運営:かざはな行政書士事務所
投稿日:2025年6月25日
日本は、65歳以上の人が、人口の30%を占める、世界一の高齢社会です。その一方で、必要とされる介護人材は不足しており、介護の質の低下等が懸念されています。そのような中、国は、2016年に「介護」という在留資格を創設し、2017年9月より介護の専門的知識や技術を持った外国人が介護施設で就労できるようになりました。また、この介護ビザのほかにも、介護施設で働くことができるビザがあります。
この記事では、外国人が介護施設で働くことができるビザについて、詳しく解説します。
介護施設で働くことができるビザには、次の4つのビザがあります。
ちなみに、身分系のビザ(永住ビザ、定住ビザ、配偶者ビザ)には就労制限が無いため、これらのビザを持つ人も介護施設で働くことができますが、今回は知識や経験に基づいた技能を有する就労ビザについて、詳しくご紹介します。
介護ビザは、日本の介護福祉士の資格を持っている外国人が日本の介護施設等と契約し、介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動に認められるビザです。と言うことは、外国人の方が介護ビザを取得するためには、まずは日本の介護福祉士の資格を取得する必要があります。
資格取得の主なパターンとしては、外国人留学生(留学ビザ)として入国し、介護福祉士養成施設(日本語能力N2以上必須)で2年以上学んだ後、介護福祉士試験を受けるパターンと技能実習生等(技能実習ビザ、特定技能ビザ)で入国し、介護施設等で3年以上の実習等及び実務者研修を経て介護福祉士試験を受けるパターンがあります。
介護福祉士の資格を持っている外国人であるため、勤務できるサービスの種類に制限が無く、夜勤も可能です。在留期間についても、制限無く更新が可能ですので、介護職で長く働くことが可能です。日本人の介護職員と同じように働くことができますので、日本人の介護職員と同等以上の給与を支払われることが求められます。
また、家族(配偶者・子ども)の帯同や他の介護施設への転職が可能です。
特定活動ビザ(EPA介護福祉士候補者)は、インドネシア、フィリピン、ベトナムとのEPA(経済連携協定)に基づいて、それらの国の外国人が介護福祉士の資格取得を目的とすることを条件として、一定の要件を満たす介護施設において就労・研修することを特例的に認めるビザです。
在留期間は最長で4年間(1年ごとの更新が必要)で、その間に介護施設等で就労・研修し、介護福祉士試験に合格して資格を取得することを目指します。期間中に合格できなかった場合は、帰国することとなります。
なお、このビザを取得する要件として、入国前に現地の看護学校等を卒業していることや日本の介護施設での就労開始時点でN3程度の日本語能力を求められることから、介護ビザを持つ外国人の次に、専門的知識や日本語能力を有していると考えられます。
勤務できるサービスの種類は、資格取得前は訪問系サービスは不可ですが、資格取得後は一定条件を満たした事業所では可能になります。夜勤については、資格取得前は介護施設に雇用されて6か月経過後、又はN2以上の日本語能力があれば可能で、資格取得後は無条件に可能になります。
また、資格取得後は、家族(配偶者・子ども)の帯同や介護職種での転職(ただし、在留資格変更の許可が必要です)が可能です。
技能実習ビザは、日本で特定の技能を実践的に学び、その技能を母国へ移転することを目的としたビザです。
このビザには、1号、2号、3号があり、その流れとしては、まず技能実習1号(N4程度が要件)で日本に入国して、技能実習計画に基づいて講習を受け、技能を習得するための活動を行い(最長1年)、技能実習2号(N3程度が要件)においては、2~3年目の技能実習生として技能を習熟させる活動を行い(最長2年)、技能実習3号においては、技能を熟達させる活動を行います(最長2年)。
厳密に言うと、技能実習ビザは就労ビザとは言えないのですが、外国人が働きながら技能を学ぶということから、現場では労働力とみなされている側面があります。
そして、介護の現場でも、2017年11月から技能実習生の受け入れが始まりました。技能実習生が介護施設等で3年以上実務を学び(技能実習2号を修了)、実務者研修を受ければ、介護福祉士試験を受けることもできます。そこで合格すれば、介護ビザへの在留資格変更申請が可能です。ただし、技能実習ビザのそもそもの目的は、日本で学んだ技能を本国へ移転することです。その目的との整合を図るために、変更申請の際には、「技能移転に係る申告書」を提出する必要があります。
なお、技能実習生の間に勤務できるサービスは、訪問系サービス以外です。また夜勤については、技能実習生以外の介護職員を同時配置すること等が条件となっています。
また、家族(配偶者・子ども)の帯同や転職は認められていません。
特定技能ビザは、日本の公私の機関との雇用契約に基づいて行う特定産業分野において、相当程度の知識や経験に基づいた技能を必要とする業務に従事する活動に認められるビザです。いわゆる現場労働の即戦力となる外国人に認められるビザです。
このビザには、1号と2号がありますが、介護分野では1号のみで、2号への変更は認められていません。なぜなら、特定技能ビザの外国人が介護福祉士の資格を取り、介護ビザに変更する道筋があるからです。
また、介護分野がこの特定技能ビザの特定産業分野に含まれたのは、2019年4月からです。介護分野の特定技能ビザを取得するためには、日本語能力試験(N4以上)、介護用語試験、介護技能評価試験に合格する必要があります。合格後、特定技能ビザを取得すれば、介護施設等で最長5年間(1年ごとの更新が必要)、就労することができます。そして、特定技能ビザの方が介護施設等で3年以上実務を経験し、実務者研修を受ければ、介護福祉士試験を受けることもできます。そこで合格すれば、介護ビザへの在留資格変更申請が可能です。
なお、特定技能ビザの方が勤務できるサービスは、訪問系サービス以外ですが、夜勤は可能です。
また、家族(配偶者・子ども)の帯同はできませんが、他の介護施設への転職は可能です。
最後に、参考として、厚生労働省が作成した外国人介護人材受入れの仕組みの図を掲載しておきます。
外国人の方々に、介護施設で働いていただき、介護福祉士として活躍していただきたいという強い気持ちが表れいるように思います。これからも、国は現場の状況を確認しながら、受入れの仕組みや外国人のキャリアパスについて検討を重ねていくことが推測されますので、国の動きを注視していく必要がありますね。
出典:厚生労働省HP
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。
お電話でのお問合せ・相談予約
<受付時間>
10:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く
フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。