
それでは、在留カードを受け取って日本に在留している間、特定技能外国人に何が起こっても、すべて通算期間に含めるのでしょうか?病気や怪我等で一時的に働けなくなったり、急遽一時帰国しなくてはいけなかったり、様々なことが起こる可能性は、誰にだってあります。

このような状況を想定し、入管は通算期間に含めるものと含めないものを分けて定めています。今回の改正でこのルールがより具体的に示されましたので、一緒に見ていきましょう。

2.通算在留期間に含めるケース

それではまず、通算在留期間に含めるケースをご紹介します。

  1. 失業中の期間
  2. 再入国許可による出国(みなし再入国許可による出国を含む。)の出国期間
  3. 1号特定技能外国人の在留諸申請中の特例期間
  4. 特定技能1号への移行準備のために就労活動を認める特定活動で在留していた期間 
(1)失業中の期間

転職活動中の失業期間は通算在留期間に含まれます。

(2)再入国許可による出国の出国期間

休暇中の一時帰国や旅行等による出国で日本を離れていても、通算在留期間に含まれます。ただし、産前産後休業期間・育児休業期間や病気・怪我による休業期間に出国している期間は、通算在留期間に含まれません

(3)1号特定技能外国人の在留諸申請中の特例期間

特例期間とは、在留カードを持っている外国人が、在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請をした場合に、その申請に対する処分(許可・不許可)が、現在持っている在留カードの在留期限までになされない時に、その在留期限から最長で2ヶ月間は、引き続き現在のビザで日本に在留できるというものです。そして、この特例期間も通算在留期間に含まれます。

(4)特定技能1号への移行準備のために就労活動を認める特定活動ビザで在留していた期間

特定技能1号ビザに変更を希望する外国人で、現在持っている在留カードの在留期限までに申請に必要な書類を揃えることができない等、移行のための準備に時間を必要とする場合には、特定技能1号で就労予定の受入れ企業で働きながら、移行のための準備を行うことができるよう、「特定活動(6月・就労可)」への在留資格変更許可申請を行うことができます。そして、この特定活動ビザで在留していた期間も通算在留期間に含まれます。

3.通算在留期間に含めないケース

つづいて、通算在留期間に含めないケースをご紹介します。

  1. 再入国許可により出国(みなし再入国許可による出国を含む。)したものの、やむを得ない事情により再入国できなかった期間 
  2. 本人の責任ではない事情で、日本での雇用を維持するために特定活動ビザで在留した期間
  3. 産前産後休業期間・育児休業期間   
  4. 病気・怪我(労災を含む。)による休業期間  
(1)再入国許可により出国したものの、やむを得ない事情により再入国できなかった期間

再入国許可による出国(みなし再入国許可による出国を含む。)の出国期間中も、特定技能1号ビザは継続されますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための上陸を拒否する措置等のやむを得ない事情により、再入国することができなかった期間は、5年の通算在留期間には含めないこととされています。

ただし、この取扱いを希望する場合は、5年の通算在留期間が満了する前(おおむね3ヶ月前)に、「再入国出国期間に関する申立書」とやむを得ない事情により再入国できなかったことを疎明する資料とともに、この期間に応じた在留諸申請をしなければなりません。申立書や資料から該当期間が確認でき、その在留を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、許可されます。 

(2)本人の責任ではない事情で、日本での雇用を維持するために特定活動ビザで在留した期間

新型コロナウイルス感染症の影響により、受入れ企業(又は受入れ予定企業)の経営状況の悪化(倒産、人員整理、雇止め、採用内定の取消し等)等により、やむを得ない事情でその企業で活動することができなくなり、現在の特定技能1号ビザで日本に引き続き在留することが困難となった外国人や予定された技能実習を修了した技能実習生のうち、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に伴う空港の閉鎖や移動の制限等を受けて、帰国が困難となった外国人が、日本での雇用を維持するため、特定産業分野において、特定技能の業務に必要な技能を身に付けるために、特定活動ビザで在留した期間は、通算在留期間には含めないこととされています。

(3)産前産後休業期間・育児休業期間

まず、産前産後休業期間とは、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)・産後8週間を指します。次に、育児休業期間とは、子どもが1歳に達するまで(保育所等に入所できない場合に限り、1歳6か月まで(再延長で2歳まで)。育児休業を延長した場合には、当該期間)を指します。そして、これらの期間で、1号特定技能外国人として活動が行えない期間を通算在留期間に含めないとされています。

