外国人の美容師が日本で働くには?

投稿日:2025年8月8日

これまで、外国人が日本で美容師として働くには、永住者や日本人の配偶者等の身分系ビザを持っている必要がありました。しかし、2022年10月から東京都において、「外国人美容師育成事業」が開始され、一定の要件を満たす外国人が、特定活動ビザ(以下、特定美容活動ビザ)を取得して美容室で働けるようになりました(2025年8月現在、この制度を活用することができるのは、東京都の美容室のみです)。
外国人美容師は最大5年間、日本の美容技術と文化を学びながら働くことができ、日本の美容技術が世界に広がるだけでなく、多様な文化背景を持つ美容師たちが日本の美容業界に新たな価値をもたらすことが期待されています。

この記事では、外国人美容師が特定美容活動ビザを取得するための要件や実際に働くまでのプロセス等について詳しく解説していきます。

1.国家戦略特別区域外国人美容師育成事業について

最初にこの事業の概要についてご紹介します。

(1)国家戦略特別区域とは?

まず、国家戦略特別区域とは、特定の地域だけに、特別なルールや緩和措置を設けることで、新しい取り組みをスピーディーに実現しようという仕組みです。日本を世界で最もビジネスがしやすい国にするための制度で、第2次安倍内閣の 成長戦略「アベノミクス」の柱の一つとして始まりました。この制度によって、地域限定で法律や規制を緩和し、都市開発や医療、教育、農業等、様々なな分野の新しい取り組みを加速させることが可能になるとされています。
具体的には、次の地域が国家戦略特別区域となっています。

出典:内閣府国家戦略特区HP(https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/shiteikuiki.html)

この制度で注意すべきポイントは、特定の事業がすべての地域で実施できるわけではないということです。2025年8月現在、外国人美容師育成事業を行えるのは、東京都のみです。詳しくは、こちらをご覧ください。

(2)外国人美容師育成事業とは?

次に、外国人美容師育成事業とは、日本の美容師養成施設を卒業し、美容師免許を取得した外国人留学生が、日本で美容師として働きながら「日本式の美容に関する技術や文化を世界へ発信する担い手」として育成されることを目的として創設された事業です。
これまでは、外国人が美容師免許を持っていても、該当する就労ビザが無いため、身分系ビザ以外で外国人が日本で美容師として働くことはできませんでしたが、この制度により、東京都において、美容業務に従事する在留資格(特定美容活動ビザ)が認められるようになりました。
なお、特定美容活動ビザの在留期限は、最長5年で、1つの美容室に受け入れることができる人数は、3人以内となっていますまた、他の就労ビザと異なり、受け入れる美容室は、監理実施機関(美容産業の発展に資する取組を実施し、かつ美容に係る専門的知識を持ち、一定の要件を満たす機関)への育成状況報告、育成計画の提出等を行う必要があります。制度の概要については、こちらをご覧ください。

2.外国人が満たすべき要件とは

外国人美容師として、特定美容活動ビザを取得するためには次の要件をすべて満たし、かつ美容師養成施設の推薦を受ける必要があります。

  1. 美容師養成施設において、美容に関する業務に従事するために必要な知識及び技能を修得し、成績優秀かつ素行が善良であること
  2. 美容に関する知識及び技能を高めようとする意思、及び帰国後、日本式の美容に関する技術・文化を世界へ発信する意思を持っていること
  3. 特定美容活動を行うために必要な日本語の能力として、日本語能力試験のN2程度の能力を持っていること
  4. 特定美容活動の従事を開始する年齢が、満18歳以上であること
  5. 美容師免許を取得している者(又は育成計画の申請日時点で、取得見込みである者

3.特定美容活動として従事できる業務

特定美容活動ビザで雇用された外国人が従事できる業務は、次のとおりです。なお、実践的な美容に関する知識や技能を必要としない業務、美容に関する業務でも単純な反復作業には従事することはできません。

  1. シャンプー
  2. カット
  3. トリートメント
  4. ブロー
  5. セット・アイロン
  6. カラー
  7. パーマ・縮毛矯正
  8. ヘッドスパ
  9. まつげエクステンション
  10. ネイル
  11. エステティック
  12. 着物着付け
  13. メイク
  14. 洋装ブライダル
  15. 出張美容
  16. 美容室の経営管理に関すること
  17. その他関係自治体が必要と認める業務
  18. その他付随業務(受付、電話応対、清掃業務、洗濯等)

4.受け入れる美容室が満たすべき要件とは

外国人美容師を受け入れる美容室についても、満たすべき要件があります。次の要件をすべて満たすことに加えて、外国人美容師を雇用契約に基づく労働者として受け入れ、特定美容活動に従事させ、監理実施機関と連携してその外国人美容師に実践的な美容に関する知識や技能を修得させることも求められます。

  1. 事業実施区域(2025年8月時点で東京都のみ)内に、外国人美容師が実践的な美容に関する知識や技能を修得するため、育成計画を適切に実施できる美容室があること
  2. 管理美容師を配置していること
  3. 健全かつ安定的な経営状況であること
  4. 労働に関する法律の規定や社会保険に関する法律の規定を遵守していること
  5. 一定の欠格事由(法令違反後、刑に処せられてから5年以内、暴力団員であること等)に該当しないこと

5.外国人美容師を雇用するまでの流れ

外国人美容師を雇用するまでの一般的な流れについてご紹介します。

  1. 美容専門学校を卒業予定(国家試験受験済み)で、かつ要件を満たす留学生と面接し、採用内定を出す
  2. 採用予定の外国人美容師に関する育成計画を作成し、監理実施機関を経由して、関係自治体に申請し、認定を得る
  3. 採用予定の外国人美容師に育成計画の写しを交付する
  4. 採用予定の外国人美容師が美容専門学校を卒業する
  5. 採用予定の外国人美容師が国家試験に合格し、美容師免許を取得する
  6. 採用予定の外国人美容師の住居地を管轄する入管に在留資格変更許可申請をする(留学ビザ⇒特定美容活動ビザ)
  7. 特定美容活動ビザの許可が下りる
  8. 外国人美容師として働く

6.特定美容活動ビザ取得のための提出書類

今回は、ある美容室が、日本の美容専門学校で美容師免許を取得した留学生を美容師として雇用するために、留学ビザから特定美容活動ビザへの変更許可申請をする場合の必要書類についてご紹介します。(申請者の状況によって、以下にご紹介した書類以外のものを求められることもありますので、ご注意ください。)

  • 在留資格変更許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • パスポート(原本提示)
  • 在留カード(原本提示)
  • 雇用理由書
  • 履歴書
  • 卒業証明書
  • 日本語能力を証明する書類
  • 美容師免許証の写し
  • 雇用契約書の写し等の労働条件が記載された文書
  • 育成計画書の写し
  • 法人登記事項証明書
  • 会社案内(沿革、役員、組織、事業内容、取引先、取引実績等が記載されたもの)
  • 直近年度の決算書の写し
  • 定款の写し

※外国の書類はすべて日本語に翻訳が必要です。

7.まとめ

この記事では、外国人美容師が特定美容活動ビザを取得するための要件や実際に働くまでのプロセス等について詳しくご紹介しました。現在、このビザが与えられるのは東京都の美容室で働く方のみで、それ以外の地域では、永住ビザや日本人の配偶者等ビザ等の身分系のビザの方しか、美容師として働くことはできません。
ですが、今後の動向次第で、対象地域がさらに拡大する可能性はありますので、今後も注視していく必要がありますね。

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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