技能ビザについて

投稿日:2025年6月27日

技能ビザは、日本経済の国際化の進展に対応し、熟練した技能を持つ外国人を受け入れるために設けられたビザです。
ただし、どのような産業分野でもよいわけではなく、外国に特有の産業分野や外国の技能レベルが日本よりも高い産業分野、日本での熟練技能労働者が少ない産業分野に限られます。

この記事では、技能ビザが認められる活動にはどのようなものがあるか、また申請する際にどのような書類が必要かについて解説します。

1.技能ビザが認められる活動

技能ビザは、日本の会社等との契約(業務委託契約も可能)に基づいて、特定の産業分野において熟練した技能を必要とする業務に従事する活動に認められるビザです。ですので、熟練した技能を必要としない単純労働は該当しません。
また、技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)の「技術」と似ていますが、内容は異なります。
「技術」は、学術上の素養等の条件を含めて理論を実際に応用して処理する能力を指しますが、「技能」は、主として個人が自分の経験を積み上げることによって有している能力を指します。
なお、技能ビザについても、技人国ビザと同様、日本人が従事する場合と同等以上の給与水準であることが求められます。
それでは、どのような産業分野の活動が技能ビザに該当するか、具体的に見ていきましょう。

(1)外国料理の調理師やパティシェ

技能ビザを取得する方の中で、最も多い活動です。
この活動で該当する産業分野は、外国で調理や製造に係る技能を考案され、かつ日本であまり普及していないものである必要があります。例えば、ラーメンやちゃんぽん等は、中国発祥の料理ですが、日本独自の進化を遂げ、普及している料理であるため、技能ビザの産業分野には該当しません。一方、中国料理、フランス料理、インド料理等の調理師や外国のデザート等の調理師、パティシエ等は該当します。

実務経験については、10年以上の経験を有することを必要とし、外国の教育機関で当該料理の調理や食品の製造に係る科目を専攻して教育を受けた期間も含まれます。なお、タイ人の調理師については、日本とタイのEPA(経済連携協定)により、実務経験年数が5年以上に短縮されます

技能ビザの外国人を雇用するためには、その方が技能を十分に発揮できる規模の店舗であることも必要です。座席数が30席以上あることは、有利に働きます。また、インド料理やパキスタン料理を提供するお店では、釜(タンドール)が必須です。中華料理店では、北京ダックの焼き方等が審査対象となることがあるようです。申請書類には、お店の厨房や客席、外観、コース料理の写真も併せて提出した方がよいです。

加えて、技能ビザを持つ調理師以外に、食器洗いや給仕係(ホールスタッフ)等の従業員がいることも必要です。技能ビザの方が、熟練した技能を必要としない単純労働に従事することは、基本的に認められないからです。入管から、店舗で働くスタッフリストを求められることが多く、同じ店舗で働く別の調理師の申請の際に提出された過去のスタッフリストとの整合性をチェックされることがあります。

提供される料理については、熟練した技能を必要とする料理が、メニューの相当数を占めていることが必要です。5,000円以上のコースメニューが存在し、かつ単品料理があると、有利に審査されるようです。

(2)外国様式の建築物の建築技能者

この活動で該当する産業分野は、外国に特有の伝統的建築様式に係る技能や外国で新たに考案されて、まだ日本には普及していない建築方式や工法に係るものです。例えば、ゴシック、ロマネスク、バロック方式や中国式、韓国式等の建築、土木に関する技能です。

実務経験については、10年以上の経験を有することを必要とし、外国の教育機関で当該建築又は土木に係る科目を専攻して教育を受けた期間も含まれます。また、当該技能を有する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する者の場合は5年以上の実務経験があればよいとされています。
なお、枠組壁工法(いわゆるツーバイフォー工法等)による輸入住宅の建設に従事することを目的とする外国人の技能者については、技能ビザを取得するために、次のいずれにも該当する必要があります。

  • 単に建設作業に従事させるものではないこと
  • 日本人技能者に対する指導及び技術移転を含むことが明確になっていること
  • 住宅建設に必要な資材の輸入相手国(アメリカ、カナダ、オーストラリア、スウェーデン、フィンランド)の国籍を有する者又はその国の永住資格を有するもの
  • 受入企業において輸入住宅の建設に係る具体的計画が明示され、必要な滞在期間が予め申告されていること
  • スーパーバイザー、フレーマー(建物の骨組みを作る人)、ドライウォーラー(アメリカで生まれた内装仕上げの工法で作業を行う人)、フィニッシュ・カーペンター(最終的な仕上げ作業を担当する人)をのいずれかに携わるもので、日本人技能者では容易に工程に携わることができないもの
(3)外国特有の製品の製造・修理技能者

