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永住申請をするにあたり、必要書類の1つに「理由書」というものがあります。理由書とは、「なぜ日本の永住権が欲しいのか」を説明するもので、審査においてとても重要な書類です。理由書には決まった様式が無いため、自由に書けるメリットはありますが、どのように書いていいかわからないという難しさもあります。
そこでこの記事では、永住申請の際の理由書の書き方について、構成や例文もご紹介しながら解説します。
まず、理由書を作成するにあたり、書くべきポイントは4つあります。これらのポイントをおさえて書くことで、永住許可を得たい理由の要点をまとめて伝えることができます。
まず最初のポイントでは、申請者の「経歴」について書いていきます。
申請者が「どこで生まれてどのように育ち、なぜ日本に来たのか?日本ではどのような活動をしていたのか?」を説明します。その中には、母国等での最終学歴や日本での仕事の経歴も書きます。原則、永住ビザは来日してから10年経っていないと申請できないので、来日してからの10年間についても説明が必要です。
ここでの注意点として、今までのビザの変更申請や更新申請の際に入管に提出している内容と矛盾が無いようにすることです。真実に基づいて書いていれば、ズレは生じないと思いますが、経歴の説明のところで、今まで入管に提出していた内容と矛盾があると、永住申請の審査に影響が出てしまいます。
このポイントでは、勤務している会社の事業内容や自分が担当する業務、収入等を説明します。もし、現在の在留資格が就労ビザなら、許可されている活動内容が実際の勤務先や仕事内容と一致していることが絶対に必要です。活動内容に矛盾があれば永住申請はもちろん、現在の在留資格も危うくなるためしっかり確認してください。
このポイントの目的は「日本で安定して生活できる」ことのアピールです。ですから、会社の状態や現在の仕事内容、社内での立場、月収(年収)等をできるだけ詳しく書く必要があります。
なお、仕事内容について書く際は、誰が読んでも理解できるように、専門用語をできるだけ使わず、簡単な言葉で説明することを心がけてください。会社のパンフレットやホームページ等のコピーを添付するのも効果的です。
このポイントでは、結婚や子どものこと、住居のことについて説明します。配偶者等に収入がある場合は、世帯収入についても触れておくとよいでしょう(家族滞在ビザの方のアルバイト収入は、加算対象になりません)。
また、もし申請者が国民健康保険と国民年金に加入している場合は、支払い状況も説明する必要があります。なぜなら、永住申請の審査では、健康保険と国民年金を支払っているのは当然として、支払いの遅れについても細かく審査しているからです。そのため、直近2年間に納付の遅れがある場合は、なぜ支払いが遅れてしまったのかの理由も説明しておいたほうがよいです。
ちなみに、支払いの遅れは1回や2回程度であれば理由次第で大丈夫ですが、頻繁に支払いが遅れている場合には、支払いルールを守れない人として永住申請の審査に影響してしまいます。ですので、国民健康保険や国民年金に加入している人は、口座引き落とし等を利用して支払いの遅れが起きないようにしておきましょう。
理由書の中でも、特に重要なポイントです。このポイントでは、なぜ日本に永住したいのかを説明します。日本との関わりや将来の目標、特に「今後どのように日本に貢献していくのか」といった内容も盛り込むとよいでしょう。
また、作成する際は、定型文をコピーしたような文章ではなく「自分の言葉で」「丁寧に」説明することが大切です。書くべき内容に決まりはありませんが、以下のような内容を書き、今後も日本で生活していきたい想いを伝えていきます。
また、理由書の最後には「ここまでで述べたように、私の生活基盤は日本にあり、今後も日本国の住民として法律を遵守し、勤勉に働き、誠実に暮らしていく所存でございます。」という文言を記載し、理由書を締めくくります。
ちなみに、上記以外にもアピールポイントがあれば、積極的に書いてください。例えば、日本語能力試験でN1やN2の資格を持っていること、無事故無違反であることは、永住審査でプラスに働く可能性がありますので、理由書に書き、証拠書類を添付してください。
