帰化申請中に状況が変化した場合について

投稿日:2025年8月29日

帰化申請の審査中に「もし仕事が変わったら?」「引越しをすることになったら?」と、不安になったことはありませんか?
人生の大きな節目である帰化申請は、申請を受け付けてもらうまでにも時間がかかりますが、審査にもさらに長い時間がかかります。そのため、その間に申請者の状況が変化することは十分あり得ます。特に、転職や転居といったライフイベントは、誰にでも生じる可能性がありますが、帰化申請の内容に直接関わる重要な変更でもあります。
この記事では、帰化申請中に生じた状況の変化の中で、特に法務局に連絡する必要のある事項について解説します。

1.法務局に連絡すべき事項

帰化申請の審査中に、次に挙げる事項が生じた場合は、必ず法務局の担当官に速やかに連絡する必要があります

  1. 住所又は連絡先が変わったとき
  2. 結婚・離婚・出生・認知・死亡・養子縁組・離縁等、身分関係に変動があったとき
  3. 在留資格や在留期限が変わったとき
  4. 日本からの出国予定(再入国予定を含む。)が生じたとき及び再入国したとき
  5. 法令に違反する行為をしたとき(交通違反を含む。)
  6. 仕事関係(勤務先等)が変わったとき
  7. その他法務局へ連絡する必要が生じたとき(新たな免許資格の取得等があったとき等)
(1)住所又は連絡先が変わったとき

申請者が引っ越しをしたり、連絡先を変えたりした場合には、必ず法務局の担当官への連絡が必要です。引っ越しや連絡先の変更によって、審査にマイナスの影響を与えることはありませんが、手続きが増え、審査期間が長くなる可能性があるため注意が必要です。
帰化申請は、申請者の住所地を管轄する法務局で行います。よって、他県等の遠方へ転居すると、管轄の法務局が変わることになるため、審査手続きが転居先の住所地を管轄する法務局に引き継がれることになります。また、転居先の新しい住民票や地図、賃貸契約書のコピー等、追加の書類提出を求められます。さらに、 法務局間のやり取りや新しい住所での再調査等が発生するため、審査期間が長引く傾向にあります
したがって、引っ越しを考えているなら、できるだけ事前に法務局の担当者に相談するのがよいでしょう。やむを得ず、帰化申請中に引っ越す必要があり、 管轄法務局が変更となる場合は、転居先の法務局で再度申請手続きが必要となることがあります。この場合、一からやり直しではないものの、改めて書類の提出や面談等が必要になる可能性があります。

(2)身分関係に変動があったとき

帰化申請中に家族構成が変わることは、審査に大きな影響を与えます。しかし、これらの変更によって必ずしも不許可になるわけではありません。最も重要なことは、速やかに法務局に報告し、担当官の指示に従って必要な手続きを行うことです。
例えば、申請者が結婚した場合は、その配偶者の情報(国籍、職業、収入、生い立ち等)を報告する必要があります。配偶者が日本人である場合、帰化の要件が緩和されるケースもあります。一方、申請中に離婚した場合は、その事実を報告する必要があります。特に、夫婦での生計維持能力が問われるため、離婚後の経済状況が不安定になる場合は、その点を証明する追加書類を求められることがあります。ただし、離婚が直接的な不許可理由になるわけではありません。
続いて、申請者に子どもが生まれた場合は、親族構成が変わるため、速やかに担当官に報告し、生まれた子どもの出生証明書や住民票等を提出し、申請書類に情報を追加します。子どもが生まれたこと自体が審査に不利に働くことはありません。むしろ、日本で安定した生活を築いていることの証明になることもあります。ただし、家族が増えることで生計維持能力が十分に満たされているか、改めて確認される可能性があります。
また、親が亡くなった場合は、その事実を担当官に伝え、死亡証明書等の書類を追加で提出します。親が亡くなったことが審査に不利に働くことはありません。ただし、親族の概要に変更が生じるため、正確な情報を報告することが求められます。
これらの家族構成の変化は、いずれも申請内容の変更として報告義務があります。自己判断で「これぐらいなら大丈夫だろう」と報告を怠ると、虚偽申請とみなされ、不許可の最大の原因となり得ます。

