外国人を派遣社員として採用することは可能?

投稿日:2025年6月17日

少子高齢化が進む日本では、労働力不足が大きな問題となっています。
自分の会社で求人を出しても、会社が求める人材に合った人が応募してこない場合には、人材派遣会社から人材派遣のサービスを利用して、人材不足を補う会社もあるかと思います。
そのような時に、人材派遣会社から外国人を派遣社員として紹介される場合も想定されます。なぜなら、一定の技術や知識を持って、日本で働くことを希望している外国人の方がたくさんいるからです。

この記事では、外国人を派遣社員として採用することは可能か、採用する際の注意点等について解説します。

1.外国人を派遣社員として採用できる?

結論としては、外国人を派遣社員として採用することはできます!
ですが、外国人を派遣社員として採用するためには、在留資格(ビザ)の要件が非常に重要です。
基本的に「派遣社員としての就労」が許可される在留資格は限られており、以下のような在留資格が該当します。

  1. 技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)
  2. 高度専門職ビザ
  3. 永住ビザ、定住ビザ、配偶者ビザ
  4. 特定技能ビザ(産業分野は農業と漁業のみ
  5. 留学ビザ、家族滞在ビザ(資格外活動許可の範囲内の就業時間であること
(1)技人国ビザ

技人国ビザは、16種類ある就労ビザの中で、最も一般的な就労ビザのひとつです。詳しくはこちらをご覧ください。
業務内容が学歴と関連しており、「ホワイトカラー系」(例:IT、翻訳、経理、設計、マーケティング等)であれば、派遣社員で採用することも可能です。ですが、主な業務が単純作業や現場労働である場合は採用できません(不法就労になります)。

(2)高度専門職ビザ

高度専門職ビザは、専門的な知識や技術を有し、日本の産業に貢献できる外国人で、入管が公表している「高度人材ポイント計算表」で70点以上に達した外国人に与えられるビザです。このような性質のビザであることから、「高度な専門性」が認められた業務内容であれば、派遣社員として採用することも可能です。ですが、技人国ビザと同様、主な業務が単純作業や現場労働である場合は採用できません(不法就労になります)。

(3)永住ビザ、定住ビザ、配偶者ビザ

いわゆる身分系のビザと言われるビザを持つ外国人であれば、就労制限はありませんので、業務内容を選ばず、派遣社員として採用することが可能です。技人国ビザや高度専門職ビザで禁じられている、単純作業や現場労働でも採用可能です。

(4)特定技能ビザ

特定技能ビザとは、日本で人手不足が深刻な特定の分野において外国人労働者を受け入れるために設けられたビザです。2019年4月に新設された比較的新しいビザで、日本の中小企業等で特にニーズが高い産業分野の即戦力として雇用することが可能です。ただし、派遣が認められている産業分野は、農業と漁業のみです。

(5)留学ビザ、家族滞在ビザ

留学ビザと家族滞在ビザは、基本的に就労不可のビザですが、資格外活動許可を得れば、週28時間以内の就労が可能です。その範囲内の就労時間であれば、風俗関係以外の業務で派遣採用可能です。

2.外国人を派遣社員として採用する際の注意点

外国人を派遣社員として採用るする際に、注意すべきポイントについて紹介します。
特に、技人国ビザや高度専門職ビザの外国人を派遣社員として採用する際は、以下のポイントを満たしているか、確認してください。

(1)業務内容がビザの要件に合っているか?

上記でも述べたように、ビザごとに許可された業務範囲があります。技人国ビザですと、学歴と業務内容に一定の関連性のある、ホワイトカラー系の仕事である必要があります。このビザの方に、単純作業や現場労働等をさせると、不法就労になるリスクがあります。
不法就労助長は、事業者が不法就労の外国人を雇用した場合等に成立し、犯罪として処罰される可能性があります。また、刑事処罰以外にも重大なペナルティ(行政指導や会社の信用失墜等)を受ける可能性もあります。
会社が、雇用した外国人が不法就労であることを知らなかった場合でも、会社側に過失が認められた場合(在留カードを確認しなかった等)には、不法就労助長罪が適用されてしまいます。
不法就労助長は、外国人を採用する会社が最も注意しなければならない問題です。よって、採用予定の外国人の在留カードは確認するようにしてください。この確認について、労働者派遣法26条6項(特定目的行為の禁止)違反となるのではないかと心配される方もいらっしゃるかと思いますが、この項目で言われているのは、あくまでも派遣社員の特定を目的とする行為を禁じるものです。会社が、派遣社員の業務遂行に必要な地位(在留資格)を確認することは、派遣社員を特定することを目的とするものではないため、この条項に違反するとは解されません。

(2)日本人と給与水準が同等以上か?

給与水準に関する要件は、技人国ビザや高度専門職ビザにおいて、とても重要です。
日本人社員と同等以上の待遇の確保が必要です。外国人労働者の権利を保護し、適正な労働条件を確保するために設けられた基準です。
基本的には、外国人が所属する派遣元の会社で、同じ業務に従事する日本人と同等又はそれ以上の給与が支払われる必要があります。

(3)不正に取得されたビザの外国人ではないか?

技人国ビザを取得するにあたり、本来従事する予定のホワイトカラー系の仕事の前に、実務研修(期間限定で現場労働も認められる)の期間が1年以上ある場合、入管に研修計画書を提出すれば、一定期間、実務研修を認められることがあります。
そして、それを悪用して、人材派遣会社が「実務研修類型の技人国ビザを持った外国人がいるので、短期間、工場で現場労働もできます」と営業をかけてくる場合があるようです。ですが、派遣先を頻繁に変えることを前提とし、かつ各派遣先を特定しない実務研修計画は、普通に考えてありえません。要は虚偽申請をして、技人国ビザを不正取得した可能性があるということです。
人材派遣会社からこのような提案を受けた場合は、慎重に対応してください。もし可能なら、どのような内容の実務研修計画により、技人国ビザを取得したのかを確認してください。この確認を怠り、後で不法就労が発覚すると、この外国人だけでなく、受け入れた会社も罪に問われるおそれがあります。

2.まとめ

以上、外国人を派遣社員として採用することができるか、そしてその際の注意点について、解説しました。
特に、外国人が持つビザと会社の業務内容に整合性があるかはとても重要な確認事項です。もし、そこに疑義がある場合は、ぜひビザ専門の行政書士にご相談ください!

この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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