理由書は、原則「日本語」で作成しますが、日本語が分からない場合は、母国語で作成しても大丈夫です。ただし、母国語で作成した場合は、日本語訳をつける必要があります。この翻訳は誰が作成しても構いません。
ですが、最初から、日本語ができる友人等に、代わりに理由書を作成してもらうのはやめてください。理由書は、必ず永住申請をする申請者本人が作成してください。
また、理由書の作成はパソコンでも手書きでも、どちらでも大丈夫でです。
ただし、パソコンで作成した場合、他人が作成した可能性が出てくるため、作成日と申請者の名前は自分で手書きで書いてください。
すべて手書きで作成する場合は、読みやすいように字をきれいに書くよう意識してください。字が読みにくい場合は、理由書から重要な情報を読み取ることができず、審査に時間がかかる場合があります。
ここまでは、理由書のポイントを説明してきました。
以下、理由書の例文をご紹介します。(あくまでも例文です。こちらを参考に、自分の言葉で作成してください。)
法務大臣殿
理由書
私は中国国籍の○○〇〇と申します。今回、「永住者」の在留資格を申請させていただくにあたり、これまでの経緯と申請理由について説明させていただきます。
・来日から現在までの経緯について
私は中国○○省出身で、〇〇大学を卒業後、20XX年○○月に〇〇日本語学校で日本語を学ぶために来日しました。日本語学校卒業後は、〇〇大学に進学し、○○について勉強し、○○についての専門知識を習得いたしました。○○大学を卒業後は、株式会社○○に入社し、現在まで勤務をしております。
・現在の仕事の状況について
私は現在、株式会社○○にて、○○担当として働いております。会社では、大学で勉強した○○の知識を活かして、少しでも早く株式会社○○に貢献できるようにと一生懸命働いてまいりました。現在は、○○という役職に就き、充実した日々を送っております。同社には、20XX年〇月より勤務しており、〇年以上が経過しております。会社の同僚や上司との関係も非常に良好で、分からないことがあれば教えていただき、逆に私が力になれることについては積極的に協力しております。今後も同社のさらなる発展のために、より一層仕事に励んでいく所存です。
現在の給与は、月額○○万円で、賞与を含めて年収は○○〇万円となっております。将来については、中国と日本の懸け橋となる存在となり、同社と中国との取り引きをより一層強化させていきたいと考えております。
・私生活について
私は、20XX年〇月に、○○国籍の○○と結婚いたしました。そして、20XX年に妻との間に長男○○が生まれ、現在は○○県○○市にある賃貸マンションで生活をしております。
また、来日以来、国民年金、国民健康保険で滞納したことはございませんし、○○株式会社入社後も社会保険料は給与天引きとなっているため、未納も滞納もございません。
・申請理由について
私は20XX年〇〇月から日本に居住しており、今年で11年目になります。日本語学校や大学、職場で出会った友人、同僚や上司等、これまでたくさんの方々に支えられたきました。周りの方々のおかげで、今の私があります。今度は私が周りの方々を支えられるよう、恩返しをしていきたいと思っております。そして、日本の社会に貢献しながら、グローバル化の一助になることができればと考えております。
ここまでで述べたように、私の生活基盤は日本にあり、今後も日本国の住民として法律を遵守し、勤勉に働き、妻と子どもと共に、誠実に暮らしていく所存でございます。
上記のような理由で、「永住者」の申請をさせていただきました。何卒、永住者の許可を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
かざはな行政書士事務所
代表行政書士
佐々本 紗織(ささもと さおり)
プロフィール
前職の市役所勤務の中で、国際業務に従事し、外国人支援の仕事に興味を持ちました。その後、一念発起して行政書士試験を受験し、合格することができました。
2025年5月に、広島県東広島市で国際業務専門のかざはな行政書士事務所を開業しました。ビザ申請や帰化申請の代行サポート業務で、皆さんのお役に立つため、猛勉強の毎日です。
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