休業期間中も特定技能1号ビザは継続されますが、当該期間は通算在留期間には含めないこととするため、この取扱いを希望する場合は、5年の通算在留期間が満了する前(おおむね3ヶ月前)に、「休業期間に関する申立書」、母子健康手帳の写し、疎明資料等とともに当該期間に応じた在留諸申請をしなければなりません。疎明資料等から該当期間が確認でき、その在留を適当と認めるに足りる相当の理由がある時に限り、許可されます。 

(4)病気・怪我による休業期間

病気・怪我による休業期間とは、原則1年以下(労災による病気・怪我に起因する休業の場合はその事情に鑑み、休業期間が3年以下)であり、1号特定技能外国人として活動が行えない期間を指します。ただし、休業期間は、連続した1ヶ月を超える期間である必要があります。ですので、例えば、体調不良等を理由として数日間自宅で療養する場合や、断続的な通院により業務が行えない場合は対象外となります。   

休業期間中も特定技能1号ビザは継続されますが、当該期間は通算在留期間には含めないこととするため、この取扱いを希望する場合は、5年の通算在留期間が満了する前(おおむね3ヶ月前)に、「休業期間に関する申立書」、医師の診断書、疎明資料等とともに当該期間に応じた在留諸申請をしなければなりません。疎明資料等から該当期間が確認でき、その在留を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、許可されます。 

4.通算在留期間に含めない取扱いを希望する場合の企業の対応

上記の産前産後休業・育児休業や病気・怪我(労災を含む。)による休業期間を通算在留期間に含めない取扱いを受けるためには、休業の原因となった事由が発生した際に、受入れ企業が遅滞なく(14日以内に)「受入れ困難に係る届出」を行っていなければなりません

5.特定技能2号評価試験に不合格となった場合の救済措置

今回の改正で、特定技能2号での受入れが認められている特定産業分野に係る特定技能2号評価試験等に不合格となった1号特定技能外国人のうち、以下の要件を満たしている場合は、通算在留期間が5年から6年に延長されることとなりました。ただし、在留期間更新許可申請の手続きが必要です。

  1. 特定技能外国人が次のいずれにも該当すること
    ① 分野別運用方針に定める「特定技能2号」への移行に必要な全ての試験について、合格基準点の8割以上の得点を取得していること
    疎明資料から当該要件を満たしていることが明らかである場合に限ります。産業分野によって、試験結果通知書の発行日によって、対象となる試験かどうか分かれますので、必ず確認してください。(例:外食業は2025年6月30日以降に発行された試験結果通知書で不合格となり、上記条件を満たす場合が対象)
    ②5年の通算在留期間経過後の在留継続期間中に
    ア 合格基準点の8割以上の得点を取得した特定技能2号評価試験等の合格に向けて努力し、かつ、同試験等を受験すること
    イ 特定技能2号評価試験等に合格した場合、速やかに「特定技能2号」の在留資格変更許可申請を行うこと
    ウ 特定技能2号評価試験等に合格できなかった場合、速やかに帰国することを誓約していること  
  2. 受け入れ企業が次のいずれにも該当する こと  
    当該1号特定技能外国人を引き続き雇用する意思があること
    特定技能2号評価試験等の合格に向けた指導・研修・支援等を行う体制を有すること  

6.通算在留期間を調べる方法

通算在留期間の起点が、働き始めた日ではなく、在留カードを受け取った日であることから、自社の特定技能外国人について、場合によってはその起点がいつなのかよく分からず、現在の通算在留期間がはっきりしない場合もあると思います。そのような場合は、入管から特定技能外国人の出入国記録を取り寄せて、計算する方法があります。

出入国記録を開示請求する際は、請求書の余白に「通算在留期間の確認のため」と明記してください。詳細は、こちらのページをご確認ください。請求してから約1ヶ月で届きます。

なお、出入国記録は、特定技能外国人本人の出入国歴のほか、付与された在留資格や許可年月日等を記載したものなので、通算在留期間の算定結果はされていません。よって、手元に届いたら、自分で通算在留期間を計算するしかありません(入管に聞いても教えてくれません)。計算方法としては、1ヶ月に満たない端数については、端数同士で合算し、30日をもって1ヶ月とし、その余りは切り捨てとなります。

7.まとめ

今回の改正により、特定技能1号の通算在留期間の扱いがより明確化されましたが、その分、企業側の管理責任も重要になっています。現在在籍している特定技能外国人の通算期間を必ず確認し、契約更新や雇用計画に反映させることが不可欠です。
制度の理解や運用に不安がある場合は、専門家に相談することで、トラブルを未然に防ぎ、安心して外国人材を受け入れることができます。当事務所でも、特定技能に関する様々なご相談に対応しておりますので、ぜひお気軽にお問合せください。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。

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