(3)在留資格や在留期限が変わったとき

在留資格の変更や更新は、帰化申請の審査に直接影響を与える重要な要素です。帰化申請は、許可が下りるまでに半年から1年かかることが一般的です。その間に現在持っている在留期限が満了する場合、状況に応じて必ず在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請を行う必要があります
そしてその結果、在留資格が変わった場合や在留期限が変わった場合は、必ず法務局の担当官に連絡する必要があります。特に注意しなくてはいけないのは、それまで在留期限が3年又は5年で許可されていた方が、今回の申請で1年の許可となった場合です。帰化申請でも、在留期限が3年以上であることが求められるようになっていることから、この場合は、担当官から帰化申請を取り下げるように指示されます

(4)出国予定及び再入国予定が生じたとき

帰化申請中に海外への出国や再入国を予定している場合は、必ず法務局の担当官に事前に報告しなければなりません。これを怠ると、審査に悪影響を及ぼし、不許可になる原因となり得ます。海外への出国自体は、帰化申請の不許可理由にはなりませんが、以下の点に注意が必要です。
帰化化申請の要件の一つに、「引き続き5年以上日本に住所を有すること(居住要件)」があります。海外への長期滞在は、この「引き続き」の期間が途切れたとみなされる可能性があります。目安としては、1回の出国で3ヶ月以上日本を離れる場合、1年間の合計出国日数が100日以上になる場合は、居住要件を満たさないと判断される可能性が高まります。
また審査中には、法務局から追加書類の提出を求められたり、面談の連絡があったりすることがあります。海外にいると、これらの連絡に迅速に対応できず、審査が遅延する原因となります。よって、出国が決まったら、必ず出国前に法務局の担当官に連絡し、出国する旨、滞在期間、目的等を伝えましょう。加えて、日本に戻った後も、速やかに担当官に連絡し、帰国したことを報告しましょう
それから、帰化申請中であっても、外国籍であることに変わりはありません。出国時には、在留カードを提示して「みなし再入国許可」を利用するか、出国前に再入国許可を取得しておく必要があります。これを怠ると、日本への再入国ができなくなる可能性があります。万が一、海外で何らかのトラブルに巻き込まれたり、法務局から緊急の連絡があったりする場合に備え、日本国内にいる家族や信頼できる友人を行政書士等に緊急連絡先として伝えておくことが望ましいです。
帰化申請中の海外出国は可能ですが、無断での出国は絶対に避けるべきです。仕事の都合や、やむを得ない事情での出国であっても、法務局への事前報告と、居住要件を損なわない範囲での出国期間に留めることが、帰化許可を得るための重要なポイントとなります。

(5)法令に違反する行為をしたとき

帰化申請中に法令に違反した場合、不許可となるリスクが非常に高くなります。これは、帰化申請の重要な要件の一つである「素行が善良であること(素行要件)」に反すると判断されるためです。
まず、犯罪行為についてですが、逮捕・起訴された場合、その時点で審査は中止され、不許可となります。これは、日本の社会秩序を乱す行為であり、「素行善良」の要件を満たさないためです。また、罰金刑や略式命令といった軽微な犯罪であっても、審査に大きな影響を与えます。もしそのようなことがあった場合、隠さずに速やかに法務局に報告しなければなりません
続いて、交通違反についてですが、飲酒運転、無免許運転、人身事故等、重大な交通違反は、一回でも不許可の原因となります。また、駐車違反や一時不停止等の軽微な交通違反であっても、短期間に何度も繰り返していると、「法令順守の意識が低い」と見なされ、「素行不良」と判断されるリスクが高まります。目安としては、軽微な違反でも、直近2年間で3回以上あると不許可になる可能性が高まると言われています。
その他、住民税や国民年金、健康保険料等の未納は、帰化申請の審査で非常に厳しくチェックされます