この活動で該当する産業分野は、例えばヨーロッパ特有のガラス製品やペルシア絨毯等、日本には無い製品の製造又は修理に係るものです。

実務経験については、10年以上の経験を有することを必要とし、外国の教育機関で当該製品の製造又は修理に係る科目を専攻して教育を受けた期間も含まれます。

シューフィッター(生理学的分野から靴を研究し、治療靴を製造するもの)については、解剖学、外科学等の知識を用いて外反母趾等の予防矯正効果のある靴のデザインを考え、制作していく作業に従事するものは含まれます。

(4)宝石・貴金属・毛皮加工の技能者

この活動においては、外国に特有の産業である必要はありません。外国の技能レベルが、日本よりも高いとされている産業分野だからです。

実務経験については、10年以上の経験を有することを必要とし、外国の教育機関で当該加工に係る科目を専攻して教育を受けた期間も含まれます。

宝石と毛皮については、宝石や毛皮を用いて製品を作る過程だけでなく、原石や動物から宝石や毛皮を作る過程も含みます。ただし、皮の加工については、毛が付いている必要があり、毛皮の加工は認められますが、皮革の加工は認められません。

(5)動物の調教師

この活動においても、外国に特有の産業である必要はありません。外国の技能レベルが、日本よりも高いとされている産業分野だからです。

実務経験については、10年以上の経験を有することを必要とし、外国の教育機関で動物の調教に係る科目を専攻して教育を受けた期間も含まれます。特定の国においては、教育期間中にも動物の調教に従事することがありますが、このような場合にも実務経験としてよいようです。

(6)石油・地熱等掘削調査者

この活動においても、外国に特有の産業である必要はありません。日本で従事する熟練技能労働者が少ない産業分野だからです。

実務経験については、10年以上の経験を有することを必要とし、外国の教育機関で石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻して教育を受けた期間も含まれます。

地熱開発のための掘削とは、生産井(地熱発電に使用する蒸気を誘導するために掘削された井戸)及び還元井(発電に使用した蒸気及び熱水を地下に戻すために掘削された井戸)を掘削する作業のことです。

(7)航空機操縦士

この活動においても、外国に特有の産業である必要はありません。日本で従事する熟練技能労働者が少ない産業分野だからです。

実務経験については、250時間以上の飛行経歴を有することを必要とします。よって、機長又は副操縦士として業務に従事できる技能証明を持っている人でも、250時間以上の飛行経歴が無い人については、技能ビザを取得できません。

(8)スポーツ指導者

この活動においても、外国に特有の産業である必要はありません。外国の技能レベルが、日本よりも高いとされている産業分野だからです。

実務経験については、3年以上の経験を有することを必要とし、外国の教育機関で当該スポーツの指導に係る科目を専攻して教育を受けた期間及びプロスポーツ選手として報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間も含まれます。なお、国際スキー教師連盟(ISIA)が発行するISIAカードの交付を受けた者や世界選手権大会等の国際的な競技会への出場経験があり、当該スポーツの指導に係る技能を必要とする業務に従事する者は、実務期間を問われません。

スポーツは、一般的に競技スポーツと生涯スポーツの2つに分けられますが、技能ビザに該当するスポーツは、その両方を含みます。よって、気功運動やヨガの指導もスポーツに該当します。その一方で、気功治療や整体、マッサージの指導はスポーツには当たらないため、技能ビザを取得することはできません。

ちなみに、野球、サッカー等のチームで必要とする、チームと一体として出場するプロスポーツの監督、コーチ等の在留資格は興行ビザになります。

(9)ワイン鑑定士

この活動においても、外国に特有の産業である必要はありません。外国の技能レベルが、日本よりも高いとされている産業分野だからです。

実務経験については、5年以上の経験を有することを必要とし、外国の教育機関でワイン鑑定等に係る科目を専攻して教育を受けた期間も含まれます。また、ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な競技会(以下、ソムリエコンクール)で入賞以上の賞を獲得したことがある者、又はソムリエコンクール(出場者が一国につき1名に制限されているもの)に出場したことがある者のどちらかに該当する必要があります。

2.技能ビザ申請のための提出書類(調理師の場合)

