N1に合格した留学生が検討する就労ビザについて

投稿日:2025年6月10日

留学生が、日本の企業に就職することとなった場合、働き始めるまでに、留学ビザから就労ビザに変更する必要があります。留学生が変更する就労ビザの中で、最も一般的な就労ビザは、技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)ですが、日本語能力試験でN1に合格した留学生の場合、他のビザへの変更の可能性も出てきます。

この記事では、N1に合格した留学生が、就労ビザを検討する際の候補となるビザについて解説します。

1.技人国ビザとは

まず技人国ビザとは、簡単に言うと、大学等や実務経験で学んだことを活かして、企業で専門知識や技術を必要とする仕事を行うことを目的としたビザですので、このビザの活動内容に、現場労働や単純作業は含まれていません。よって就職先の主な仕事内容が現場労働や単純作業ですと、このビザは取得できません

詳しい内容は、こちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

そして、N1に認定された留学生はこの技人国ビザのほかに、高度専門職1号ビザと特定活動(告示46号)ビザを検討することもできます。

2.高度専門職1号ビザとは

高度専門職1号ビザとは、専門的な知識や技術を有し、日本の産業に貢献できる高度人材の外国人が取得できるビザです。高度人材と認められるには、入管が公表している「高度人材ポイント計算表」で70点以上を取ることが求められます。このポイント制で、70点以上に達した外国人は、高度専門職1号ビザを取得することができます。高度専門職1号ビザには、様々なメリットがあるため、ポイントが70点以上ある人はチャレンジしてみてもいいかもしれません。
ちなみに、70点以上の人でも、ご自身の状況に合わせて、高度専門職1号ビザ以外のビザ(例:技人国ビザ、経営・管理ビザ、永住ビザ等)で日本に在留されている方もいらっしゃいます。

このポイント計算表には、学歴、職歴、年収、年齢、研究実績等が項目としてあるため、大学を卒業してすぐに日本の企業に就職する留学生は、職歴や年収のポイントがほとんど加算されないため、70点に達するのは難しいです。しかし、もしN1に認定されていたら、それだけで15点加算されることになります。また年齢が若いほど、ポイントが高いので、N1に認定された留学生は一度このポイント計算表で高度人材に該当するかどうか、確認されることをおすすめします。ただし、就職後の予定年収が300万円以上であることが前提条件ですので、注意してください。

3.特定活動(告示46号)ビザとは

特定活動(告示46号)ビザとは、通称「N1ビザ」と呼ばれるビザです。このビザは、日本の大学を卒業し、N1に認定された外国人が取得できるビザで、最大の特徴は、技人国ビザでは許されない現場労働や単純作業が含まれていても、認められるということです。
もちろん、現場労働だけの仕事内容では認められませんが、例えば、高い日本語能力を活かして、ホテルのホームページを外国語に翻訳したり、宿泊客の通訳をしながら、客室の清掃も行うといった幅広い業務を行うことができます。
もし、N1に認定されていて、就職先の仕事内容に現場労働も含まれている場合は、こちらのビザを検討されてみてはいかがでしょうか。

4.3つのビザの比較表

ここまでにご紹介した3つのビザについて、次の比較表を見ながら、違いを確認してみましょう。

  技人国ビザ

高度専門職1号ビザ

特定活動ビザ
業務分野

自然科学や人文科学等に関する専門知識や技術、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務(現場労働×)

 

研究や研究の指導を行う業務、自然科学や人文科学等に関する専門知識や技術を必要とする業務、貿易等の経営管理に従事する業務、上記の業務を自ら経営する活動(現場労働×)

 

日本語を用いた円滑なコミュニケーション能力及び大学で習得する知識を要する業務(技人国で認められる業務+現場労働)

条件

・大学(院)を卒業していること

・専攻科目と関連性のある業務であること

・日本人と同程度以上の報酬であること

・主な業務内容に現場労働が含まれていないこと

・高度専門職ポイント計算表で70点以上であること

・年収300万円以上であること

・主な業務内容に現場労働が含まれていないこと

・日本の大学(院)を卒業していること

・日本語能力試験N1に合格していること

(専攻科目と業務の関連性は問われない)

在留期間

5年、3年、1年、3か月のいずれか
(最初の申請では、1年で許可されることが多い)

5年 5年、3年、1年、6か月、3か月のいずれか
(最初の申請では、1年で許可されることが多い)
同様の業務内容での転職の可否

可能

ただし、転職時に「就労資格証明書」の取得が必要。また契約機関との契約終了の届出を入管に提出する必要がある。

可能

ただし、転職時に「在留資格変更許可申請」が必要。また契約機関との契約終了の届出を入管に提出する必要がある。

可能

ただし、転職時に「在留資格変更許可申請」が必要。また契約機関との契約終了の届出を入管に提出する必要がある。

永住権の取得 10年以上日本に在留し、そのうち就労ビザで5年以上在留すれば、申請可能 ポイント計算表で70点以上なら3年以上、80点以上なら1年以上日本に在留すれば、申請可能 10年以上日本に在留し、そのうち就労ビザで5年以上在留すれば、申請可能
家族の帯同

可能

配偶者と子どものみ

可能

配偶者と子どもだけでなく、自分の両親や配偶者の両親も、条件を満たせば帯同可能

可能

配偶者と子どものみ

配偶者の就労

原則禁止

資格外活動許可を得れば、週28時間以内はバイトすることが可能

特定活動ビザ(研究、教育、技人国、興行等の活動)で就労可能

原則禁止

資格外活動許可を得れば、週28時間以内はバイトすることが可能

審査期間 1~3か月 5日以内
(実際は1か月程度)
1~3か月
副業 技人国ビザでできる他の活動を副業で行う場合は、資格外活動許可の申請不要(ただし、入管に確認した方がよい) 資格外活動許可の申請が必要 原則禁止だが、やむを得ない事情があれば、入管に相談し、資格外活動許可の申請をする
その他   高度専門職1号で3年以上日本に在留した後、素行善良であれば、在留期限の無い高度専門職2号を取得することが可能  

上記の表を見ていただくと分かる通り、高度専門職1号ビザは、在留期間や永住権の取得、家族の帯同、配偶者の就労、審査期間で、他のビザよりもメリットが大きいです。
ただし、高度専門職1号ビザは、就労先を指定されて許可されるビザであるため、転職する際は、同じような業務内容で働くとしても、在留資格変更許可申請が必要となります。ですので、将来的に転職を考えているという方については、高度人材に該当するとしても、技人国ビザを取得しておいた方がよい場合もあります。

また、将来永住権の取得を目指しておられる外国人の方にとって、高度専門職1号ビザを取得することはメリットがありますが、実は他のビザを持っていても、過去のポイントを証明することができれば、「高度専門職ポイントを有する者」として、永住申請を早く行うことができます。つまり、わざわざ高度専門職1号ビザに変更をしなくても、「みなし高度専門職」として3年以上(又は1年以上)日本に在留していれば、永住申請することが可能です。

詳しくは、ビザ専門の行政書士にお問い合わせください。 

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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