法務局は、警察署の犯罪記録、税務署、市区町村の役所等、様々な機関と連携して申請者の身辺調査を行います。たとえ軽微な交通違反であっても、隠そうとしたことが判明すれば、「虚偽申請」とみなされ、それ自体が不許可の理由となります。何らかの法令違反があった場合、自己判断で隠さず、すぐに法務局の担当官に連絡し、正直に報告することが最も重要です。

(6)仕事関係が変わったとき

帰化申請中に転職することは、法律上禁止されているわけではありません。しかし、審査に大きな影響を与えるため、慎重に検討し、適切な対応をとる必要があります
帰化申請では、申請者の「生計要件」「安定性」が厳しく審査されます。転職は、この両方の要素に直接影響を与えるため、以下の点に注意が必要です。

  1. 審査期間の長期化: 転職によって、申請書類に記載された情報(勤務先、年収、雇用形態等)が変更されることになります。法務局は、新しい勤務先について再度調査を行うため、その分、審査期間が延びることになります。
  2. 生計要件の再審査:

    • 収入の増減: 収入が増えるキャリアアップの転職であれば問題ないケースが多いですが、収入が大幅に減少する転職は、生計要件を満たさないと判断されるリスクがあります。

    • 不安定な職種: 契約社員、アルバイト、個人事業主等、収入が不安定な職種への転職は、生計の安定性が低いと見なされる可能性があります。

    • 無職期間: 転職活動によって無職の期間が長引くと、生計維持能力がないと判断され、不許可になるリスクが高まります。

  3. 勤続年数: 日本では、勤続年数が長いほど「信用性が高い」と見なされる傾向があります。転職したばかりの場合、新しい職場で安定して働き続けられるかどうかが不透明だと判断され、審査に不利に働く可能性があります。

やむを得ず、転職をすることになった場合、最も重要なのは自己判断で勝手に行動しないことです。

  1. 速やかに法務局に報告: 転職の意思が固まった段階で、すぐに法務局の担当者に連絡し、転職する旨を伝えます。これにより、隠蔽の意図がないことを示し、信頼関係を維持することができます。
  2. 追加書類の提出: 担当者から、新しい勤務先に関する追加書類の提出を求められます。一般的に以下のような書類が必要になります。

    • 転職先の在勤及び給与証明書

    • 転職先の給与明細書(直近数ヶ月分)

    • 転職先の付近の略図

    • 雇用契約書等

帰化申請中の転職は、可能ではあるものの、許可が下りるまでの間は、できるだけ避けることが賢明です。もしやむを得ない事情で転職することになった場合は、速やかに法務局に報告し、必要な書類を漏れなく提出することが、不許可リスクを回避するための最善の方法です。ちなみに、配属先が変更した場合も報告する必要がありますので、注意してください。

(7)その他法務局へ連絡する必要が生じたとき

具体的には以下のような場合に連絡する必要があります。

  • 新しい資格の取得:医師や弁護士等、専門的な資格を取得した場合です。自己申告することで、申請者の能力や社会的な信用度を示すことができます。
  • 書類の紛失: 提出した書類の控えや法務局から受け取った書類を紛失してしまった場合も、法務局にすぐに連絡しましょう。

2.まとめ

帰化申請中に生活状況に変化が起きたときは、「許可が取り消されるかも…」と心配になるかもしれません。しかし、適切な対応をすれば、問題なく申請は継続できます(重大な法令違反等を除く)。

この記事で挙げた注意点を参考に、何か変化があった場合は、まずは速やかに担当の法務局に連絡してください。準備すべき書類や手続きについて、具体的な指示を仰ぐことが、スムーズな帰化への一番の近道となります。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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