運営:かざはな行政書士事務所
投稿日:2025年8月9日
帰化とは、外国籍の方が日本国籍を取得し、日本人としての法的地位を得る制度です。これは単なる在留資格の変更ではなく、国籍そのものが変わる重要な手続きであり、選挙権や公務員への就職資格など、日本国民としての権利と義務が新たに発生します 。
日本に帰化するためには、一定の要件(継続的な在留歴、善良な素行、安定した生計能力、日本語能力等)を満たし、法務大臣の許可を得る必要があります 。また、日本は原則として二重国籍を認めていないため、帰化に際しては元の国籍を離脱することが求められます 。
このように、帰化は人生における大きな決断であるため、そのメリット・デメリットや手続き等を正しく理解することが重要です。
この記事では、帰化の種類や具体的な要件について詳しく解説していきます。
帰化には3つの種類があります。それぞれ見ていきましょう。
普通帰化とは、外国にルーツがあり、留学や就労を経て日本国内で生活している方が対象となる一般的な帰化です。以下の7つの要件をすべて満たす必要があります。
18歳以上で、本国においても成人に達し、行為能力があること(能力要件)
素行が善良であること(素行要件)
生計の安定があること(生計要件)
重国籍にならないこと(重国籍防止要件)
テロリストや暴力団員等ではないこと(憲法遵守要件)
日本語で日常的な読み書きができること(日本語能力要件)
簡易帰化とは、日本人との血縁関係や地縁(例えば、日本人の配偶者、子、日本生まれの無国籍者等)がある場合に適用され、普通帰化と比べて要件が緩和される帰化です。緩和される要件や内容は以下のとおりです。
(なお、要件は緩和されても、普通帰化より提出書類が多くなる傾向にありますので、注意が必要です。)
【居住要件が緩和(又は免除)される場合】
【居住要件及び能力要件が緩和(又は免除)される場合】
【居住要件、能力要件及び生計要件が緩和(又は免除)される場合】
大帰化とは、「日本に特別の功労のある外国人」に対して、普通帰化の全ての要件が免除されて許可される帰化です。この帰化は、国会の承認を得て許可されるものですが、具体的にどのような功労があれば適用されるのかについての基準は明らかではなく、現在まで適用された事例はありません。
帰化の種類のところで少し触れましたが、普通帰化の7つの要件が審査の基礎となります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
引き続き5年以上日本に住み、3年以上働いていることが求められます。
ここで言う「引き続き」とは、帰化申請をする時からさかのぼって5年間、日本に継続して住み続けていたかどうかということです。1日たりとも海外に出国していないことを求めるのではなく、過去5年間のうち、日本を出国していた期間が連続して3か月以上無く、また年間で通算100日以上日本を出国していなければ、問題ありません。もし、この日数を超えて海外に滞在した場合は、その時点でリセットされますので、その後、日本に戻ってから、5年間引き続き日本に住み続ける必要があります。
また、就労系ビザ(例:技術・人文知識・国際業務ビザ、経営・管理ビザ等)を持って、日本で3年以上働く必要があります。正社員、契約社員、派遣社員であれば、安定した身分として認められますが、アルバイトは認めらません。よって、家族滞在ビザの方が、週28時間以内のアルバイトをしていて、単独で帰化申請をしても認めてもらえません。その場合は、就労系ビザを持った扶養者と共に帰化申請をする必要があります。
18歳以上で、本国においても成人に達し、行為能力(自分の意思で法律上の行為を行い、その効果が確定的に自分に帰属する能力)があることが求められます。申請時点で18歳以上であることが求められますが、親と同時申請する場合は、18歳未満でも申請可能となることもあります。また、本国でも成人と認めらる年齢であることが必要です。国によって、成人年齢が異なりますので、必ず確認しましょう。
法律を守って人に迷惑をかけずに生活していることが求められますが、具体的には、年金保険料、税金等をきちんと納めているか、交通違反をしていないか、犯罪歴が無いか等がチェックされます。
まず、年金や税金については、申請者だけでなく、同居の親族まで年金や税金の納付状況を確認され、審査に影響しますので、注意が必要です。また、年金や税金に未納がある場合は、過去2年分さかのぼって支払えば、許可が下りる場合もあるようですが、帰化を考えていらしゃる方は、できる限り未納や納付遅れが無いよう、常日頃から気を付けるべきです。
それから、軽微な交通違反(駐車違反等)を繰り返している場合も、不許可の可能性が高まります。目安としては、過去2年間で3回以上、過去5年間で4回以上交通違反があると、審査はかなり厳しいものとなります。
日本で生活していくにあたり、生計を維持できることが求められます。この要件は、生計を共にする同居の親族を含めて判断されますので、申請者に十分な収入が無くても、同居の親族に十分な収入があれば、問題ありません。また、貯金額よりも安定した収入が毎月あることの方が重要です。年収の目安としては、一世帯で300万円以上は必要で、扶養家族の人数が増えれば増えるほど、この目安の金額は高くなります。
中には、貯金額が少ないからと言って、知人等からお金を借りて、自分の口座に入金する申請者もいますが、かえって逆効果です。法務局の審査官から、誰から何の目的で入金されたのか、厳しく追及される可能性が高いです。
帰化の審査では、多額の収入や貯金があることよりも、毎月の収入の範囲内で、慎ましく生活しているかどうか(収入と支出のバランスが崩れていないか)が重視されます。
日本では、二重国籍を認めていないため、日本国籍を取得した際に、元の国の国籍を失うことができることが求められます。ですが、国によっては、国籍を離脱することができない場合もあります。そのような場合は、帰化の許可を受けた後、特例として認められている必要な手続きをすれば、日本国籍を選択したということになります。
テロリストや暴力団員等のように、日本政府を暴力で破壊することを企てたり、主張したりするような者、又はそのような団体を結成したり、そのような団体に加入しているような者は、帰化を許可されることはありません。
日本語で日常的なコミュニケーションや読み書きができる能力を求められます。
帰化の申請後、法務局の審査官と面接があります。審査官と日本語でコミュニケーションを取れるかどうかも重要ですが、日本語のペーパーテストを実施される場合があり、これにきちんと回答できるかどうかも重要です。難易度は、小学校3~4年生程度の日本語能力で、日本語能力試験で言うと、N3からN4レベルです。
よくあるケースとして、日本語を話したり、聞いたりすることについては全く問題無いけれども、日本語を読んだり、書いたりすることが苦手な外国人の方がいらっしゃいます。ペーパーテストで求められるのは、あくまでも読み書きの能力ですので、もし自信が無い方は、本屋で小学校3~4年生の漢字ドリル等を購入し、勉強してください。今後、日本で長く暮らすうえでも必ず役に立ちます。
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。
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