最後に、調理師としての活動に係る技能ビザの申請(海外からの呼び寄せ)に必要な提出書類をご紹介します。なお、店舗の規模により、求められる提出書類が異なりますので、それぞれご紹介します。(申請者や店舗の状況によって、以下にご紹介した書類以外のものを求められることもありますので、ご注意ください。)

(1)勤務先の店舗がカテゴリー1の場合

カテゴリー1とは、いわゆる上場企業や日本又は外国の地方公共団体、独立行政法人等です。勤務先がカテゴリー1に属する場合、求められる提出書類は少ないです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 460円切手を貼った返信用封筒(宛名記入)
  • パスポートの写し
  • 四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書の写し等
  • 従事する業務の内容を証明する所属機関の文書
  • 申請に係る技能を要する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書
(2)勤務先の店舗がカテゴリー2の場合

カテゴリー2とは、いわゆる未上場の大企業です。勤務先がカテゴリー2に属する場合も、求められる提出書類は少ないです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 460円切手を貼った返信用封筒(宛名記入)
  • パスポートの写し
  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(源泉徴収税額が1,000万円以上であること)
  • 従事する業務の内容を証明する所属機関の文書
  • 申請に係る技能を要する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書
(3)勤務先の店舗がカテゴリー3の場合

カテゴリー3とは、いわゆる中小企業が該当します。勤務先がカテゴリー3に属する場合は、求められる提出書類が増えます。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 460円切手を貼った返信用封筒(宛名記入)
  • パスポートの写し
  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(源泉徴収税額が1,000万円以上であること)
  • 従事する業務の内容を証明する所属機関の文書
  • 申請に係る技能を要する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書
  • 申請理由書又は雇用理由書
  • 所属していた機関の在職証明書(レターヘッド付きのものが望ましい)
  • 公的機関が発行する証明書(ある場合のみ。中華料理人の場合は、戸口簿と職業資格証明書)
  • 【タイ料理人の場合】タイ料理人としての5年以上の実務経験を証明する書類
  • 【タイ料理人の場合】初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書
  • 【タイ料理人の場合】申請した日の直前1年間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な報酬を受けていたことを証明する文書
  • 雇用契約書の写し等の労働条件が記載された文書
  • 法人登記事項証明書
  • 会社案内(沿革、役員、組織、事業内容、取引先、取引実績等が記載されたもの)
  • 飲食店営業許可証の写し
  • メニューの写し
  • 店舗の平面図
  • 店舗の写真(外観、看板、入口、店内、厨房等)
  • 店舗の建物賃貸借契約書の写し(不動産を所有している場合は、登記事項証明書)
  • 直近年度の決算書の写し
  • 定款の写し
(4)勤務先の店舗がカテゴリー4の場合

カテゴリー4とは、カテゴリー1~3のいずれにも該当しない、新設会社が該当します。勤務先がカテゴリー4に属する場合は、求められる提出書類が最も多いです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 460円切手を貼った返信用封筒(宛名記入)
  • パスポートの写し
  • 従事する業務の内容を証明する所属機関の文書
  • 申請に係る技能を要する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書
  • 申請理由書又は雇用理由書
  • 所属していた機関の在職証明書(レターヘッド付きのものが望ましい)
  • 公的機関が発行する証明書(ある場合のみ。中華料理人の場合は、戸口簿と職業資格証明書)
  • 【タイ料理人の場合】タイ料理人としての5年以上の実務経験を証明する書類
  • 【タイ料理人の場合】初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書
  • 【タイ料理人の場合】申請した日の直前1年間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な報酬を受けていたことを証明する文書
  • 雇用契約書の写し等の労働条件が記載された文書
  • 法人登記事項証明書
  • 事業計画書
  • 給与支払事務所等の開設届書の写し(受付印のあるもの)
  • 直近3か月の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるもの)の写し等
  • 会社案内(沿革、役員、組織、事業内容、取引先、取引実績等が記載されたもの)
  • 飲食店営業許可証の写し
  • メニューの写し
  • 店舗の平面図
  • 店舗の写真(外観、看板、入口、店内、厨房等)
  • 店舗の建物賃貸借契約書の写し(不動産を所有している場合は、登記事項証明書)
  • 直近年度の決算書の写し
  • 定款の写し
この記事の監修者

かざはな行政書士事務所

代表行政書士 
佐々本 紗織(ささもと さおり)

プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で
国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。

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