投稿日:2025年9月29日
 
 近年、日本では少子高齢化の影響により、多くの業界で人手不足が深刻化しています。特に介護・外食・建設・自動車運送業等の分野では、国内人材の確保だけでは追いつかない状況が続いています。
 その解決策の一つとして注目されているのが「特定技能制度」です。
 技能試験や日本語能力試験を通じて、一定の基準を満たした外国人を雇用できる制度であり、即戦力として活躍が期待できます。
この記事では、特定技能外国人を雇用する際のメリットとデメリットを整理し、特定技能外国人の雇用を検討する企業が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。
特定技能制度は、特定の産業分野における深刻な人手不足に対応するために、2019年4月に運用が開始された新しい在留資格制度です。一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れ、即戦力として働いてもらうことを目的としています。
特定技能ビザには「1号」と「2号」の2種類があります。
 1号は介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、鉄道、自動車運送業、林業、木材産業の16分野(2025年9月時点)で働ける在留資格で、通算5年までの在留が可能です。
 一方、2号は熟練技能を有する外国人材に与えられ、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の11分野(2025年9月時点)で働ける在留資格で、在留期間の更新に制限はなく、家族の帯同も認められます。1号と2号の違いの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
つまり、特定技能制度は単なる一時的な人材補充ではなく、企業が中長期的に人材を確保するための選択肢となっていると言えます。
まず大きなメリットは、人手不足の解消です。特に国内で人材確保が難しい産業分野において、外国人材を受け入れることで、事業継続やサービス提供の安定につながります。介護、建設分野以外は、特定技能外国人の受け入れ可能人数枠に制限が無いことも魅力の一つです。
 また、特定技能人材は技能試験や日本語試験に合格しているため、一定の知識と能力を備えた即戦力として活躍が期待できます。
 さらに、特定技能2号へ移行できれば、在留更新や家族帯同も可能となり、長期雇用・定着につながる点も魅力です。なお、特定技能外国人は技能実習生と違って、転職することは可能ですが、原則、同一の業務区分内での転職しか認められておらず、かつ転職先の企業も、受入機関適合性等の条件を満たしている必要があるため、他の就労ビザや身分系のビザ(永住ビザ、配偶者ビザ等)の外国人より転職されるリスクは低いです。
 加えて、多国籍の人材が加わることで、職場の多様性が高まり、従業員の視野が広がる等、国際感覚や新しい価値観の醸成にもつながります。
一方で、特定技能外国人を雇用する際にはいくつかの課題もあります。
まず、1号特定技能外国人を雇用するためには、支援計画(外国人が日本で安心して就労・生活できるようにするための支援内容を定めた計画書)の作成と支援の実施が必須となっていることが挙げられます。支援計画の実施については、登録支援機関へ委託することも可能ですが、その分の委託費用が発生してきます。委託費用の相場は、特定技能外国人1人当たり月額2~3万円程度です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
 なお、2号特定技能外国人への支援は不要です。
また、言語や文化の違いによって、業務上の指示が伝わりにくいこともあり、コミュニケーションの難しさが生じるケースがあることも挙げられます。特定技能ビザを取得するには日本語能力試験に合格しなければなりませんが、求められるレベルが日常会話レベル(多くの産業分野でN4以上)であるため、実際は日本語による高度なコミュニケーションが難しいケースも多いです。外国人の日本語能力の向上をサポートするだけでなく、共に働く日本人従業員の多文化共生への理解を深める研修を行う等、受け入れ体制も整える必要があります。
さらに、入管への申請手続きや支援計画の作成等、複雑な事務対応が求められるため、企業の負担になることが多いです。入管への在留資格諸申請や支援計画の作成は、行政書士に依頼することができます。
加えて、特定技能外国人を受け入れた後も、在留期限の管理や制度変更への対応を継続する必要がありますが、これらを怠ると、欠格事由に該当することとなり、雇用トラブルやリスクにつながります。この点についても、行政書士のサポートを受ければ、企業は安心して対応することができます。
特定技能外国人を雇用する場合は、メリットだけでなくデメリットも十分に理解した上で導入を検討することが重要です。
 特に中小企業では、入管への申請手続きや支援計画の実施の負担が大きいため、行政書士や登録支援機関をうまく活用することが成功のポイントになります。入管への申請手続き(書類作成)や法的サポートは行政書士に依頼し、支援計画の実施は登録支援機関に委託することで、企業側は本業に専念できるようになります。
「とにかく人手不足だから雇う」という短期的な発想ではなく、中長期的な人材戦略の一環として特定技能外国人を採用し、その外国人が1号から2号へ移行できるようにサポートすることで、安定的な組織づくりにつながります。
特定技能外国人の雇用は、人手不足を解消し、即戦力を確保できる大きなメリットがありますが、その一方で受け入れ体制の整備や手続き対応といった負担も伴います。
 大切なのは、メリットとデメリットを正しく理解し、自社の状況に合った受け入れ方法を選ぶことです。
 制度や実務対応に不安がある場合は、ビザ申請に精通した行政書士にご相談いただくことで、安心して特定技能外国人を雇用することができます。
 当事務所でも、特定技能に関する申請サポートを行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
 
 かざはな行政書士事務所
代表行政書士 
 佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
 前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に深く関わってきました。
 その経験を活かし、行政書士としてより専門的なサポートを行うため、一念発起して資格を取得しました。
 2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門の「かざはな行政書士事務所」を開業。
 ビザ申請や帰化申請を中心に、外国人の方と企業の皆さまを支援しています。
 
 お電話でのお問合せ・相談予約
<受付時間>
 10:00~18:00
 ※土曜・日曜・祝日は除く
フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。
 
 〒739-0041 広島県東広島市西条町寺家
10:00~18:00
土曜・日曜・祝日(予約対応可)
広島県、岡山県、山口県、島根県、鳥取県を中心に全国オンライン対応可能